- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480425393
作品紹介・あらすじ
日本建国以前の列島の状況を知るには、当時の文献の活用が欠かせない。しかしそのことが、さまざまな誤解を生んできたのも事実だ。本書では、中国大陸の政治動向が列島に及ぼした影響をたどることによって「魏志倭人伝」「日本書紀」の成立事情を解明し、卑弥呼の出現、倭国王家の成立から日本建国までの倭人の実像を、世界史的視点で描き出す。
感想・レビュー・書評
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古事記や日本書紀などなどから、邪馬台国や大和朝廷などを考えるのは可笑しいとバッサリ。
広い視点アジア、中国から考えるべきだとおっしゃっています。なるほど。
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第1章 日本古代史へのアプローチ
第2章 『魏志倭人伝』とは何か
第3章 『日本書紀』の構造
第4章 初代の倭国大王・仁徳天皇
第5章 大和朝廷は実在しなかった
第6章 『古事記』と『三国史記』の価値
第7章 中国はアジアをつくる
第8章 奴国から邪馬台国へ
第9章 謎の四世紀
第10章 日本の誕生
著者:岡田英弘(1931-2017、文京区、東洋史) -
ちょっと前に「私の日本古代史(下)古事記は偽書か」という本を買って読みかけだったのに、読み終わる前にこの本で「古事記は偽書だよ!」という意見に出会ってしまいました。
けっこう書いた人が喧嘩腰で(笑)、邪馬台国九州説とか近畿説とか、騎馬民族説とか全部どれもこれもザックリ斬り捨ててしまうような過激な論調です。かといって、文庫でハンドブックサイズだからか著者の方の主張にも今一つ説得力が足りない…というか、証拠を並べて、ハイ、こうです! と言い切るまでにもう少し何か論拠を並べてほしいなあ…と、丸め込まれているような抵抗感を覚えてしまいました。
単に私が疑り深いだけなのかもしれませんが。
当時の中国大陸、朝鮮半島の情勢をざっくり解説した内容は、私には目新しくて楽しめたのですが、腑に落ちるまでには資料と主張の間に、もう少し解説が欲しかったように思います。 -
百済・倭の連合軍が唐・新羅連合軍に敗れて日本が建国されるに至るまでの歴史が本書のテーマ。
前半は、魏志倭人伝、日本書紀、古事記などの信頼性について取り上げる。その説得力をつけるために第1章を使って「マレー年代記」まで例にあげており、文献の信頼性を論じる終わるまでの前置きに半分以上のページを割いている。
初代の倭国大王は仁徳天皇であったこと、それ以前のヤマト王権は存在しなかったこと(ただし、巻向遺跡をどうとらえるかの疑問は残る)、邪馬台国は畿内であれば河内だった可能性があること、朝鮮半島からの渡来人である秦人や漢人のルーツや立場など、興味深い内容が多かった。
岡田さんの本は「歴史とはなにか」「世界史の誕生」を読んで、すっかりひいきになったが、この本もとても丁寧に説明されており、読み応えがあった。これほどの力作が1976年に発表されていたことにも驚く。読まない決断をしなくてよかったと、ほっとしているほど。
・「隋書倭国伝」によると、600〜609年の間、倭王の位にあったのはアメ・タラシヒコ・オホキミという男王で、日本書紀による推古天皇と異なる。
・宋書に書かれている「倭の五王」は、履中から雄略の5代ではなく、仁徳以下の天皇。
・日本書紀の第2〜11代天皇の記述は、すべて7世紀の事件をもとに作られた。第12代景行天皇紀の東国の英雄の原型は天武天皇。初代神武天皇の大和平定の物語は、壬申の乱の産物。
・祖先は高千穂の峯に天降ったのは、隼人の同化に努力した天武天皇の政策から生まれた話。
・古事記は、日本書紀や風土記から材料を採って平安初期に書き直したもの。古事記の序を書いた太安麻呂は、新羅系の帰化人と関係が深く、壬申の乱や薬子の乱で失脚し、宮廷音楽を管理するだけの家柄となった多氏の家系。
・古代中国の都市の住民は、外来の狄人が中核となり、狩猟民族特有の氏族組織のもとに共同生活を営んだ。
・BC3世紀に燕国が朝鮮半島に前線基地を設置して、日本列島に向かう貿易ルートを握った。
・「魏志東夷伝」によると、辰韓人は秦の暴政を避けるために亡命してきた中国人の子孫。
・五湖十六国の乱とそれに続く南北朝の時代に中国の勢力が及ばなかった結果、百済、新羅、日本が独立王国として成長した。
・369年の七支刀に刻まれた百済王と倭王との友好関係は、高句麗の南進という脅威を前にして、安全保障条約を結んだことを意味する。
・早くから中国化していた辰韓・弁韓からは古くから華僑が倭国に流れ込み、秦人と呼ばれた。475年に広州が陥落して以降、帯方郡からの移民が日本列島に流れ込み、漢人となった。朝鮮半島からの移民によって平野部が開拓された結果、河内、大和、山城、近江などが秦人や漢人で占められるようになった。 -
再読。聖書学にはbiblical minimalismという(学問と呼ぶに値する)学派があるけど、この本は東洋史におけるそれ。衿を正して読む。
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孤高の史家とでも云えばいいか。岡田英弘師の視点は権威に縛られない。世界史的状況から「日本」以前の「倭国」を述べるならこうなるだろうという点において、実証的かつ説得的だ。しかもその内容は、我々の常識とされている「日本史」と乖離しているので、衝撃的でもある。聖徳太子は存在しない、とは!
しかし高校の教科書よりもより納得できるのだ。 -
古代日本史を世界史の大きな枠組みから再解釈した、みたいな感じの本。元は1976年に書かれた本。昔は日本書紀に書いてあることをそのまま歴史として受容していたがそれは違うよねという話。確かに考えてみたら日本書紀に書いてあることがそんな全部正しいはずないよな。
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中国史の先生が書いた日本古代史の本。1976年に出版された本の文庫版である。
○日本の古代史を世界史の視点から見る
○日本を作ったのは中国文化であり、華僑の進出が日本を国家たらしめた
○初代の倭国大王は仁徳天皇である
○大和朝廷というものは存在せず、河内(仁徳天皇の難波京)から大和へ王宮は移っていった
論旨明快で面白い。特に中国との関係なくして日本古代史は成立しないという論理には納得できる。
朝鮮文明も日本文明も中国文明無しでは成立しなかったのである。
ただ、理論の展開にアクが強すぎる嫌いがある。マレー年代記やその後のマレー半島の歴史を引き合いに出して、日本書紀の信憑性や日本の国家成立の過程を推測するのは説得力に欠けるように思う。殷王朝の国号「商」やその前王朝と言われる「夏」がどちらも商売に結びついているなどと言う話は、つい白川先生の字統などを引いてしまった(現在の意味は別として、もともとの漢字の意味では商売とは結びつかない)
77年に書かれた「倭国」の方が読みやすいかもしれません(内容的には大きく重なる)