- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428295
感想・レビュー・書評
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付喪神、の存在をぼんやりと考えながら、みかんの皮を剥く。かたちあるものは必ず壊れ、失われる。だから、慈しむ。そっと触れる。
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二十リットルぶんの涙が出た。
凛として 鋭くて 温かい心の結晶が詰まっていた -
亡くなった人が出会う「とりつくしま係」。この世に未練を残した彼らはモノになって戻ってくる。その「とりつくしま」は人それぞれ。野球部の息子のロージンバック、夫のマグカップ、妻の日記帳、孫にあげたカメラ…。人生のボーナスステージのような時間では、時に見なくてもいいものを見てしまったり、生きている間には見えなかったものが見えたりもする。すぐに役目を終えるモノ、ずっと残っていくモノ、「とりつくしま」を選ぶのはとても難しいように思うけれど、選ぶ彼らには迷いがない。その人にしかわからないそれぞれの人生なのだろう。
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死んだあなたに問いかける。
「何か未練があるなら、
何かモノになって戻ることができますよ」
それぞれが心残りのある人の身近なモノになり、
顔を見て、声を聞き、息づかいを感じ、
触れ合いながら、そばに寄り添う。
話しかけても声は聞こえない。
絶対に話すことはできなくても、
自分の存在が伝わらなくても
それでも大事な人のそばにいたい、という
切なすぎる思いに苦しくなるほど
この本は、【現実】だった。
どの話も良かったけど、個人的に好きな話は、
「マッサージ」「青いの」
作者が歌人なのがよくわかる気がした。
本を開けば、優しさがほわほわとこちらに
漂ってくる感じ。
句読点が多めに感じたんだけど、
それも好きだったな。
あたしなら「とりつくしま」に選ぶモノ
なんだろうな。
お父さんが選んだ「とりつくしま」って
なんだろな。
そんなこと考えながら読んだ一冊。 -
「とりつくしま」(東 直子)を読んだ。
これ反則だろ。なんでこんなに泣かされなきゃいかんのだ。
そういえば「回転ドアは、順番に」(穂村弘 東直子)でも泣かされたな。
私の中で東さんの短歌といえばこれ
電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ
いいなぁ。 -
亡くなった人がモノになって、もう一度この世を体験出来る。それを導く「とりつくしま係」思いがけない死を迎えた人が未練を断ち切れず、愛する人のモノになり見守る気持ちは分かるけど、私は嫌だな。死んだら私も残された人にも「無」で有りたい。死んでからも何かを思うなんて嫌だわ(笑)生きてるうちが花。それがいい……と、つくづく思いました。きっと感動本なんだろう……私、ひねくれてるのかなぁ。だって死んでからも悲しい思いなんてしたくないんだもん。
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解説:大竹昭子
ロージン◆トリケラトプス◆青いの◆白檀◆名前◆ささやき◆日記◆マッサージ◆くりびる◆レンズ◆びわの樹の下の娘 -
読みたい!と思ったきっかけが思い出せないが、読んで正解でした。11の短編のどの話もよかったですが、とりわけ『ロージン』と『日記』がよかった。私も「としつくしま係り』さんに会えたらいいなぁ~~
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亡くなった人がモノになってもう一度この世を体験する話。
全て一人称で書かれていて、その目線から色んなことがわかってきます。
心にジンと来るいいお話でした。
悲しい話なのにとても明るく清々していました。 -
死んで間もない人が、未練のある何かに「とりつく」ことができる。
亡くなったばかりの老若男女のそれぞれのストーリー。
もうダントツで「白檀」が好きです。
まるでカメラを通して観ているかのような視線、先生の手の触感、白檀の香り、桃の滴る甘さ。こんなに五感に訴えかける文章に出会ったことがありません。
なにより、死んでもなお、桃子さんの恋焦がれる切なさが行間からほとばしっていました。
これからは、ものを慈しんで大切にしよう。
私は死んだら何にとりつくかな……