びんぼう自慢 (ちくま文庫 こ 7-2)

制作 : 小島 貞二 
  • 筑摩書房
3.81
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本棚登録 : 339
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480420459

感想・レビュー・書評

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  • H29.5.5 読了。

  • びんぼう自慢というタイトルに惹かれて読みました。貧乏であっても楽しく前向きに生きること、貧乏を楽しむことの大切さがぎっしり詰まった楽しい一冊。貧乏であることを自慢して面白おかしく話せる人、お金持ちであることを上から目線で自慢する人よりもずっと魅力的で素敵。他人の自慢話を聞くのは大嫌いだけれど、こんな楽しい自慢だったら大歓迎。

  • 古今亭志ん生の自伝。編集者による書き起こしで、落語を聞くように読める。
    若い日の破天荒な生き方。十代で女郎買いにはまり、父親のキセルを盗んで質に入れたところ、怒り狂った父親がやりを磨き始めたため、母親にしばらく身を隠すように言われて、そのまま家に帰らず両親の死に目にあえなかったと、格の違いを感じる。
    しかし、最後のところで編集者は志ん生がポツリと漏らした話けれど掲載していない話があることを明かす。それは志ん生が表現したい姿ではないから、とのこと。表現とは何かと考えさせられた。

  • 暖かい気持ちになったし、肩の力抜いて適当に生きていけばいいんだと思わされるし、そして同時に切ない気持ちにもなるといういろんな色を持ったとてつもない本でした

    どんなに辛そうな時でも、志ん生の語り口は終始明るいけれど、読み進めるうちに語られていない部分が垣間見えるようになる。

    編者の小島貞二さんの貢献も本当に大きいと思う。
    語らない美学っていうのはこういうことかと。みんなが求める志ん生のイメージを壊さないように、けれどそれとなく悲しみや不安をちらつかせる書き方は素晴らしいです。

  • 明治23年生れ。落語好きでなくても名前くれぇは知っている志ん生。タイトル通り最初から最後まで貧乏話。昔の東京下町の人情深さがひしひしと。その時代に生きてたみてぇ…おっといけねぇ。口調もそっくりだ。

  • 五代目 古今亭志ん生ご本人が語る自伝。
    小島貞二が文字に起こして編集。
    ずぼらで破天荒な志ん生師匠の人生を落語で聞いてる様。
    口に出して読むと志ん生師匠が現れる。

    小島貞二は、世に残る自伝だからこれも“芸”のうちだという。
    粋な江戸弁で語られる破茶目茶なエピソードは大変面白い。
    そこにはファンのイメージを裏切らない“志ん生”が居る。

    だけど考えてもごらんなさい。
    人には言いたくないことだってあるだろうし、
    まともに話したら笑えないことだって沢山あるんじゃないでしょうか。

    そう思って改めて人間 美濃部孝蔵さんを観察するってぇと。
    呑んべでぐうたらの上に強情だけど、腕は確かな職人さん。
    居た居た。昔こんな爺さんぽつぽつ居たよ。

    堅気な商売だったら、ただの困った爺さんだったのかも知れない。
    やっぱり落語を選んだてのが大正解だったんでしょうな。
    困ったことも全部商売に活きたってぇことですから。

    こんな飾りっ気も無く破茶目茶な男の人生、中々お目にかかれませんよ。
    生き幅の広がる思いがします。読んどいて損のない一冊です。

    人間一生が勉強でございます。これからもどうぞよろしくとお願いをして、
    この辺りで失礼させていただきます。
    へい、ごたいくつさまで。

  • 落語の擬人化

  • 変名の一つ「金原亭武生」の参考名「全亭武生(ぜんてえぶしょう)」は初代が師匠から「お前は全体無精でいけない」と小言を言われ、そこから取った洒落名。(小岩武生は、「こいはぶしょう」か)106

    志ん生は笹塚で近所の犬を殺した144

    馬生を名乗っていてころ、次男の強次(志ん朝)が生まれた。強次の名付け親であり、志ん生の近所でもあった柳屋三語楼は病の床。強次と見舞いに行くと「おう、バナナ。立派な人間になるんだよ」と言われた。バナナは芭蕉(馬生)の子供だから205

    志ん生自身が『替わり目』を自分と妻のことのようだと言っている284

  • 戦後の落語界の第一人者となった著者が、自らの人生を語りつくしている本。落語を読む感覚は最初はなれないが、読むペースが上がるにつれて、引き込まれてしまう。旅芸人の時代、笹塚の時代、業平の時代とここが最悪かと思えばどんどん悪くなる様に呆れてしまう。よくもこんな滅茶苦茶な行動がまかり通ったと思うが、懐の深い寛容な時代だったのか、人物の魅力なのかはわからない。現代ではありえないような話ばかりで、いつになったらまともになるのかと思いながら楽しく読んだ。

  • 尋常小学校の卒業間近に素行不良で退学になるというくらい、今の世の中では考えられない悪ガキっぷり。
    何しろ酒は飲む、煙草も吸う、博奕もする。
    家に置いておくと碌なことをしない、と奉公に出されてもすぐ帰ってきちゃう。
    それなら、と、朝鮮まで奉公に出されたのに、やっぱり帰ってきちゃう。
    10歳でこの悪たれぶり。
    それが江戸弁でちゃきちゃき語られると、笑わずにいられない。

    けれど、徐々に眉間にしわが寄る。
    真面目に生きて貧乏なのは仕方がない。
    芸のためなら女房を泣かすことだってあるんだろう。
    だけど、親身になって心配してくれる人や、善意の人からお金をだまし取って、飲む、打つ、買うはいただけない。

    子どもたちのためにしっかりしなくちゃ、と、日銭の入る仕事についてみるが、お金が入ったそばから飲みに行く。
    自分の稼ぎがない時は、奥さんが縫物をして得たお金をむしり取って飲みに行く。
    何なら預かっている布を質に入れて飲みに行く。

    ダメだ。
    いくら才能があっても、こういう人は好きになれん。
    石川啄木と同じですね。
    人として、ダメ。
    だけど才能はあるんだよね、確かに。
    それは認めます。

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著者プロフィール

五代目古今亭志ん生(ここんてい・しんしょう)

1890(明治23)年~1973(昭和48)年。明治後期から昭和期にかけて活躍した東京の落語家。20世紀の落語界を代表する名人と称される。

三代目林家正楽(はやしや・しょうらく)

1948年1月17日生まれ。寄席紙切り芸の第一人者。短いが洒落の利いた言葉の数々、注文から出来上がりまでの流れの組み立てなど、そのセンスの良さで人気を博する。

「2018年 『落語紙芝居 古今亭志ん生シリーズ2 粗忽長屋/強情灸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

古今亭志ん生の作品

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