- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480429117
作品紹介・あらすじ
ストーカー、リストカット、ひきこもり、PTSD、おたくと腐女子、フェティシズム…「現代の社会は、なんだかラカンの言ったことが、それこそベタな感じで現実になってきている気がする」。電車内の携帯電話の不快なわけは?精神病とはどういう事態か?こうした問いにラカンはどう答えてくれているのか。幻想と現実がどんどん接近しているこの世界で、できるだけリアルに生き延びるためのラカン解説書にして精神分析入門。
感想・レビュー・書評
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斎藤環先生の本好き。平易な語り口でわかりやすいけど、やっぱり難しい。
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ラカン入門書。難解で有名なラカンですが、初めての挑戦が本書で良かったな。著者の皮肉っぽい文体が和ませてくれて、各概念や用語の補足としての例示も親しみのある内容で何とか喰らいつけた。
性的な表現が多いけど、詳しく向き合っていくと当初の嫌悪感を超えて少しはその主張に触れれたかな。理論としての精神分析を体験できました。
何より、表紙が荒木飛呂彦!吉良吉影ネクタイがイカす。 -
読んだ当時は概念が複雑で、完璧に理解できたという感覚はなかった。面白かった印象は残っているので、また手に取ってみたい本。
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転移 治療者を好きになること
対象a 決して届かない欲望。究極。
ファルス 去勢されることで生まれる欲望
私の欲望は他者の欲望である
象徴界、想像界、現実界
象徴界が壊れると、意味がわからなくなる。象徴界を治すことが必要。統合失調症の人は夢を見ない。意味や関係性を理解する象徴界が壊れてしまっているから、現実界がリアリティを持って見えてしまうのである。 -
「なんですかねえ、この『許されてる』感は」
葉月はため息混じりにそんなことを言った。
「それは『女性は存在しない』っていうところかな?」
彼のその言葉は、問いかけというよりは確認のようだった。
「ああ、それかも。お見通しですね」
葉月は、あっさり認めた。
彼は頷く。
「既存の価値観の脆弱さに安堵するのかもしれない。だってそうだろ、欲望なんて他人に与えられるものだと言われたら、そして誰も本当に求めるものに触れることができないと言われたら、あるいは生殖とヘテロセクシャルであることとは無関係だと言われたら、他者への共感など自己イメージでしかないと言われたら―――そうやって、自分を取り巻くあらゆる『当たり前』を疑われたら、心地よいだろ」
彼は意地の悪い笑みを浮かべていたが、それは嫌味というよりは、暗にそれらを肯定しているという合図のようだった。
葉月はそれを受けて、思いつくままを言葉にする。
「この世界は、本当の現実とは違う。結局のところ、人は言葉がつくり上げた世界でしか生きていない。その中でしか関われない。完全で満たされた世界を失って、他者と自己という概念を手に入れて、失ったものを他者に求めて」
それはなんて孤独だろうと、葉月は言う。
孤独で、素敵じゃないかと。
「他者への共感など、所詮は思い込みでしょう? 結局は、自分ならこう感じるというものを、他人に押しつけているだけでしょう?」
彼は、恐らくは自らに向けられたわけではないであろう問いかけに、静かに口を開く。
「そうかもしれない。でもそれを忘れないとコミュニケーションは成立しないのかもしれない。相手も同じ、満たされないものを抱えていて、同じように感じているのだと思わなければ―――イデオロギーってそういうものだろう。共同体が共同体であるためには、皆が好き勝手のことを考えていては困るだろうしね」
それから少し、沈黙があった。
「段々、何の話か分からなくなってきましたが」
「言葉は空虚なものだから、かもしれないね」
彼は冗談めかして、そんなことを言った。 -
「日本一わかりやすいラカン入門書」との謳い文句だが、ラカンに関係なく精神分析の読み物として面白い。著者はひきこもりやおたく論関係の執筆も多いけど、自ら「精神分析は科学ではないし、治療のツールでは忘れられつつある」と言ってしまう様に精神分析の限界を認めた上であくまでツールとして出来ることを提示していて、その態度にはとても好感を持ててしまう。統合失調症で損なわれているのは「文脈」であるという言葉の通り精神分析と文学というのは相性が良く、精神分析とは人や社会を1冊の書物として読み解く行為と言えるのかもしれない。
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最近面白い本に良く出会う。
幸運。
斎藤環さんの著書が好きで、最近立て続けに読んでいる。
彼は、精神分析における、池上彰だと私は思っている。
精神分析というカテゴリーを、我々素人に分かりやすく説明してくれる。
本書もそういった本のひとつで、ラカンとその思想について、語りかける口調で説明している。
私が一番印象に残ったのは、以下の箇所
「ラカンの言った言葉でいちばんよく引用されるのが、『欲望は他人の欲望である』というものだろう。そう、ラカンは欲望が僕たちの内面にあらかじめ備わっているわけじゃなく、常に他人から与えられるものだ、ということを強調したんだ。」(p.25)
私自身は旅行に行くのが趣味であるが、よく考えると、自分が楽しむことも面白みのひとつであるが、それを自慢して、周囲の反応をみるのも面白い。そういうことなのだろうか。
余談ですが、表紙を荒木飛呂彦先生が描いています。
パッと見、全然荒木先生らしくないのですが、よく見ると、ラカンの締めるネクタイの柄が「キラークイーン」…
にくいっ!! -
20世紀最高の知性、ジャック・ラカンの理論の解説本。日本一分かりやすいラカン入門書と著者が言っているとおり、分かりやすい言葉でラカンの理論が紹介されていました。世界に対する認識が一気に深まったような気になる本でした。面白かった。