| ブログで紹介する» |
|
Check |
|
|
この作品からのみんなの引用
-
「―わたしは彼といっしょに生きてきて、彼をしあわせにする機会を待ちつづけてきた。すべては記録ずみ。すべては明快かつ誠実な数字で記録されて。あなた自身の承認も得たうえで。そうじゃない?わたしには考えがあって…」
アンナはひどく怯え、まったく要を得ないままどなり返した。「考えのなんたるかも知らないくせに!マッツにはある。わたしにも。マッツとわたしは生みだそうとする。だけどあなたは計算するだけ…。もう行って」カトリは口をつぐむ。アンナがいう。「わたしには考えがあった。かつては。いまはもうない。―」
-
「契約というのは」カトリは真顔でつづける。「想像をはるかにこえる驚くべきもので、ただ人と人をむすびつけるだけではないのです。契約のもとで生きるほうが人間にとって楽なのだということに、わたしは気づきました。不決断と困惑から解放され、もはや選択せずにすむのですから。わたしたちは責任を分かちあい、それぞれの分担をひきうけることに同意しました。それは熟慮の末になされた約束であり、すくなくともそうであるべきで、わたしはその約束を公平に履行しようとしました」
― 93ページ -
彼女は草しか食べないが、野生の獣の臭いがする。自分では気づかないし、彼女に教えてやる人間もいない。あえて指摘するほど気にかける者もいなかったのだろう。なにをすべきか。どれだけの真実があり、なにがそれを証明するのか。自分の信念か。それとも捏造か。自己欺瞞か。肝心なのは結果だけなのか。もうわからない。
― 194ページ
みんなの感想・レビュー・書評
淡々として不穏な感じが好き。ところで、解説でムーミンの著者だと知って、ものすごくびっくりした。そのあと、納得した。
トーベ・ヤンソンといえば、何をおいても〝ムーミン〟シリーズですが、この作品にも共通した雰囲気がありました。北国の憂鬱、冬の閉塞感、寂寥感、そして登場人物につきまとう孤独感などです。孤独とは、けして卑下したり、寂しがったりするものではありません。それは、誰もが背負わされたさだめなのですから。それでも世の中には、孤独をうまく受け入れられる人と、そうでない人がいます。 物語の舞台は北欧の小さな海辺の村... 続きを読む »
数字しか信じない女と森の土壌しか愛さない女の対立を軸として、様々に錯綜する心情や周囲を描いた作品。
後半の緊張感(とくに犬が変化してくるあたり)こそあれど、終始とくに派手さもなく物語は進む。
ただどこかどろどろとしていそうなのに読後はスッキリとした爽やかさが残り、まさに北欧の情景をそのまま味わったような気分になった。
海辺に住む年老いた画家アンナと、その秘書役を務めることになった抜け目ないカトリ。カトリはアンナの周りがアンナをだましお金を巻き上げているとして、厳密に帳簿をつけ始めるが、それはアンナも、カトリ自身さえも幸福にする行為ではなかった。 この小説の肝は、ちょっと大上段に構えると「合理性と人間性の対立」と言えると思う。アンナは人間性を信じているので、周囲の人間の行為を盲目的に信じる「性善説」信者だ。... 続きを読む »
なんか途中から緊張感高まりすぎてつらくなってくる。「ムーミン谷の11月」でも思ったけどこの人マゾだと思う。のわりに最後のあっさりした終わり方が好き。鋭いけど読後重くはならない
うそをついていながら自分を律し、誠実であろうとする姿が、妙に親近感がわくというか、自分のことのように思えるというか。
ムーミンの作家とは思えないくらいざくっときます。
まぁ、派手さはないですけどね。
年老いた画家と、住み込みで彼女の面倒を見る娘・カトリの物語。
謎めいたタイトルは、この物語にぴったりなんだと最後に納得しました。そういう物語って好きです。
読んだ後に余韻が残る話でした。そこはムーミンにも共通すると思います。
この作品、すごく好き。 今までに読んだことがないような不思議な気持ちになった。 ラストの印象、冬が終わって土が見えて、それをアンナが今までよりもっと意識的に土壌を描こうとしているところに力強さを感じ、カトリやアンナの人生と北欧の長く暗い冬が終わり春が来るその情景とが重なり合うような気がした。 この先、カトリとアンナがどうなっていくのかわからないけれども、でも多分これまでよりも険しい道のり... 続きを読む »
信念というものは如何に純粋なものでも、時に残酷で容赦のない姿を見せる。答えはそれぞれのうちにあるという少し厳しめのムーミン谷。
トーベ・ヤンソンの人物描写は鋭いなー。個性的で強烈なんだけど、激情的ではないから投影しやすい。北欧だから…? 閉ざされた冬、人と人が影響を及ぼし合うようすがくっきりと。
降り積もる深い雪のなか、極めて静かに、しかし確実に、まるで獲物を狩るようにして忍び寄る『得体の知れない何か』
その『得体の知れない何か』がしっくりこず、ぼんやりとした残像でしか捉えることができなかった。
重くどっしりと身体を横たえる雪深い北欧の冬のできごと。
これまで自分の信じてきた軸を大きく揺さぶられたときに彼女は一体どうすれば良かったのだろうか。哲学的。
雰囲気は好きだが、わからなかったところも多かった。
もう少し大人になってからもう一度読みたい。
主人公カトリは計算高く、不愛想な少女。彼女のあるもくろみをめぐって物語が展開する。後半はピリピリするような緊張感に満ちている。
うだるような暑さが続く中、北欧の、しかも記録的な大雪にみまわれたとある冬の話を読んでいる。
トーベ・ヤンソンといえばムーミンシリーズで有名だが、この話にはそういった妖精の類いは出てこない。
明瞭で簡潔な文体にも好感がもてる。
大人のための物語だ。
老画家アンナ、カトリとマッツのクリング姉弟、カトリの従順な犬。
この3人と1匹の奇妙な共同生活の果ては?
湖の氷が溶けはじめる頃、マッツは彼の理想のボートを手に入れる。
アンナはもう以前のような絵は描かない。
カトリは・・・彼女は彼女のままだ。
カトリは周囲に対して自分に対して「誠実」でありつづける。
「誠実」の意味を考える。
あるいはカトリにとっての誠実さとは、正しさとは?
大変だった・・・・・・。ムーミンもiittalaもデンマークも好きだけど、私はビョークがとても苦手。頭痛のする夕方、湿り気のある暗い午後、耳鳴り。ザ・憂鬱をおもわせる。
うすい、すぐに読めるような本なのに、主人公がとてもかしこい女性で、信頼できるのに、この暗さ、不安、寄る辺のなさ。
つらかった。こういうとき、途中で投げ出せたら楽なのに、最後まで読んでしまう。
なのに、夜寝る前に読みはじめて、眠かったのにつらくて先を読まないわけにいかなくて終われなくて、朦朧としながらさいごまでいったら、あまりにも謎過ぎて、もはやなにが起きたのか今でもわからないってどういうことでしょう。
もう本当にどうしたらいいかわからない。

降りしきる雪に覆われた海辺の村。
数字と弟マッツのことしかあたまにないカトリ、遺産があり裕福で「親切な人」の画家アンナ。
カトリの計画によって、姉弟と犬、そしてアンナの同居が始まる―。
カト...





