哺育器の中の大人[精神分析講義] (ちくま文庫 い 74-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428899

作品紹介・あらすじ

「子育てとは何か?」「人を愛するとは?」「何のために人は生きるのか?」「男(女)らしさについて」…初歩的な、しかし避けられない問いは、自我の構造や(無)意識の世界、幻想や知覚の仕組みなど根源的な問題につながっている。稀代の才人・伊丹十三と、「ものぐさ精神分析」で知られる岸田秀が真っ直ぐな対話を通して、生きるために欠かせない精神分析の基本を丁寧に分かりやすく解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 多くの有識者は、岸田秀=根拠薄弱な思いつきを言う人、と考えているようだ。しかし自分は大いに影響を受けている。この題名にあるように、人間は「認めてほしい」と求め続ける幼稚な存在であるという認識は、この幼稚化社会を読み解く一つの道具だろう。

  • ・自分自身の人生という試料をフロイトの精神分析という顕微鏡で拡大観察した岸田秀先生から、伊丹十三氏という類まれな聞き手が引き出す世界が新鮮だ。

     刊行されたのは'78/12らしい、私はその頃、伊丹十三さんの本を読んでおり、その流れで、伊丹十三さんが傾倒していた精神分析関係の世界に興味を持った。私は'77年に高校を卒業した後1浪し、翌'78年に桑沢デザイン研究所に入学したのだが、その多感な時期に出会ったのが『哺育器の中の大人』だ。自分自身の人生という試料をフロイトの精神分析という顕微鏡で拡大観察した岸田秀先生から、伊丹十三氏という類まれな聞き手が引き出す世界が新鮮だ。そして私自身も自分の人生を『哺育器の中の大人』という顕微鏡で拡大観察するのであった。

     私は、この本が刊行された1978年に限りなく近い時期に読みました。実はこの本は絶版で(もしかしたら文庫版は健在?)、私が持っているのは、3冊目です(不覚にも1冊目は場末の古本屋にタダで引き取られ、2冊目は新幹線に忘れたのですが、新宿の紀伊国屋さんに残っていたのを手に入れました。また、Bookoffで見つけた文庫も迷わずGet!)。まさに私の人生を変えた1冊を上げるとすれば、この本です。

     岸田秀先生から授かった教示は、今の私の体を形作っているといっても過言ではないのですけれども、この本との出会いは、それまでもやもやしていたものが取り払われた瞬間でした。私のいたたまれない感じは、自分が自分の欲望を抑圧していたことに起因していることを知ることで少なくとも探求することができる対象として見える化されたのです。

     私が精神分析に興味を持ったのは、35年以上も前のことなのですけれども、いまだにフロイトの著書を翻訳したものを読んだことがありません。私の精神分析に関する知識は、殆どが岸田秀先生というフィルターを通したものか、岸田秀先生の説なのです。だからこそ、先生の解説が最も分かりやすい『哺乳器の中の大人』は、是非、改訂版を発行してほしいです。

     精神分析からのアプローチと脳科学からのアプローチに共通するのは「私たちが自分自身の意識でコントロールしていると思っている行動が、実は自分がコントロールできない無意識のようなものに誘発されている場合がある」ということではないでしょうか?この意識と無意識のようなものの矛盾や葛藤が私たちの心を引き裂くことがあるのです。私たちが知らなければならないのは、私たちの中に意識とは別に、私たちを動かす何かが存在する可能性です。それを具体的に把握する必要はないと思いますが、それがあることを知ることが大切です。

  • 2017年2月12日紹介されました!

  • 岸田唯幻論争論。使える理論多数あり。なかでも図説はありがたし。

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著者プロフィール

1933年生まれ。映画監督、俳優、エッセイスト、テレビマン、CM作家、商業デザイナーなど、興味のおもむくままに様々な分野の職業に分け入り、多彩な才能を発揮。翻訳も多数手がけた。1997年没。

「2020年 『ちょこっと、つまみ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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