ワケありな国境 (ちくま文庫 た 61-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428530

感想・レビュー・書評

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  • メキシコ政府はアメリカへ不法入国する人のためにマニュアルを作ってる。シーランド公国、海上要塞を買い取って独立宣言、不審火で国土が半焼。南沙諸島はサンフランシスコ講和条約の時に忘れられてた。等々

  • 子どもの頃、世界地図や地球儀を見て、

    地図上には何も書かれてない空白の地域や

    点線で書かれた国境線に興味持ちませんでした?

    なんでー?って親に聞いてみたりして。

    でも親もよくわかってなかったりしてw

    この本を読めばだいたいの謎が解けます。

  • 新書文庫

  • 要は、国境紛争や独立の経緯のサマリー本です。海外の現地を取材したという訳ではなく、様々な文献からあさってきたという感じですね。新聞やニュースを丹念にチェックしている人には既知の話も多いけど、あまりなじみのないアフリカや南アメリカ・オセアニアといった国も取り上げられていて、極めてハンディーなガイド本です。これをきっかけにより深く探求できればいいかな。

    南北アメリカ編
    ヨーロッパ編
    中近東・アフリカ編
    アジア・オセアニア編
    日本列島編

    著者:武田知弘(1967-、福岡県、フリーライター)

  • 「ああ、また国境本か」などと惰性で買い、しばらく積ん読していた不明を恥じる。
    これぞ、全国民必読の書である。

    第4章までは普通の国境本。とはいえ筆力は高く、わかりきった内容も面白く読ませる。
    白眉は第5章の「日本列島編」。ここまで世界のオモシロヘンな国境を他人ゴトとして楽しんでいたのが、他ならぬ自分たちにも無縁ではないという事実、そして最近ニュースで聞くわりによく知らない(というのも教えられていないため)問題の本質を、平易かつ明快な文章でズバリとつきつけられる。平和ボケの夢も覚めること請け合いである。
    その筆致は公正・冷静…などと私がベタ褒めすると、すわウヨク本かと思われかねないが(笑)、本書最大の特徴はかてて加えて「現実的」であることだ。この一点をもってしても、本書がイデオロギーとは無縁に、ただ事実を描いたものであることがよくわかる。
    ——あらゆる国境紛争の原因は、およそすべての国が持つ「自国が安心して成り立っていける環境を整えたい」という願望である。
    ——国境紛争というエゴのぶつかり合いの根源となっているのは、多くの場合独裁的な為政者などではなく、一般の国民たちの感情である。
    いずれも、けだし卓見と言うべきだ。究極のエゴを見つめる著者のまなざしはどこまでも透徹して、曇りのない真実のみを映し出す。

    そんな著者は「日本国」に、さりげなく以下のような説明文を付した。
    「他国による侵略支配をほとんど受けたことがない国としても知られる」

    私たちが空気のように当たり前に思っていることが、国際標準ではいかに稀有であるか、それがどれほどの偉業と苦行と僥倖の成果であることか、ひとりひとりがいま一度肝に銘じるべきであろう。

    ?〜2012/7/27読了

  • 地図を見るのと歴史が好きなので「地歴図」という地図を以前はよく眺めていました。近代になって数多くの戦争等を経て、現在私たちが地図帳で見ている国境が目まぐるしく変化してきたことがわかります。

    この本では、それらの国境が制定された時のエピソードが解説されています。学校では習う機会のない、国境の歴史について楽しく読ませてもらいました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ロシアはオスマン帝国とのクリミア戦争で大きな出費が続いて財政が火の車だったので、アラスカをアメリカに売却、1867年、1km2当り5ドル=720万ドル(現在価値で100億円程度)、当時のアメリカ全体の税収の1割程度(p16)

    ・カナダという国は、全ての州が承認する憲法はまだ持っていない、ケベック州との調整がつかないから、1982年に憲法が議会で承認されて公布されたが、ケベック州が承認していない、ケベック州に自治権を認めた憲法原案は他の州が反発(p38)

    ・キューバの中にグランタナモ米軍基地があり、これはアメリカ領、両国が同意するかアメリカが放棄しない限り永遠に租借は更新される、その中ではどの憲法も適用されず、軍法のみが適用される治外法権地域(p47)

    ・植民地時代のイギリスでは、イギリス本国に拠点を構える企業の税金は高く、植民地に拠点を構える企業の税金は低く設定された、その名残もあり、ケイマン諸島(キューバ近く)は今もイギリス領(p57)

    ・1982年にフォークランド紛争がイギリス、アルゼンチンの間で起きた、南極開発の拠点としてイギリスが保有したかったために起きた戦争(p66)

    ・ヤルタ会談において、ドイツは米英仏ソの4か国で分割占領することに決まった、戦後、ソ連占領領域が東ドイツに、米英仏領域が西ドイツになった(p71)

    ・1949-60年までに、250万人もの東ドイツ国民(国民の4分の1)が西ドイツに逃亡した(p73)

    ・1989.10にゴルバチョフが東ドイツを訪問した時、不満を抱いていたベルリン市民が大規模なデモを行った、東ドイツは混乱を鎮めるために西ドイツへの旅行を自由に行けるようにした、この決定を聞いた東西ベルリン市民が壁を打ち壊した(p75)

    ・もともと英国もアイルランドもカトリックだったが、宗教改革後の1534年、イギリス王家はプロテスタントに改宗した、ヘンリー8世が離婚問題でローマ教皇と対立して離脱したのが原因(p86)

    ・もともとアルザス=ロレーヌ地方はドイツ系住民が多かったが、17世紀後半にルイ14世がフランス領にしてしまった、、1870年に起きた普仏戦争によりドイツに奪われた、この時に書かれたのが「最後の授業」(p100)

    ・ハンガリーは1989年、ソ連のペレストロイカの混乱をついて共産党独裁を放棄して民主化に成功、これにより西側オーストリアとの国境を開放したので亡命者が殺到、ベルリンの壁崩壊のきっかけとなった(p114)

    ・デンマークは、11世紀には30年間、イングランド島まで支配したこともある、14世紀には北欧国の盟主になっている、このときにノルウェーの保持していた、アイスランド・グリーンランドはデンマークのものになった(p126)

    ・ソ連を構成していた15の共和国は独立して、東側諸国に残った国、西側に加わった国があったが、ロシア領内にある、多数の自治国や自治州は強制的に連邦に参加させた、その中で反旗を翻した地域がチェチェンである(p135)

    ・第一次世界大戦にて、オスマントルコ帝国は瓦解して、パレスチナ・イラク・ヨルダン・シリア・レバノン等が作られた、現在のトルコ共和国は、オスマン帝国末期にトルコ民族運動から生じた国で繋がりはない(p147)

    ・1980年のイラン・イラク戦争は奇妙な戦争、アメリカは表向きはイラクを支援したが裏ではイランに武器の供給、ソ連はイラクを支援する傍らアフガニスタン侵攻、アラブ諸国は基本的にイラク支援したが、シリアとリビアはイラン、この時のイラクの指導者(サダムフセイン)をアメリカは支持している(p158)

    ・1884年にコンゴ地域の分割を調整するために14か国(英独仏伊米スェ・ノ・ス・ハンガ・ロ・蘭・ポ・オスマン・ベルギ)をベルリンで開催、決定事項は、1)コンゴはベルギーの権益だが自由貿易地域、2)沿岸部支配国が後背地も所有(p170)

    ・スペインは1975年に西サハラから撤退して植民地を手放したが、それでも残したのが、セウタとメリリャ(p179)

    ・中国には現在5つの自治区があり、県レベルでも多くの自治区がある、自治区全体の面積は中国全土の65%、そこに56の少数民族(人口比では10%)が住んでいる、独立運動が激しいのは、シンチャンウィグル・コワンシー・チベット自治区(p202)

    ・サンフランシスコ条約ではソ連は署名をしていないので、ソ連は日本が南樺太を放棄したことを認めていないことになる、国際法上はロシアは不法占拠状態にある(p281)

    2012年6月14日作成

  • 2012年5冊目

  • (2022/4/02読了分)ナミビア、アフガニスタンの回廊がふと気になり再読。ナミビアのほうは、ドイツが植民地にしていた時代に、東アフリカとのアクセスのため、どうしても大河に隣接させたかったため。アフガニスタンは、イギリスが、自国のインド領とロシア領を直接隣接させたくないために緩衝地帯を設けたかったため、と。他に、マレーシアのマレー半島領土とボルネオ島領土の行き来はパスポートが必要で、それはボルネオ側の州に高度な自治を認めているためであることなど。(2012/2/27読了分)興味深かったのは、メキシコ政府作成の安全な不法入国のためのマニュアル、なぜブラジルを任された翌年にポルトガル皇太子ドン・ペドロが本国からの独立をはかったのか、チリの領土拡張がアンデス山脈に規定されていたこと、バチカン市国の主産業は出版(聖書関係)・モザイク製作(教会関係)で、観光収入と世界中の信者からの寄付が財政を支えていること、シーランド公国のこと(どこの国も認めておらず、国民4人なのに、クーデター起きたり、鎮圧されたり、亡命政府できたり、火事で半焼したり、ベイツ公は国外に住んでて難を逃れた、、、て、住んでないのかい!とか、一度売りに出されたけど価格の折り合いがつかなかったことなど)、南アフリカに囲まれたレソトとスワジランドのことなど。

  • あまりにも内容が軽すぎる…と思って参考文献を見たら、文献一覧の後に「ウィキペディア」の名前が。ネットでネタを拾って本が書ける時代になったのか。まぁ、中高生が世界史に興味を持つとっかかりにはいいかも。

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著者プロフィール

1967年生まれ、福岡県出身。出版社勤務などを経て、フリーライターとなる。歴史の秘密、経済の裏側を主なテーマとして執筆している。主な著書に『ナチスの発明』『戦前の日本』『大日本帝国の真実』『大日本帝国の発明』『福沢諭吉が見た150年前の世界』(ともに彩図社)、『ヒトラーの経済政策』『大日本帝国の経済戦略』(ともに祥伝社)等がある。

「2022年 『吉田松陰に学ぶ最強のリーダーシップ論【超訳】留魂録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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