ぼくが真実を口にすると 吉本隆明88語 (ちくま文庫 せ 12-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428059

作品紹介・あらすじ

世間の俗物たちを糾弾して止まぬ著者が、これまで幾度も読み返し、影響を受けてきた吉本隆明の著作や発言から、とくに心に突き刺さったフレーズ、生きていく上で指針となった言葉を選び出し、それを手掛かりに吉本思想のエッセンスを探っていく。権威や価値観が大きく揺らぎ、将来への不安を抱えて生きる現代人に、自らの力で生き抜く術を与えてくれる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 吉本隆明の著作を読むと、その軸のブレない言葉に心の底から震撼する。
    それらの珠玉の言葉たちを拾い出し、座右の銘として、平易な言葉で解説してくれる本書も見事。
    <最後の親鸞>に近づく<最後の吉本>の姿は、ステテコを履いて腹巻きした、威勢の良い頑固爺だ。
    自分と他人に途轍もなく厳しく、且つ途轍もなく優しい頑固親父だ。
    何という偉大な人間が市井の中にいたのか!
    恬淡として、<「共同幻想論」なんて、読まれなくていい>と語る吉本は、どこか突き抜けている。

    己の卑小さを吉本の姿勢が照射する。
    地を離れた形而上学の言葉でなく、地に足のついた言葉だけが人の心を揺さぶる。
    決して人を見上げず、そして決して人を見下さず、現実に対峙して、そこから逃げない男の格好良さ。
    この格好良さは高倉健に似ている、容姿は異なるが。
    吉本隆明は、格好良いのだ

  • 吉本隆明の寸言を引き、それにまつわる著者自身の感想を記している本です。

    「思想」という高みに上るのではなく、生活する者の目線から出てきた吉本のことばと、それに対する著者の共感が示されていて、興味深く読みました。ただ、「生活」と対峙しうるような「思想」があり、「大衆」と対峙しうるような「知識人」がいた時代は、とっくに過去のものとなっているのに、著者のように「これは思想ではない」と意地を張る必要があるのか、という疑問もあります。

    わたくしの印象では、吉本は自身はこの点について、著書よりも事態がよく見えていたのではないかという気がしています。むろん吉本も、丸山眞男批判などでは「知識人」の特権意識を舌鋒鋭く突いていましたが、『マス・イメージ論』から『ハイ・イメージ論』を経て、サブカルチャーも含めた広い意味での時評的な言論活動に入っていった吉本の姿勢には、そのようなある種の諦観が示されているように思えます。

  • いつも心に留めておきたい数々の名フレーズ。一人旅に携えていきたい一冊。

    • ディランさん
      いつも心に留めておきたい数々の名フレーズ。一人旅に携えていきたい一冊。
      いつも心に留めておきたい数々の名フレーズ。一人旅に携えていきたい一冊。
      2019/01/02
  • 自分のために書かれたのでは、と思わされるほど響く言葉が沢山あった。砕けた意思、孤独、絶望など、生きていて個人的に実感している身近な体験について、否定も肯定もせず、でもしっかりと向き合っていく力をもらえた気がした。

  •  吉本氏の言葉を選出し、それに勢古氏の解説がつくスタイル。解説の俗っぽさも良いのかは不明だが、吉本哲学の端をかじることができる内容。かなり難しい人だ、という印象だったが、今後著書を読むハードルが少しは低くなった。ただ、やはりその言葉の咀嚼にはかなりのレベルが要求されることには違いなかった。やはり難しい、というか含蓄があるため結局時間はかかるのだ、ということを理解した。解説本でなく、著書を直接読んでみたい。

  • 低くなること、降りていくこと、この一年の姿勢を得た気がする。知らんぷりするのでなく、自分をごまかすのでもなく、それでも戦い続けていくための姿勢が、わかりやすく述べられている。徹頭徹尾、人のやさしい吉本隆明と言う人。

  • 吉本さんのファンと思われる方が吉本さんの言葉を紹介したものです。

    あれだけすごい人なのに、まったく偉そうにしないでとにかく庶民、大衆でいようとするのがすごい。

    とても小さくてかっこいいです。

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著者プロフィール

1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社したが2006年に退社、執筆活動に専念。「ふつうの人」の立場から「自分」が生きていくことの意味を問いつづけ、『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)で話題に。その後も『アマチュア論。』(ミシマ社)、『会社員の父から息子へ』(ちくま新書)、『定年後のリアル』(草思社文庫)など著書多数。

「2017年 『ウソつきの国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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