- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480422552
感想・レビュー・書評
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江戸歩き案内人を自称する黒田涼『大軍都・東京を歩く』(朝日新書)は
東京都内に残る軍事遺構を訪ね歩いた作品だった。
本書は軍事遺構訪問記の日本列島版。でも、こちらの方が発行が古い。
2006年の文庫書下ろし作品だ。
北海道・根室のトーチカから大分県・宇佐の掩体壕までを網羅。巻頭近くに
掲載されている地図を見るだけで、明治から昭和にかけての軍事遺構は
まだまだ日本各地に残されているのだなと感じる。
北海道の函館山は観光地としても有名だが、その地下には今でもひっそり
と軍事遺構が眠っている。
戦時中に突貫工事で作られたトーチカは築造に関する資料が残されてい
ることがほとんどないそうだ。だが、根室のトーチカについては築造指揮を
執った大山柏大隊長が詳細な日誌と図を残していることから当時の跡を
綿密に辿ることが出来るほかに、上層部の無理解・不見識に対しての
不満も綴られているとか。
興味深かったのは千葉県・茂原市の掩体壕だ。戦後、戦後になって
土地は民間に払い下げられ敷地内の掩体壕は農家の納屋などとして
利用された。だが、掩体壕自体は大蔵省の管轄下に残されたことから
詐欺事件が起きた。どんな時代でも詐欺を考える人はひるんだね。
文章は淡々としているのだが、この茂原市に残る掩体壕のすべてを
訪ね歩いたりしていることから著者の並々ならぬ情熱を感じる。
それにしても本書に掲載されている軍事遺構もそうだが、昭和初期まで
の建築物に使用されている赤レンガっていいよな。今では「赤レンガ」と
いえば東京駅を思い浮かべがちだが、そこらじゅうに赤レンガの建物
があったんだよね。
開発が進んで既に観光地の感が強いお台場だって、元々の地名の
由来は江戸幕府の砲台跡だもの。まぁ、その頃と比べたら海岸線は
大分変っているのだが。
写真も豊富に掲載されており、著者の豊富な知識と実際の深い観察
の様子で各遺構が解説されているので戦争自体に興味がなくても
読むのに苦はないだろう。
一般に開放されていない場所もあるようだが、個人的はいつかは
信州松代の象山地下壕の見学に行きたいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新書文庫
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「軍事遺産」を歩いた廻り歩いた著者
日本国内の有名どころを中心にしているけど
本当はもっと名前も知らないようなところにも沢山行ってるんじゃないかと思わせる一冊