東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421630

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  • 東條英機が戦争を始めたのではない、戦争が始まった時の総理が東條英機だった、ということが書いてある

  • 対米戦争直前に宮城に向かって慟哭し、緒戦の真珠湾勝利に祝勝会を開き、庶民のごみ箱を見て回り、三軍の長(首相、陸相、参謀長)を兼務する折、ヒトラーは伍長上がり、私は将軍だと語り、時に、精神で敵機を落とすのだ、とまじめに語る等身大の東条英機が垣間見えます。このレベルの人材が当時の最高権力者という事に、なんで、という気もしますが、これも時代の現実なのでしょうか。この世間知らずのまじめな軍人に国家の運命をゆだね、日本人だけで300万人を超える死者を出し(アジアでは、1000万人とも)したことに、なんとも言えない気分です。で、今は、どうなの、でもあります。★四つです。

  • 東條英樹の人柄が形成されるまでの話と陸軍、内閣時代における境遇や考えが東條視点で描かれていて興味深い。

  • ものすごい傑作だと思う。第二次世界大戦時の首相であるが、戦略もなく、精神論を説いているダメなトップ。東条英機がダメというよりも明治以来の日本の軍事戦略・人材育成・政治システム・法律といったシステムが彼のようなダメなリーダーを作ったということがよく理解できた。とてもおもしろかった。

  • 作者はこの時代の本を沢山書いており、恐らくかなり取材もしてると思うのだが、いかんせん主観が多すぎる。「この時東條の胸に去来したのは○○ではなかったか」みたいな、小説じゃないんだから、それいらないんですけどみたいな記述が多い。もう一冊ぐらいこの作者の昔読んだ気もするが、もう読むことはないかもな。

  • 自ら『戦陣訓』で「生きて虜囚の辱を受けず」と唱えておきながら、MPが身柄を拘束に来た時に、こめかみに銃弾を放てば即死できたものを、左利きで撃ちにくいにもかかわらず心臓を撃って死に損なった。客観的な戦況判断をせずに、天皇陛下に忠誠を尽くすの一点張りでひたすら精神論に逃げ込んだために、兵士だけでなく多くの無辜の人びとを死に追いやった。このような首相を持った日本人は不幸であった。

  • 戦争をテーマにした映画や物語が苦手な私にとっては、かなり背伸びをして借りた一冊。

    東條英機の家族やかつての同僚(っていうのでしょうか?)にまで取材を行った、読み応えのある内容。一部筆が走っている部分を覗いては、中立的な表現で好感が持てる。
    独自の思想はなく場当たり的に物事を考える東條。時代を変える英雄的な人物ではなく、頑固で勤勉で小心者で根っからの軍人という人物像が見えてくる。
    英米と戦う事を決断した日、東條は一人自室で号泣したという。自ら選んだ事とはいえ、彼が感じた責任の重さを想像して、気分が重くやるせない気持ちになった。
    一方で戦後の世論を意識して、あえて日本に開戦の一撃を加えさせるアメリカ。精神論や目先の事ばかりに気を取られている日本と、なぜここまで観点が違うのかと感じる。

    日本の見通しのない、その場しのぎの政治は、今も大してかわっていないじゃないか。政治家に対し怒りを感じた後、政治に対する自分の態度を思い恥じ入る。

  • 天皇の忠臣たろうとした姿勢は、主に軍隊と己の正統性の源が天皇であったことに由来するのだろう。
    その東条が組閣の大命降下を受けて以降、強行な持論を180度変えるのを知るにつれ、戦前の官僚や軍人が持っていたセクショナリズムがいかに強力に存在していたのかを感じることになる。利益集団の代表として振舞うその習性が、権力分散型の統治形態と相まって国としての統一的な意思をあやふやにしてきたし、誤ったメッセージを海外に発信し続けたひとつの元凶だった。
    結局、御心に沿わず開戦を回避することが叶わないことに一人落胆して嘆く姿の描写は、本書で指摘されたように偶然にも開戦にまで至る最終走者となってしまった運命の残酷さを表しているようだった。

    この東条という組織の一歯車をもって、司馬遼太郎が「日本は一人のヒトラーをも輩出しなかった」と皮肉交じりに語ったのだ。

  • 東条英機がどんな人間で、どんな働きをしたのか。震災後の政府の迷走を見ていると日本は本質的に何も変わっていないのだと絶望的になる。一度くにの形を真剣に考えないとならない。司馬遼太郎のいう統帥権というものがなんなのか。日本の欠点を思い知らされた。

  • ちょっと長過ぎます。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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