美の死: ぼくの感傷的読書 (ちくま文庫 く 6-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421876

感想・レビュー・書評

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  • 著者の保守派・浪曼派的な読書傾向の背後に職業軍人だった父上の影が見え隠れするのは気のせいか。

  • 全力でおススメ

  • 2006年3月10日、初、並、帯無

  •  気をつけたほうがいい。久世光彦さんは文学の変態です。
    「一冊の本を読むことは、一人の女と寝ることに似ている―外見だの評判だのは、むろん当てにならない。女は寝てみなければわからない」って、怖いよね……★

     しかし、愛読書というのが、読み手とただならぬ関係に至った本のことを指すのは、間違いありません。そして久世氏は、複数の作品と特殊に濃くおつきあいしてきた作家なのです。
    『美の死』には、多くの文学作品(古典多め)に触れた久世光彦さんがどのような反応を示してきたかが、しっとりと熱を帯びて艶めいた筆致で描き出されています。
     美しきものへの愛や憧れを惜しまず文字化し、迷うことなく懐かしき思いに耽溺する。作者の姿勢は、冷めたふりした現代人たちがはっとさせられてしまうような、まっすぐな愛しかたです。それでいて、溺れを描くのにも品を欠かず、感傷が安っぽくなっていないのも素晴らしい。

     個人的に最もはまって読んだのは、小川未明の章でした。風の音を聴いて笑い、澄んだ声で話す女性と過ごした日々のこと……。これはあまりにも鮮やかなお手並みで世界観が完成されていて、書評を超えてほとんど恋愛短編小説になっています☆
     童話のように美しき感覚を愛するからこそ、死に至る美を見てしまう……。小川未明はずるずる続くなれ合いの関係を嫌った作家であり、そのことが久世さん自身の愛のエピソードと奇跡的に呼応しています。

     そこには、その本を読んだのがこの人物なればこそ、という印がくっきりと捺されています。小川未明の童話は大人こそ味読すべき魅力があるとは思うけれども、少なくとも私が何度読んでも、こんな艶は出てこない。本とのつき合いかたは一人一人異なるのだという考えを、あらためて強くしました。
     人の体に刻まれたことが染み出してきて、読書体験を特別なものにする。特別な物語は自分の血肉と化し、体内に息づくのです。

  • 太宰やら三島やら多々の追憶。
    私もまだまだ本を読んでいない、なと痛感。

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著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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