諸国空想料理店 (ちくま文庫 た 45-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480420527

感想・レビュー・書評

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  • この前読んだ、石井好子著『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』の解説を、平松洋子氏と共に高山なおみ氏が書いていた。
    ロールキャベツの中にご飯を入れるのをまねしています、とあった。
    その本の中で、ロールキャベツはいろんな国に似たような料理があると知った。
    旅先で出会った料理を日本に持ち帰って再現してみる。
    その料理をまた誰かが再現する。料理が生まれた国を思い描きながら。

    高山さんも、旅先で出会った料理を日本で再現する。
    主にフレンチである石井さんに対して、高山さんはエスニックである。
    「侵略した側」(フレンチ)と「侵略された側」(ベトナム)なのが面白いなと思った。
    侵略は肯定できないが、こうして文化が混ざることになる。

    高山さんは「諸国空想料理店KuuKuu」というエスニック料理のお店で1990年から2003年にお店が営業を終えるまでの間シェフを務めていた。
    旅先から持ち帰った現地の料理のレシピの他に、このスパイスを使えばたちまち〇〇風、みたいな空想の諸国料理もたくさん生み出したらしい。
    誰も彼もが海外へ旅行できるわけではない。
    空想の翼で見知らぬ国へ旅に出られるような料理を食べさせてもらえるのは素敵なことだ。


    『はじめにひと口(まえがき)』
    初めての海外旅行で受けた衝撃により、帰国してからも呆然としたままの日々が続いた。
    異国のにおいが押し寄せる、よみがえる。
    海外旅行に行く前とあとでは何かが変わってしまった。
    異国という異次元とのパイプができて、そこから吹き込む風がどんどん空想の諸国料理を生み出していった。

    『Ⅰ 祭のごちそう』
    パーティーと食べ物の「熱量」がすごい

    『Ⅱ 旅のにおいのするごちそう』
    においがすさまじい。
    カトマンドゥーの、衝撃的な肉屋の店先。タイ人の胃袋。
    そのたびに腹を下し、熱を出す。

    『Ⅲ ご馳走の効能』
    ジャンクフードを嫌い、綺麗な食べ物を食べて体づくりをする男と別れた後は、下品な味の料理が食べたくなる。
    または、弱った心と体に効く、祖母のうどん。

    『Ⅳ 私のだいどこ(厨房より)』
    スタッフたちの働く音は、キッチンオーケストラ。
    その、無駄のない動きと、昔、祖母が炒り立ての胡麻をリズミカルにすっていた円を描いて動くすりこぎの記憶。
    静かに煮込まれている状態をあらわす、「スープが微笑む」という料理用語。

    『さいごのひと口(あとがき)』
    オーナーの南椌椌(みなみ くうくう)さんによるあとがきも良い。

    高山さんの文章はどこか野生的なエロスを感じさせる。
    ちなみのこの本の単行本が発行されたのは1995年なので、今の高山さんはもっと違った料理をする人になっているかもしれない。

  • 自分は家で自分や家族のために料理はするけど、飲食店の厨房のそれとは完全に別ジャンルだと思っていて、それこそチェーン店での調理経験はあるが野放図的な個人飲食店などでは戦力外だと自覚している。そのため作者のようなバイタリティーと経験、知恵などパワーのある料理人には憧れがある。本作では少し垣間見れた厨房の慌ただしさや熱に触れ、とても有意義だった。

  • よくわからなかった…スパイスを駆使できる方是非ね

  • この本を読んだ時には既に、この素敵な料理店は閉店していた。でも、厨房もお客さんも、うわーっと出てくる料理たちも、すごいエネルギーを放っていたのだということがよく分かりますね。レシピを見て、エネルギッシュな勢いだけでなく、精密に丁寧にお作りになっていたのだと感じました。プロの仕事ですね。真似して作るのは私には無理だ…

  • 随分と前に読んだけど、たまに思い出す本。
    もうないカフェを思い出すみたいなものかな。
    空気が好きな本です。

  • いろんな国のいろんな匂いがしてくる本。
    あの空間を味わいたいし、レシピも載っているので、自分でも少しだけ味わえるのがいい。

  • 諸国空想料理店のkuukuuのシェフをしていた頃の高山なおみのエッセイ。

    彼女の食にまつわるエピソードや考え方とあわせて、レシピが簡単に書かれている。
    トンファン、グリルドターキー、ハリッサソース、アフリカ大餃子、シェビーチェ、ゴイクォン、きなこクッキー、ビリヤニ、ナシゴレン、鶏ガラスープなどなど。
    どれもこれも実際は難関そうだし、謎なスパイスも多いのだが、美味しいそう、作ってみたい!と思わざる負えない。まるで横で手ほどきしながら教えてくれているような感覚の文章だからだろう。

    また料理にまつわるエピソードもいい。
    風邪ぎみのときに作ってもらった鶏ガラと野菜クズのスープ、おばあちゃんお手製うどん、友人の通夜の後にみんなで食べた味グチャ混ぜのインスタントラーメンなど。ただ味が美味しいというだけでなく、その時の状況が醸し出す独特の良さみたいなものを書いていて、文章でこの出来事の「美味しさ」を伝える術と感性が素敵だなと思う。
    オーナーの書いていた、実際は女豹のように俊敏に飛び跳ねて大変優秀に店を回しているというくだりが、なんとなく納得できる。

    料理に向かう姿勢や全ての物事を大切にしている人という印象だった。

  • 高山さんがクウクウで毎月作っていたお店の新聞のコラム。昔からこんな文(結構深い)を書いていたんだーと思った。

  • 高山なおみさんの書く文章が本当に好きだ。生々しいけど繊細で、読んでよかったな、となる。諸国空想料理店行ってみたかったなぁ。

  • 図書館で借りたらすごく面白かったので、手元に置いておきたいから買います。kuu kuu 行ってみたかったなぁ~

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著者プロフィール

1958 年静岡県生まれ。料理家、文筆家。レストランのシェフを経て、料理家になる。におい、味わい、手ざわり、色、音、日々五感を開いて食材との対話を重ね、生み出されるシンプルで力強い料理は、作ること、食べることの楽しさを素直に思い出させてくれる。また、料理と同じく、からだの実感に裏打ちされた文章への評価も高い。著書は、経験や体験に裏打ちされた料理書や料理エッセイのみならず紀行記や日記、絵本など多数。

「2023年 『帰ってきた日々ごはん13』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高山なおみの作品

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