- Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428387
感想・レビュー・書評
-
中世イタリアで活躍した実在の軍人と政治家の鍔迫り合いを中心としたストーリー。いわゆる時代物。
鍔迫り合いと言いつつ、主人公である政治家が如何にして享楽的に遊ぶか、ということに苦心する様子が半分くらいを占めていて、個人的にはモームの作品の中では少し評価しづらい。
読みやすいし、その筋の専門家の一人は「その時代のイタリアをよく描いている」というような高い評価をしているようなので、中世ヨーロッパに興味がある人は、ぜひ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マキャベリとチェーザレ・ボルジアの心理戦がスリリングな歴史小説であり、すぐれたエンターテインメントに仕上がっている。モームの作品はどれも娯楽性に富んでいるが、かの名高い『君主論』の中でマキャベリがチェーザレを高く評価していたことをおもんぱかれば、15世紀のイタリア半島でこの二人が対峙する舞台設定だけでも胸が躍るというものだ。
マキャベリを主人公に、話の軸はふたつある。一つはもちろんチェーザレとの政治的駆け引き、もう一つは人妻との恋の駆け引きである。ふたつの筋がからみあい飽きさせない作りになっている。
翻訳も非常に自由なものであろうと察せられるが、ストレスなく読み進められる名文である。こういう翻訳は外国語の文学作品を知るにはひとつの理想だと思う。 -
マキアヴェッリが主人公の小説。大学の書庫の奥で発見した当時は絶版だった。文庫で読めるようになって嬉しい限り(早速購入しなくては)。マキアヴェッリ本人が書いたちょっと色っぽいコメディよろしく、どこぞの人妻に策を弄して言い寄るものの、最後は手痛く失敗するところがいい感じ。マキアヴェッリの肖像を見ると、いつも「ルパン三世のテーマ」が脳内に流れてしまうのは、この本(と「わが友マキアヴェッリ」)の影響かもしれない。
-
マキアヴェッリが君主論でモデルとしたチェーザレ・ボルジアが滞在していたイーモラと言う街に派遣されたときを舞台にした作品です。外交交渉の様子もあれば,フィレンツェの外交官として活躍していたマキアヴェッリの滞在先での日常の様子の描写に,女好きだったマキアヴェッリが現地の女性をものにしようとする描写など,いくつかの描写が絡み合う作品で,楽しく読むことができました。あまり固く考えずに,気楽な娯楽作品と読むことがいいのかなと,個人的には考えます。
なお,舞台となっているイタリアのルネサンス後期の政治事情に関する知識がある方がスムーズに読めると思います。マキアヴェッリやチェーザレ・ボルジアなどの登場人物の知識や,当時のフィレンツェや教皇庁を含めたイタリアの諸国家とフランス,スペインとの関係など政治背景の知識があると,より楽しめると思います。 -
面白かった。
だけど不満足。
マキアベリとチェーザレの政治を主体とした物語であるがいかんせん物語が浅い。
塩野七海の書籍の方が遥かに深く感動的な読後感を与えてくれるのは近代の読者であるなら納得頂けると思う。そして何よりマキアベリが自分の性欲のために周囲の人々を騙してゆく姿に吐き気がする。
こんな主人公の腐った小説は初めてだったよ。 -
ちくま文庫 サマセットモーム 「 昔も今も 」
マキャヴェリ 「 君主論 」に つながるチェーザレボルジア との出会いを描いた歴史小説。女たらしだが 観察力が鋭い マキャヴェリ と 心の裡をあかさない 残虐君主 チェーザレの息詰まるやりとり
タイトルや エピグラフ「変われば変わるだけ、いよいよ同じ」の意図は、人間の本質は 昔も今も変わらない ということだと思う
マキャヴェリズムな展開と思いきや、かなりコミカル。キーマンはマキャヴェリに同行したピエロ。その名の通り、チェーザレの筋書きに基づき、マキャヴェリをピエロに仕立てている
名言「人の好意を確保して思い通りに動かすには、いくらか金を盗ませておけばいい」
「人の嘲笑を買うようになったらお終いである〜中傷誹謗は軽蔑してやればいい」
チェーザレは悪行を行ったから破滅したんじゃない。やつの意志ではどうにもならない状況によって破滅した〜もし善が悪を倒したとしても、それは善だからではなく、たっぷり金の入った財布があったから〜それを担保する力がなければ、正義なんぞなんにもならない
-
「イタリア統一の野望に燃える法王軍総司令官チェーザレ・ボルジアの許へ、フィレンツェ政府は使節として天才的外交官ニッコロ・マキアヴェリを派遣する・・・」
という紹介文から重厚な歴史物と思って読み始めたけど全然違った。単なる軽妙な娯楽小説だった。
軽いながらもまあおもしろかった。モンタネッリの「ルネサンスの歴史」を読んでたから時代背景をわかってたというのもあるけど、モームってよくできている。他の著作も読んでみよう。
タイトルの「昔も今も / Then and Now」の意味がよく解らないのがいまいち。1946年出版だから、第二次世界大戦も英国側に正義があったから勝ったわけじゃないと言いたかったのかなと思った。マキャベリが最後のページでこう言っている。
「チェーザレは犯した罪の当然の報いを受けたと言ったな。だが、やつは悪行を行ったから破滅したんじゃないぞ。~美徳が悪徳に勝利したとしても、それは美徳であったからじゃない、より性能のいい強力な大砲があったから勝利したのさ。~自分の側に正義があると思うのはいいが、それを担保する力がなければ、正義なんぞなんにもならん。それを忘れていい気になっていたら、とんでもない災いに見舞われるだろう。」 -
チェーザレ・ボルジアとマキアヴェリの頭脳戦が面白い。
作品全体としてコミカルであり、
この時代のイタリアの様子がよく分かる。
塩野七生さんの著作と合わせて読みたい