図書館の神様 (ちくま文庫 せ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426260

感想・レビュー・書評

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  • 瀬尾まいこ 著

    いや〜参りました。とんでもなく良かったですよ!この本(о´∀`о)
    激動の人生を送り、深く人生を掘り起こし、心揺さぶるような感動巨編というわけでは決してない!
    でも、純粋に好きだって思う。
    ミステリーでもないのに、読む手を止められず、どんどん読み進めてしまう。

    呆れるわ、と笑いつつも自然に主人公に寄り添って感心したり戸惑ったりしてしまう。
    作者、瀬尾まいこさんの作品のイメージは、
    まず、清く正しく嫌な事があっても、爽やかでいて悪い人は登場しないというセオリーをやっぱり崩さない作家さんだなぁって思う。

    私も自分のセオリーどおり読後に山本幸久さんの解説を読んだ。
    開口一番「ぼくは垣内君の意見に賛同する」という文が飛び込んでくる!
    本に向かって「そう!私も絶対、賛同する」って晴れやかに心の中で声をあげた(^。^)

    『図書館の神様』と題する本作、厄介な体調不良を抱えながら”健全な魂は不健康な身体にこそ宿るのだ”と言わしめる(゚o゚;;
    まずその言葉に面食らった‼︎( ・∇・)
    そんな言葉聞いたことない、健康な身体に健康な精神は宿る…じゃなかったっけ~(・・?
    でも、その聞いたことのないような言葉に病気持ちの私は少し救われた気分になった^^;

    しかもバレボールに打ち込むことで、より元気チャージされて不健康とは程遠い体育会系ではないか⁉︎この話の展開から図書館の神様とはどういう事なのか…興味をそそられない訳がない。一体いつどこに図書館の神様は現れるのだ⁉︎

    「黙るべき時を知る人は言うべき時を知る」文中に垣内君の会話の中で出てくるんだけど…『言うべきときを知る者は、黙すべきときを知る』ってアルキメデスの言葉じゃなかったっけ?なんて思いつつも、要はそんなことはどうでもいいのだ、
    その意味合いを自分の中で知っていて、いざその時を自分で成せることが大切なんだって、そんなことまで気づかせてくれる。

    愛人の浅見や弟の拓実の登場人物はさほど関係ないかのように見えて、実は重要な存在として物語に上手くかかわってくる。その溶け込みかたや瀬尾まいこさんの描き方ってホントいいよなぁ、好きだなぁって思う。
    (弟の拓実のキャラがまたいいのよ(^^)

    ところで、ブクログの方の本棚でも見つけてレビューを読んで、とても読みたくなり、自分の本棚にも登録している山本周五郎さんの『さぶ』という小説の話しが本作にも登場して、本文の内容が少し引用されている。
    ますます、読みたくなった‼︎
    絶対私の好きな作品だ!直感で分かる(°▽°)
    私は山本周五郎賞を受賞している作家さんの作品は何冊か読んだ事があって、山本周五郎賞をとっている作品はいつも素晴らしくて好きな作風で、
    「流石、山本周五郎賞とるだけのことあるわ!」とほくそ笑んでる割に、肝心の山本周五郎本人の作品をあまり読んでないことに今更のように気付く(・・;)いやはや、是非にでもはやく手に取って読まねば、読みたいです。

    文中に出てくる川端康成や夏目漱石然り…
    中学や高校時代に偉大な文人の小説を読めば文学に携わってるような気がして、学校帰りのバスの中で、結構読んでいたけれど、その頃は、解説の中でも紹介されてた川端康成の小説に「あ〜こんなこと書いてた場面あったなぁ」と思いつつも、あの頃の自分はちょっと気味悪い、この文章何だか引くわ〜とも感じたこともあったから、読む年代や精神的な年齢やら時代にも感じ方や受け取り方は随分違うんだろうなぁって思う。
    垣内君曰く「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ…、、」
    確かにねぇ、のび太のようにタイムマシーンに乗って、その時代に今ならタイムトラベルしてみたい気もする(^-^)笑

    “文学なんてみんなが好き勝手にやればいい。
    だけど、すごい面白いんだ。”クールな図書委員の垣内君の熱を帯びた言葉に頷いた
     図書館の神様、ここに現るか…。

    過去の思い出に引きずられながら…あんまり乗り気でないことも、茶化したりふざけたり、結局真面目に考え真剣になることもあるけど、ふんわりしたような人生が心地よい気分にさせてくれる本作。
    だけど、ラストに送られてきた三通の手紙
    三通の手紙の中の最後の一通の手紙に
    元々、涙脆い自分だからか…?
    泣きたくもないのに、鼻の奥がつーんとしてきて…またしても、きっちり、涙が溢れてしまいましたよ(´;ω;`)
    瀬尾まいこさん、やっぱり、ずるいよね…。

  • 投げやりな生き方をしていた新任教師が、成り行きで文芸部顧問に。
    図書館で何かが始まる?

    早川清(キヨ)は、もともと正しく生きることで身体のめちゃくちゃな不調を乗り越えてきた女の子。
    高校でもバレーボーㇽに打ち込み、自分のスタイルを通していました。
    その熱意のままに、ミスをしたメンバーを叱咤したところ、その子は突然自殺してしまう。
    ‥これはきつい。すぐには立ち直りようが見当たらない。
    強い否定の言葉は人をストップさせる力があると知らなかったのは、若気の至り。とはいえ、ここまでのことには普通はならないでしょう。
    他にも何か悩みがあったのでは、とは考えられるけれど、これといって見つからないらしい。

    清は目標を見失い、離れた土地へ進学、成り行きで高校の国語講師に。
    さらに成り行きで文芸部の顧問になります。大して本を読むタイプでもないのに。
    部員は、3年生の垣内君だけ。
    彼は本好きで、文学が好きだとはっきり言える男。
    落ち着いていて、どっちが先生かって感じだが。
    淡々としている彼にも、中学時代の部活で苦い思いをした経験があったのだ…

    清く正しく生きることをやめた清は、何となく不倫相手の浅見さんと別れきれずに続いています。
    一方、清の弟の拓実は思いやりがある青年で、時々会いに来るのでした。
    やる気なく何気なく続いていくような日常で、生まれてくる親しみと新たな経験。
    人との出会いは、無意味なものではないんだなと。
    後には、高校時代のことにも、ある救いが。

    垣内君と清の間がさわやかで、恋愛ではないけれど通り一遍ではない人と人との間の絆が感じられます。
    奇妙なスタートから始まり、じわじわと心を育んでいく‥
    あたたかな読後感でした。

  • 『図書館の神様』ってどういう意味なのかな?
    とまず思いました。
    図書館に神様が宿っているという意味なのか、誰か登場人物のことを指しているのか。

    高校の国語講師になった22歳の早川清は本当は高校の時にやっていた、バレーボール部の顧問になりたかったのですが、文芸部の顧問にされてしまい、たった一人の部員の三年生の垣内君と二人で時間を過ごします。
    清には、高校の時、バレーボール部で部員のミスを責めて、自殺に追いやったのではないかと思い自分を責めている過去があります。
    垣内君もまた中学の時にサッカー部のキャプテンをしていて、その時の部員が事故で半年入院していたことがあったことを清はあとで知ります。

    以下、完全にネタバレですので、まっさらな気持ちでこの作品を読みたい方はご注意ください。
    (どうしても書きたかったのですいません)

    垣内君は卒業式の一週間前に文芸部の発表で語ります。
    「文学を通せば何年も前に生きてきた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。
    のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする」
    清は「文学は面白いけど私にとっての「それ」ではない。今の私には愛すべき人もいない。「それ」をする方法。自分以外の世界に触れる方法。今、思いつくのは一つだけだ」と教師であることに意義をみいだします。

    「神様のいる場所はきっとたくさんある。私を救ってくれるものもちゃんとそこにある」

    図書館の神様の意味はわかりました。

  • 自分の正しさが、いつでも世の中の正しさと一致するとは限らない。けれどそんなことに気づくのは、信じていたものに裏切られたり、心がぽきりと折れてしまったり。哀しいことに自分が傷ついて初めてわかることなのかもしれない。

    傷ついた心は、たやすく他人に委ねることが出来ないのだけれど、人は、恋人や家族、周囲の人々に救いを求めながら癒していくのじゃないかな。たとえ、どれだけ頑なに背を向けていようとも。知らず知らずにだとしても、やっぱり人はひとりでは生きられないのだから。

    清と垣内君の関係が気持ちいいくらい清々しく、さっぱりとしている。お互いに傷をさらけだしたり、舐め合ったり決してそんなことはしない。お互いに踏み込まず、ただ、図書室での文芸部の活動を通して。同志のような絆なのかな。なにもかも知る必要もなく、カミングアウトする必要もない。それでも自分の生きる道が自ずから見えてくるのは、実は答えはとっくの昔にあるのだから。

    あ、一番惹かれたのは垣内くんの文学にたいする姿勢だ。それはそれは格好いいのだ。

  • 図書館で、たまたま「本日返却された書籍」のコーナーを見ていたら、そういえば誰かの本棚かレビューでこの作家「瀬尾まいこ」という名前があったなあと思い、軽く手に取り、借りてみた一冊。
    まさに「図書館の神様」が教えてくれたような一冊だった。

    清。私の名前だ。
    で始まるこの物語。
    さすが「坊ちゃん文学賞」大賞受賞者。
    吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
    と書き出しの雰囲気が似ている。

    すらすらと入っていける、センテンスの短い軽い文章。二時間半で読み終えた。
    かと言って、表現に手を抜いているわけではない。
    随所にキラリと光る表現や文章が見え隠れする。
    重い小説を読み終えた後だったので、軽くて楽しそうでいいなあ、と読み始めたら、7P目でいきなり人が死んでしまったのにはびっくり。
    こういうサプライズがさりげなく出てくるのが「いい小説」なのだ。

    主人公の清先生(キヨという名前の女性です)。
    高校三年までは何事にも手を抜かず、清く正しく一所懸命。
    バレーボール一直線の体育会系だったが、ある出来事がきっかけで投げやりな人生観を持つようになる。
    国語の講師だというのに、文学なんてまったく興味がなく、本など読みたくもない先生。
    そんな清先生が、国語を教えているからという理由で文芸部の顧問をやらされる羽目に。
    しかも部員は一人だけ。
    全くやる気のない顧問と、部員が他にいないので部長である垣内君とのやり取りが実に愉快。
    「部の予算はどうしましょう。先生何かほしい物ありますか?」
    と垣内君に訊かれた顧問先生は、
    「ほしい物? 車かなあ。今のは2ドアで不便だから、せめて4ドアの車がほしい」
    などと答える、本当にやる気のない先生。
    川端康成を読み耽る垣内君に対して、図書館に唯一あるマンガ「はだしのゲン」を読む先生。
    でも、ふとしたことがきっかけで「文学」も捨てたもんじゃない、と気づく。
    それと垣内君が文芸部に入った理由にも。
    そうか、彼にもそんな過去があったのか、と。

    少しずつ文学の面白さ、文芸部の存在意義に気づいた清先生は、部員一人の部など切り捨ててしまおうとする他の先生に一人敢然と立ち向かう。
    P134:「文芸部はひまつぶしでもないし、垣内君はくすぶってもいません。一日だって同じことをしている日はありません。(中略)ただ単に勝つことだけを目標に、毎日同じような練習を繰り返しているような体育会系のクラブこそ存続を考えたらいかがでしょう」
    と自分の中で何かが切れるのを感じ、思わず反論する場面。
    読んでいて、笑いながら拍手喝采したが、
    あれほど体育会系で、ひたすら根性や努力というような言葉が身に染み付いていたはずの清が目覚めた瞬間だ。
    運動部だけが汗を流しているわけではない。文芸部だって心の汗を流しているのだ。

    竹中直人のデビュー当時のギャグで「笑いながら怒るおじさん」というのがあるが、
    泣きながら笑わせる、もしくは笑いを誘いながらも泣かせる小説を書くというのは結構むずかしい。
    軽くさらりとした文章で、ある時は笑わせ、ある時はほろりとさせ、でもテーマはしっかりとぶれない。

    最後に届いた三通の手紙。なかでも、思いがけない三番目の手紙が心を打つ。
    読後感も爽やかで、ほのぼの感のある、こんな小説もいいものだ。
    瀬尾まいこ。他の作品も読んでみよう。

  • 加藤さんとの件、キヨが山本さんの事を明かしたあと、加藤さんが「そんな経験した事ないから何て答えたらいいか分からない」という。
    バレーボールに順調に打ち込んできて山本さんの事件があって、その後、キヨの心の底にある物の重さに、正直想像もつかない。
    浅見と、拓実と垣内くん…いろんな人との関わりの中でジワジワとカッコ良くはないけれど、キヨが少しずつ前に進めるようになれたのは、良かったというより、ほっとした。

  • 再読です。初めて読んだ瀬尾まいこさんの作品でした。
    垣内君と清の掛け合いがおもしろいです。思わず読みながら噴き出してしまうことも・・・(笑)作中に出てくる文学作品を読んでみたくなりました。
    清は過去のある出来事のせいで日々を投げやりに過ごしていました。でも文芸部で出会った垣内君との交流、弟の拓実の優しさ、浅見さんと過ごした時間と別れによって、清の心はだんだん救われていき、変わっていきます。
    垣内君がユーモアがあって優しくて、かっこいいです・・・最後の主張大会での堂々とした発表・・・惚れました!他人にどう言われようが関係なく、垣内君は文学から多くのものを吸収し、充実した高校生活を送っていたと思うし、青春していたと思います。
    あと、弟の拓実の底なしの優しさに清は本当に救われていると思いました。瀬尾さんの作品を読んでいると家族の支えの大切さにについて考えずにはいられません。
    瀬尾さんの作品の中で大好きな作品で、自分にとって本を読むってこういうことなんだ、と改めて思わせてくれる大事な作品です。

  • 主人公が被害者ぶらず、淡々と生きている感じが良いです。些細な達成感が共感できます。
    ラストの垣内くんのスピーチにじーーんと来ました。二人で駆け抜ける場面には躍動感があり、テンションが上がり嬉しくなりました。
    微笑ましく、人間らしい物語でした。

  • 本に関心が無いのに高校教師?と思ってしまったが、文芸部のたった一人の部員、垣内くんとの関係ややりとりが面白い。垣内くんは高校生とは思えない落ちつきが、ありとても好感を持てる。主人公の弟の深い優しさもすごく心地よい。こんな兄弟いる??って感じるくらい。皆に守られて再生、成長していく点良かったです。

  • のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアでせかいをまわる。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをするー。
    文学を通して私は何だってできる。垣内くんのおかげで、本がますます好きになった。

    • kuroayameさん
      この度はフォローしていただきありがとうございます\(^o^)/。
      本棚を拝見させていたいた、私が好きで読んだ本がたくさんあり、とても嬉しかっ...
      この度はフォローしていただきありがとうございます\(^o^)/。
      本棚を拝見させていたいた、私が好きで読んだ本がたくさんあり、とても嬉しかったです(^O^)/。
      これからも是非レビューを拝見させていただきたく、どうぞよろしくお願いします。
      2012/12/01

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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