茨木のり子集 言の葉2(全3巻) (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 199
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480427526

作品紹介・あらすじ

年代別の詩とエッセイなどで編む自選作品集。1970年代〜80年代、静かで、深い思索の結晶。

感想・レビュー・書評

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  • &Premiumの本特集号にて、「忙しいときこそ詩集を」というアドバイスに合わせて茨木のり子さんが紹介されており、買ってみた。

    「小説に対して、詩の言葉は短くてダイレクト。リズムもいい。ふと誦じたりすれば、生きるうえでの杖になり、心の特効薬になるーーそんな自分だけの詩を見つけてほしいです。」&Premium 江南亜美子

    たしかに、詩は言葉の密度が濃く、少しの時間でそんな言葉に出会えるから幸せだ。

    本書は前半が詩、後半がエッセイという構成。エッセイでは、同時代に活躍された文化人(主に詩人)のことが生き生きと描かれている。また著者が詩人であるからこそ、日本語についての考察も豊富で楽しかった。

    収録詩集
    ・人名詩集
    ・自分の感受性くらい
    ・寸志

    特に好きだったエッセイ
    ・山本安英の花
    ・美しい言葉とは
    ・ハングルへの旅

    読み進めるにつれ、この本にも収録されている『花ゲリラ』という詩の言葉が私の頭の中で反響していくようだった。人が何気なく言った一言が、本人は忘れてしまうような他愛のないものでも、他人にとっては宝物のようであり得る、という趣旨の詩である。

    『花ゲリラ』

    あの時 あなたは こうおっしゃった
    なつかしく友人の昔の言葉を取り出してみる
    私を調整してくれた大切な一言でした
    そんなこと言ったかしら ひャ 忘れた

    あなたが 或る日或る時 そう言ったの
    知人の一人が好きな指輪でも摘みあげるように
    ひらり取り出すが 今度はこちらが覚えていない
    そんな気障なこと言ったかしら

    それぞれが捉えた餌を枝にひっかけ
    ポカンと忘れた百舌である
    思うに 言葉の保管所は
    お互いがお互いに他人のこころのなか

    だからこそ
    生きられる
    千年前の恋唄も 七百年前の物語も
    遠い国の 遠い日の 罪人の呟きさえも

    どこかに花ゲリラでもいるのか
    ポケットに種子しのばせて何喰わぬ顔
    あちらでパラリ こちらでリラパ!
    へんなところに異種の花 咲かせる  」

    昨年は良い時と悪い時のアップダウンが激しくて、元気がない時間が正直長かった。でも振り返ると、友人知人の小さな言葉にたくさん励まされ、本で出会う言葉にハッとさせられ、だからこそ、生きられた。「だからこそ 生きられる」という言葉に実感と深い共感を持って出会えたのも、幸せな瞬間だった。

    後半のエッセイを併せて読むとよりご本人の実感にも触れられて味わい深くなる。ご本人も人間が好きで言葉が好きで、だから交流が好きなんだなということを、全体を通して感じた。

  •  ◎記憶に残った詩の一部分
     「兄弟」 
    彼らはあとかたもなく忘れてしまうだろう 
    羽越線のさびしい駅を通過するとき
    交した幼い会話のきれはし 不思議だ
    これから会うこともないだろう他人の私が
    彼らのきらめく言葉を掬い
    長く記憶し続けてゆくだろうということは

     
     ◎波立つものを感じたエッセイ
     「いちど視たもの」
     1に収録されている「埴輪」。あの作品を書くことになったのは、敗戦後、記紀の垂仁記にある埴輪作製の縁起を読んで、あの戦争では天皇家という古墳を守るための人垣にされたのだとの思いが書かせたのだと言う。戦争で青春を奪われた著者の拘りが端的に表されている。
     

  • 「ばかものよ」
    きっと泣きながら零した言葉だ。
    自分の感受性くらい、自分の感受性くらい、
    たったそれだけがこんなにも遠い、不完全な、自分。
    それでも、私にはきっと愛おしい。

  • 男とつきあわない女は色褪せる
    女とつきあわない男は馬鹿になる

    このフレーズが印象的だった

  • 詩集、エッセイが収められている。作者の詩はとても好きで言の葉Ⅰ・Ⅲと同時購入した。難しいことはなくわかりやすい。「強」「凛」「潔」といった言葉が似合う女性だ。有名な「自分の感受性くらい」がある。

  • 第二巻は1970年代から80年代。詩はいよいよ冴え渡り、「自分の感受性くらい」をはじめとして有名な作品を収録。エッセイの金子光晴、祝婚歌など、秀逸なものばかりです。
    ここでも、読み飛ばせない箇所が。エッセイ「美しい言葉とは」で、石垣りんの「崖」が取り上げられていて、茨木のり子の「読み」も壮絶。

  • p.2021/5/24

  • 茨木のり子さんは、詩では私たちを「とん」と突いて、散文ではゆうるりと、ほかの方の紹介をされたり自省などされたりしている。その、「弱いところを突かれた」「悪いことを言った」と気づかれたときに、茨木さんは素直に「やられた!」「はっとした」と記しておられ、へんに繕ったり誤魔化して威張るということがないから、読んでいてとてもすっきりする。それでいながら、また、思いもしなかった(または私たちはごまかそうとしていた)事どもにすなおに向き合う気にもさせてくれるのだから、ありがたいと思う。この集をまとめてくださったちくまの方々にもありがたいと思う。

  • 落ちこぼれ 茨木のり子
    祝婚歌 吉野宏
    お気に入り

  • エッセイ、いちど視たもの
    今年は戦後70年、このエッセイが書かれたのは戦後32年

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著者プロフィール

1926年、大阪生まれ。詩人、エッセイスト。1950年代より詩作を始め、53年に川崎洋とともに同人雑誌「櫂」を創刊。日本を代表する現代詩人として活躍。76年から韓国語を学び始め、韓国現代詩の紹介に尽力した。90年に本書『韓国現代詩選』を発表し、読売文学賞を受賞。2006年死去。著書として『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』『倚りかからず』『歳月』などの詩集、『詩のこころを読む』『ハングルへの旅』などのエッセイ集がある。

「2022年 『韓国現代詩選〈新版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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