挑発する知: 愛国とナショナリズムを問う (ちくま文庫 み 18-4)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423870

作品紹介・あらすじ

愛国心とは何か、大国アメリカをどう考えるか、右翼とは何か、左翼とは何か、丸山眞男をどう評価するか、アジア主義の可能性とは何か、そもそも国家とは何か、知識人の役割とは何か…。アクティブな言論活動でも知られる社会学者と政治学者の2人が、揺れ動く現代日本の重要問題を取り上げ、徹底討論。安倍内閣以後を主題とする07年の対談「日本・アメリカ・アジアを問う」を新たに収録する。

感想・レビュー・書評

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  • ハーバーマスとルーマンの論争とはどんなものだったのか。
    その答えを求めていくと、意外にも姜尚中と宮台真司の対談に行き着いた。
    私の立場も明らかになる。やはりシステム論である。大多数の人の理性を信じつつも、システムを操縦せざるを得ない。これ、システム論。

  • 一部加筆2007(底本2003)年刊行。◆戦争(国家による暴力)、社会における暴力、国家概念、アジア(特に東アジア)、メディアと知識人、アメリカと日米関係を軸に、社会思想・政治思想の観点から現代を読み解く一書。◆集団的自衛権(国連中心主義か?)や改憲問題にも触れているが、やはりメディアへの露出の多い2人だけあり、メディア論が一番面白い。◇前者に関しては、具体的な権限行使の在り様が首相やその取り巻きのパーソナリティに依存する問題を相当過小評価しているのが気になる。◇また、国民益を実現するための方法。
    すなわち、国民益の実現のため、ネイション・政治権力の操縦を徹底して吟味・検討・実行するという議論は、理念的には首肯する。しかし、そもそも、➀投票率の現状、②選挙権以外の政治権力操縦方法の具体的プログラムの不足(請願権の乏しい実)、③著者のようなリテラシーと余裕ある人物ならともかく、日常生活に汲々としている人々に著者らの呼びかけが空疎に映らないか、④代議制・間接民主主義採用の基本理念が、ヒトラー的独裁者を生み出さないためにあり、これとのバランスをどう図るか。種々の疑問は生まれてくる。
    ◆とはいえ、社会思想・政治思想のブックガイドの役割も果たせ、全体的に割と判り易い文章なので、一読に如くはないだろう。◆ただ、著者らはネオリベラリズムを新自由主義と同義と捉えており、理念的に小さな政府を標榜する新自由主義と概念矛盾の上、所得再分配の再構築を目指すのがネオリベとする佐々木毅氏の分析とはかなり違う。この点は注意・検討必要か。◆著者姜は東京大学情報学環教授、宮台は首都大学東京都市教養学部教授。

  • 姜尚中と宮台真司が2003年におこなったトーク・セッションをまとめた本です。

    新自由主義や当時の第一次安部内閣に対する批判という点では共闘関係にあるとはいえ、2人の立場にはかなりの隔たりがあると思うのですが、対談ではなくトーク・セッションということもあってか、正面から意見をぶつけ合っているという印象はなく、ちょっと肩すかしの感があります。

    とはいうものの、丸山眞男の評価やネグリのマルチチュードをめぐる議論では、宮台の方がかなり「挑発する」ような問題提起をおこなっています。しかし姜の方は、何か戦略的な意図があるのか、宮台との対立を回避しようとしている印象を受けます。また宮台が執筆している「まえがき」では、自身と姜との違いをクリアに整理しており、「認識」を重視する立場と「制御」を重視する立場の違いとしてまとめています。しかし「あとがき」を執筆している姜の方は、宮台の問いかけに触れつつも、あまりみずからの立場を明確にする議論を展開していません。

    私自身は、丸山やネグリの評価に関しては姜の方に共感を覚えているので、こうした姜のあいまいな態度には正直なところ苛立ちを覚えてしまいます。たとえば、宮台はシャンタル・ムフのネグリ批判を参照しながら、マルチチュードがグローバリズムへの「対抗」ではなく「補完」にしかならないと言い、また19世紀的なアナキズムにすぎないのではないかと論じていますが、反対に宮台の主張するような社会的包摂の危うさについて切り込むことも可能だったのではないか、という気がします。

  • 著者:姜尚中,宮台真司
    内容:対談。
    原本:『挑発する知――国家、思想、そして知識を考える』(双風社2003)。


    【目次】
    目次 [003-007]
    まえがき(二〇〇七年一〇月一〇日 宮台真司) [011-020]

    I 戦争と暴力 
    九・一一からイラク戦争まで
    自由を監視する社会
    アメリカ社会に内在する全体主義
    他者性がもたらす不安とどう向き合うのか
    国民国家とは

    II 非暴力の社会はありえるのか 
    脆弱な国家のネットワークをどうつくるか
    分断国家という悲劇
    リアリズムなき外交
    「イラク戦争」を支持した日本の正統性
    日本は国益を考えているのか?
    親米愛国の矛盾
    非暴力の社会はありえるのか?

    III 右翼と左翼 
    右翼と左翼の現状
    思想の一貫性
    二項対立という図式の終焉
    一九七九年に左翼は終わった?
    ナショナリズムと国益

    IV 国家を考える 
    身捨つるほどの祖国はありや
    国家をハンドリングするということ
    啓蒙主義の化け物としてのアメリカ
    ネオコンの「思想」
    ナショナリストの本義
    「こころ主義」に回帰する日本
    ロマン主義とは

    V 丸山眞男からアジア主義へ 
    一国独立して一身独立する?
    ナショナリズムの病
    弱者が集い、強者に抗う思想
    丸山眞男とアジア主義
    多国間主義の必要性
    マルチレイヤーな社会

    VI メディアと正義 
    北朝鮮報道とメディア
    姜さんや宮台さんは複雑なことをいっている?
    禁断のふたをあけた九・一一
    青臭い正義は必要ないのか?
    「人食い」と付き合う方法
    ミドルマンの役割
    カルチュラル・プルーラリズムのすすめ

    VII 知識人を考える 
    知識人とは何か
    情報を発することの責任
    戦争報道における知識人の動向
    ニュートラルはありえない
    利害集団としての記者クラブ
    国を愛するということの意味
    この社会で生きていきたい
    お祭り大国・日本

    VIII 日本・アメリカ・アジアを問う 
    「日本型ネオコン」の挫折
    ネオリベ化が国民を引き裂く
    来るべき保守のかたち
    安保と抱き合わせの日本の平和主義
    グローバライゼーションと国家
    白黒つけたがるアメリカの特殊性

    あとがき(二〇〇七年一〇月一〇日 姜尚中) [333-341]

  • ぼくには難しいところがあるんだけど、丸山眞男の話ぐらいまでの特に難しいと感じる部分が歯応えがあって面白かった。この一冊から色々な本に広がっていけそうな注釈の多さも好き。また対談やってほしいなぁ。

  • [ 内容 ]
    愛国心とは何か、大国アメリカをどう考えるか、右翼とは何か、左翼とは何か、丸山眞男をどう評価するか、アジア主義の可能性とは何か、そもそも国家とは何か、知識人の役割とは何か…。
    アクティブな言論活動でも知られる社会学者と政治学者の2人が、揺れ動く現代日本の重要問題を取り上げ、徹底討論。
    安倍内閣以後を主題とする07年の対談「日本・アメリカ・アジアを問う」を新たに収録する。

    [ 目次 ]
    1 戦争と暴力
    2 非暴力の社会はありえるのか
    3 右翼と左翼
    4 国家を考える
    5 丸山眞男からアジア主義へ
    6 メディアと正義
    7 知識人を考える
    8 日本・アメリカ・アジアを問う

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 息もつかせぬ、知と知のぶつかり合い。
    現在の世の中と照らし合わせても、色褪せない知見が詰まっている。

  •  2003年の宮台真司と姜尚中氏の対談をまとめたのがこの本の単行本版です。それを2007年に文庫化するときに新たな対談が追加されています。これは文庫版のレビューです。
     2003年は、9.11からアフガン、イラクへと戦争が起きた時代背景からアメリカ社会の問題、国家論、アジア主義、メディアの問題、知識人の問題と多岐にわたる議論が展開されています。追加対談では日本版ネオコンであった安部総理辞任報道の翌日に行われていて、当時の思想状況がよくわかります。
    国家を市民が操縦することは、今の政治状況においても本質的な課題です。ここで指摘されている問題は更にひどくなってそのまま続いているので、今読んでも非常に参考になります。
     

  • 安倍首相時代に書かれた本。安倍さんは北朝鮮に対して対話と圧力というが対話はない。
    田舎者ほど、ナショナリズムに執着する。嫌だね。
    朝鮮問題は戦後史の中で議論されてこなかった。
    日本には歴史オタクが多くて、歴史上の人物と自分を重ねて自分もできると思い込んでいるが実際は無理。
    高度技術社会でエキスパートをチェックするのが新しい知識人。
    トロンとかユビキタスには国もお金をつぎ込むから安泰だが、文系社会学は斜陽産業、大学の盲腸。これで日本、世界は大丈夫か?
    サッチャー首相が「社会は存在しない、あるのは個人だけ」と言ったらしい。さすがだ。

  • さまざまな問題は本当に根深いなと思った。
    右翼左翼ネオコンネオリベ・・・etc
    無知すぎるので何度も読み返して理解を目指します。


    宮台さんの言う、ミドルマンの役割ってのはゼミに参加したからこそ実感できたが、まさにその通りに感じた。


    とりあえず雑魚ミドルマンくらいには進化したいものです。

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著者プロフィール

1950年熊本県生まれ。東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判』(以上岩波現代文庫)『ナショナリズム』(岩波書店)『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)『増補版 日朝関係の克服』『姜尚中の政治学入門』『漱石のことば』(以上集英社新書)『在日』(集英社文庫)『愛国の作法』(朝日新書)など。

「2017年 『Doing History』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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