- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480424655
感想・レビュー・書評
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幻の近衛文麿・ルーズヴェルト会談
近衛は相手の空気が読めない男
時の外務省も世界情勢が全く読めなかった
官僚の質的低下は顕著
太平洋戦争開戦の意思決定過程 国策より省益
結果責任は不明!
政治決定の欠落による戦争開始・・・歴史家を当惑させる詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2018/03/31 15:33:50
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2008年刊行。一定の戦争計画が存在した戦争(独の対ポーランド戦、対仏戦、対ソ戦、中国国民党の日中戦争)に比し、日本の対米開戦はそのようなものが存在しなかった。そんな中、如何に対米開戦が決定していったか、これを解説しようとするもの。松岡洋右外相の無知蒙昧(リアリズム・相手を含め利害得失の検討能力の欠片もない意味で同感)と近衛文麿の決断力を徹底批判しつつ、権限範囲内での官僚の最適解の希求の不合理さを鋭く突く。北支撤兵を前提とする日米了解案を東条が是認していた点のソースに疑問はあるが、なかなか面白い一書。
敵を減らし、味方を増やす。味方にならないなら好意的中立を引き出し、それすらできないなら敵に援助を与えない中立を引き出す。素人でも判りそうな大方針だが、その観点で、対米開戦にいかなる意味があったのか。対米開戦と日中戦争終結を結びつける陸軍に?なのはもとより、独ソ戦がアメリカに与える影響を考慮できなかった政府・外交、対米への先制的開戦がアメリカ・その国民に与える影響を軽く見過ぎた海軍。やりきれなさは満載。 -
帯に開戦論の常識を覆すとあります。歴史には定説があります。太平洋戦争史は、良くも悪くも東京裁判を基準に論じられています。本書を読むと、別の視点から見ることができ、今までと見方が変わる部分もありました。
例えば、一般的に真珠湾攻撃に先立ち開戦通告が遅れたことが問題とされていますが、本書によれば、「そものも国際法規によれば、戦争は自衛でしか開始できず、自衛とは攻撃を受けた場合の反撃である」とあります。この場合、通告の手順といった次元ではなく、前提として戦争開始の要件を満たしていなかったことになります。
本書の見方が正しいのかはわかりませんが、発想の転換が図れるのでお勧めです。 -
誰が太平洋戦争を始めたのかという自らの問いへの回答として、巻末に結論として「太平洋戦争の真の作者は「ハワイ作戦」そのものである。作戦計画が勝手に暴走したのである。」としている。また、「一九四一年十二月の日本の指導者は、作戦がいかなる結果を招くかについて想像することすらせず、しどろもどろになりながら、世界戦争に飛び込んでいったのである。」 と締めくくっている。いまの政治家の言動にも当てはまる指摘ではないだろうか
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読了。ドイツナチス・ヒトラーの引き起こしたヨーロッパ戦線とは始まりの違う太平洋戦争であることは納得できた。近代史への理解アプローチはハードルが高い。ただ知ることは大事である。
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先の大戦等とも云うけれども、日米戦をどう考えるのかと云うことは、一旦国が滅んだのだから大変重要だと思うのだ。重要なのだが、時期が近いこともあって、歴史として充分に教訓なり未来に向けた改善点なりを見いだす以前に、イデオロギ的に利用され尽くしているようにも思う。
別宮暖朗の論は、軍事学的に見て戦争の開始は動員から始まりこれだけ大きな歯車は動かし出すと止まりにくいのだという見解からスタートしている。その視点は重要で、個人の暴走を防ごうとして構築された「近代的」システムは、その動作に不可逆性を持っている、つまり動き始めた機関車は止められないという現実を充分に言い表していると思う。