- Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480424396
作品紹介・あらすじ
勝っても負けても甲子園を取り巻く空気は熱い。なにが阪神ファンをおどらせているのか。阪神への幻想はいつどのようにしてつくられてきたのか。気鋭の批評家であり熱烈な阪神ファンでもある著者が、その正体を歴史的につきとめようとし、独自の視点から浮かびあがらせた愛すべき関西球団の知られざる真実と伝説。知的興奮にみちた野球文化史の好著。
感想・レビュー・書評
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日本プロ野球と阪神タイガースの歴史をたどることで、現在の阪神タイガース・ファンのイメージが比較的新しい時期にメディアを通じて形成されていったことが明らかにされている本です。
わたくし自身も関西出身で、阪神が試合に勝った翌日は朝日放送の『おはようパーソナリティ』で道場洋三が『六甲おろし』を歌うのを聞きながら育ってきました。1992年のペナント・レースで優勝を逃して以降は、「忘れもしない〇年前……」と嘆き節をくり返していたことも思い出されます。そんな関西人の阪神タイガースへの熱い思いが、意外にも新しい現象であったことを教えられました。
ただ、著者自身「あとがき」で認めているように、著者の他の本にくらべるならば、文献の調査にやや甘いところがあるのも事実です。それでも、一つの球団の歴史を、そのファンの心性の変遷にも踏み込みながら学術的に解明することに取り組んだ本として、興味深く読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルを一瞥すれば、タイガースの暴露本もしくはフーリガン的ファンの生態を揶揄した「あるある本」かと思う。読み出してみれば、一級の「日本プロ野球通史」である。プロ野球の草創期は暗闘の歴史でもある。讀賣と毎日、阪神と阪急、正力松太郎と小林一三、六大学とプロ野球、東京と大阪…、思惑、企み、打算、代理戦争、雌雄対決。様々な小競り合いの中で、阪神球団は一貫して穴蔵に生息する小動物よろしく、ひたすら孤塁を守る。セパ分裂の際、パに属した在阪の鉄道会社はやがて球団を手放す中で、方や巨人に頼らずとも、千客万来の金満球団へと変貌を遂げていく。その背景には在阪民放や吉本によるメディアミックスによる宣伝効果が強力な援軍となり、それが今日の乱舞するジェット風船であり、嬉々とした甲子園詣でにつながっていく。「不動の人気を誇る巨人の助演者として全国的に道化的な存在となったタイガース」と「メディアが育てたタイガースファン」、この2点にフォーカスし、その正体を明らかにしていく紀伝体の阪神論!
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2008年6月10日、初、並、帯無
2017年2月17日、津BF