蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 361
感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429483

作品紹介・あらすじ

三十路を過ぎて定職につけずにいる「おれ」こと猿渡が、小説家の「伯爵」と意気投合するに至った理由は、豆腐。名物を求め津々浦々を彷徨う二人に襲いかかる奇怪な現象。蘆屋道満の末裔が統べる聚落、闇夜に出没する赤い顔の巨人、蟲食う青年、そして湖の水牛。幽明の境に立たされた伯爵の推理と猿渡の悲喜劇の果てに現出する、この世ならぬ異景。書下ろし短篇を加えた完全版。

感想・レビュー・書評

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  • fukuさんのレビューから読みたくて文庫版読む。「おれ」こと三十路過ぎ定職無しの猿渡と「伯爵」こと某有名ホラー作家。豆腐好きな二人が遭遇する怪異・幻想・郷愁の詰まった悲喜劇。単に不思議話で終わらない奥深さ。やっぱり津原さん大好きだ。

  • ルピナスシリーズでとても気に入ったので、津原さんの本を続けて買ってみた。
    ルピナスシリーズとは雰囲気もガラッと変わって、こちらは30代定職なしの猿渡さんの不思議な体験話。あまりに変な体験(不気味というか、怖いというか…)ばかりしているので、なんだか疲れそうな人生だなぁと小説の中ながら心配してしまった。
    私ではあまり思い浮かばないような突拍子もない話ばかりで、なかなか面白かった。

  • 淡々とした文章で、なぜか言葉が頭に残らなかったのだけど、消えゆく感覚も作品の一部に思えて、現実味がない空気感になった。

    不思議な話だったなぁ。
    続きも読みたい。

  • 不思議なものを引き寄せがちな猿渡と小説家の伯爵が、西で東で不思議なことやものに遭遇する。幻想小説。
    かなり好みの作品。ちょっと不気味だし、具合が悪くなるような話、なにがなんだかわからなくなるような話が混ざっており、いい感じに気持ち悪く、いい感じに気持ちよくなれる。
    食事中に埋葬虫にたどり着き、そっと本を閉じた。ゾッとした。蟹も、しばらく食べたくないかもしれない。

  • 予備知識ナシで作者読みしたが、幽明志怪シリーズと銘打たれているシリーズの第1作だそうだ。

    主人公は三十路にもなって定職もない猿渡、彼の相棒がホラー作家の通称「伯爵」。連作短編集であり語りはいずれも主人公猿渡の一人称である。

    猿渡本人が怪異憑きというか、得体の知れないモノと関わることによって発生する事象と、伯爵の取材に同行することにより関わる怪現象と、2つのパターンがあるようだ。時系列は前後しているらしい。いずれの短編も少なからずモヤっとした終わり方であるが、読者の空想を掻き立てる結末であり、ほとんどの場合、猿渡が窮地を脱してホっと胸を撫で下ろす終幕である。

    怪現象の発生から帰結までを、民話、民間伝承、史実などを適度に挟み込み様々なパターンで恐怖を提示してみせる。このあたりは津原氏の力量所以のところでシリーズの続きが気になるところである。主人公は女難の気があるようで、羨ましくもあり、実際強い恐怖を覚えたのは女関連のエピソードだった。

    本筋とは離れるが、主人公猿渡と伯爵をつないだのが豆腐好きという共通項からで、全国の豆腐薀蓄が披露されるのが楽しく旨そうである。さらにエピソード毎に、猿渡の自家用車が変わっており、またこだわりがあるのかないのか?判別のつかない変わり方であり、その変遷が非常に気になった。シリーズを読んでいこうと思う。

  • 素晴らしい。無職の「おれ」と怪奇小説家の「伯爵」。豆腐好きが縁で結ばれた二人がさまざまな怪異に出遭う幻想短編集。どの作品も実際のところそれが現実なのか夢なのか、一体全体何が起こったのか判然としない。にもかかわらず夢中で読まされうっとりさせられる。のは作家の筆の冴えによるもの。こんな美味な本がまだ二冊もある。のは嬉しいが、氏にはもっともっと書いてほしかった。

  • 暑い夏に読むのがピッタリではある。
    津原泰水さんと言えば私の中では『ブラバン』なので、少々意外でもあった。怪奇な連作小説集。
    饒舌でありながら簡潔な表現。幻想的でありながら現実的な感覚。『反曲隧道』から『水牛群』まで全8編所収。
    どれも異世界へいざなってくれる。
    『ケルベロス』の最後の一行「おれは慟哭した。」この一行に万感の思いを感じ泣いた。
    最後の『水牛群』なんかは、暑さのせいで眠れなかった翌日の夜、頭痛のひどい状態で読んでいたので、まるで、自分自身の頭の中の出来事のようにも思えてしまった。

  • 電子書籍

  • 現実と幻想、現代と昔。
    時代も曖昧な感じで、読んでて現実と幻想も曖昧になってくるお話たち。

  • 一編目はたった7p。大宮の豆腐を想像していたら最後の一行で思わず本を取り落としました。映像でガツンと頭に貼りつくラスト!…無職の猿渡と小説家の伯爵が様々な場所で出会う、夢か現かどこか不思議でやっぱり怖い怪異の数々。不思議の余韻の系統が全て違って素晴らしいです。表題作は純粋に、「猫背の女」はひたすら怖く「カルキノス」は自分の理解力を疑い、「ケルベロス」の最後の一行の不安定さに手が止まる。「埋葬蟲」は虫嫌いには酷な映像です。そして「水牛群」で怪異に振り回される頃には、猿渡がとても愛しい人間になっていました。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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