哀しいドイツ歴史物語 歴史の闇に消えた九人の男たち (ちくま文庫 き 27-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428356

感想・レビュー・書評

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  • 解説:鎌田實

  • 「歴史を作るのは民衆である」とか、ごもっともなことが言われたりもします。
    あに図らんやというかというか至極当然というか、時の権力者は、民衆、凡人を、気まぐれの対象にしてみたり、捨て駒にしてみたり、あるいはその存在をすっかり忘れてみたりと散々に扱って「犬死」に追い込むのが実際のところ。さらには、同じ民衆の妬み嫉みで「犬死」的憤死に追い込まれることもあるわけで、「歴史を作るのは民衆である」というのは、やっぱり、かく在るべし的な、祈りに近いものなのでした。
    その、歴史の流れや権力者の気まぐれに翻弄された「犬死」せし者のエピソードを丹念に紹介する菊池センセの視線は同情に満ちています。
    この本は、「歴史の闇に消えた9人の男たち」(サブタイトル)への墓銘碑なのかもしれません。

    日本の時代劇から書き起こすとか、関係文献の自由自在な引用とか、ノリノリの長広舌とか、おなじみの菊池節を堪能しました。

    どう考えても、単行本の「犬死」の方が良いタイトルだとおもうのですが。

  • 菊池氏のドイツ本は3冊目となるが、
    相変わらず筆の滑りが良すぎるなあと思いつつやっぱり面白い。

    歴史的個人ではない一介の人々に焦点を当てながら
    良くこれだけドラマを描けるものだと感心した。

    ★5つでもいいかなと思いつつ、
    他の作品にももっと期待したいという意味を込めて4つにしておく。

  • 単行本で購入したものを再読。当たり前のことながら、当時と変わらず面白かった。
    ちなみに親本はタイトルが違って、「犬死——歴史から消えた8人の生贄」といった。
    もとのタイトルのほうがずっといいのに、なんで変えたんだろう、と思い思いしつつ読み終わり、解説へと進んだ。
    ずっこけた。どうやら著者と同じく、私にはセンスがないらしい。

    内容はまさしく原題のとおり、中世から近世にかけてのドイツにおいて、非業かつ不毛な死を遂げた男たちの物語だ。
    「不毛な」というのは、その死がついに何らの意味も持ちえなかったことを指す。死は誰にとっても悲劇だが、己の生命と引き換えに、個人的愁嘆場にとどまらぬ大いなるうねりを現出せしめた者というのも存在する。
    しかるに、本書の主人公たちである。
    死んだだけでもまず、本人にとっては不幸である。しかもその死が刑死・憤死・自死等々、いずれ劣らず悲惨であった。さらに、それによって誰も悔いず、悲しまず、彼らを死へと追いやった状況もまた、いささかも揺るがず、変わらなかった、というのだから。
    これを表するに「犬死」以上の言葉はないと、やっぱりそう思うのである。

    2011/11/22〜11/23読了

  • 2011年7月9日読み始め 2011年7月12日読了
    ドイツの歴史の中で、まさに犬死としかいいようのない、無益な死を選ぶしかなかった男たちの物語が8章収録されています。
    時代は中世から近代まで様々、男たちの職業も傭兵から芸術家まで様々です。彼らはただただ権力者の都合に振り回されて、意味なく殺されていってしまいます。
    作者はそういった人たちを拾い上げ、日本の歴史も引用してくれてるので、取っ付き易いと思います。
    が、やっぱり中世やハプスブルク家などの歴史は馴染みが薄く、さらに通貨がどのくらいの価値だったかわからなかったです。文章もちょっと堅苦しいかもしれません。
    しかし、あまり知られていないエピソードばかりで面白かったです。

    • Hideさん
      取り上げられている人は結構マイナーというか、これで初めて知った人も結構いるのですが、面白いですよね、これ。菊池先生の本は、結構取っつきやすい...
      取り上げられている人は結構マイナーというか、これで初めて知った人も結構いるのですが、面白いですよね、これ。菊池先生の本は、結構取っつきやすい物が多いので入り口としてお薦めです。
      2011/10/25
    • ぎんこさん
      hideさん
      この本、hideさんのご紹介で読みましたが面白かったです。無名の人間の物語、というのがそそられました!
      hideさん
      この本、hideさんのご紹介で読みましたが面白かったです。無名の人間の物語、というのがそそられました!
      2011/11/01
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著者プロフィール

1948年生まれ。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。明治大学名誉教授。専攻はドイツ・オーストリア文化史。著書に『ハプスブルク家の人々』(新人物往来社)、『ハプスブルク家の光芒』(作品社)、『神聖ローマ帝国』(講談社現代新書)、『ハプスブルク帝国の情報メディア革命─近代郵便制度の誕生』(集英社新書)、『超説ハプスブルク家 貴賤百態大公戯』(H&I)、『ウィーン包囲 オスマン・トルコと神聖ローマ帝国の激闘』(河出書房新社)、訳書に『ドイツ傭兵の文化史』(新評論)などがある。

「2022年 『ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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