- Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480430427
作品紹介・あらすじ
「日本SF初期傑作集」とでも副題をつけるべき作品集である。(筒井康隆)-優れた書き手たちがその個性を存分に発揮しつつ、SFと小説の可能性を探り続けていた1960年代の代表的傑作を集める。斬新なアイディア、強烈なイメージ、ナンセンスの味わいなどがたっぷり。「SF」の枠組みを超えて、二十世紀日本文学におけるひとつの里程標となる歴史的アンソロジー。
感想・レビュー・書評
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1980年に徳間書店から出版された文庫の復刊である。当時はこのような複数作家による集成本は珍しく、しかもSF小説だけでなくSF漫画まで掲載されていたので、かなり画期的な本だった。さすが、筒井康隆である。この60年代を皮切りに71年から75年まで徳間文庫から出版され、いずれにもSF漫画が掲載されていた。
当時は好きな作家を見付ける手掛かりとして、このシリーズを読んだものだ。石原藤夫、山野浩一、河野典生、荒巻義雄などはこの本をきっかけに読み始めた作家である。
30年以上の時を経て再読しても、色褪せぬ面白さがある。現代の日本のSF小説は理屈や理論が難解だが、当時のSF小説は単純で優しさすら感ずるような気がする。
日本のSF小説の歴史を知る上で読んでみたい一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん、編者の趣味が合わないのか、それともやはりSF発展の初期だからなのか、あまり面白いと思える作品には出会えませんでした。
その中で山野浩一の『X電車で行こう』は、姿の見えない電気だけの「幽霊列車」という、罪のない鉄オタサラリーマンのファンタジーが、大量虐殺を引き起こす悪夢へと変貌していくさまが強烈な印象でしたが。 -
昭和30〜40年台のSFをかの筒井康隆氏が集めたアンソロジー。
当時の鬱々とした精神世界が反映されていたり、その頃から想像した未来として現在の社会が描かれていて、的確な批判がなされていたり、凄いです。
一番最初に星新一さんの短編が掲載されているのですが、別な意味で驚きました。流石筒井さん。 -
自らもSF作家である筒井康隆氏が、日本SFの黎明期たる60年代の選りすぐりの作品を編纂した短編集。収録作はこちら。
「解放の時代」星新一
「もの」広瀬正
「H氏のSF」半村良
「わがパキーネ」眉村卓
「金魚」手塚治虫
「色眼鏡の狂詩曲」筒井康隆
「渡り廊下」豊田有恒
「ハイウェイ惑星」石原藤夫
「X電車で行こう」山野浩一
「そこに指が」手塚治虫
「終わりなき負債」小松左京
「レオノーラ」平井和正
「機関車、草原に」河野典生
「幹線水路2061年」光瀬龍
「大いなる正午」荒巻義雄
ハヤカワ文庫が出している「日本SF短編50」と2編被ってますが、編纂されたのはこちらの方が先。この本は70年代に刊行されたシリーズの復刻版で、当時は70年代のアンソロジーも1年ずつ区切って編纂されていたようです。筒井康隆、こういう仕事もしてたんですね。資料的価値も高いと思います。
さて、「日本SF短編50」と一部被ってはいますが、前衛的な作風で名高い筒井康隆がアンソロジストを務めただけあって、ハヤカワ版に比べると「トンがった」作品が多いです。漫画も含めている点がユニーク。SFという概念は小説や漫画といったフォーマットに左右されるものではない、ということを静かにアピールしているようにも感じ取れます。
そのせいか、鴨の主観的な印象では、一読「今読むとキツいなぁ」と感じる古臭さはありませんでした。むしろ、一周してきて新鮮な感じヽ( ´ー`)ノ「古いSF」を十把一絡げに論評する際にありがちな、「科学の進歩が前向きに捉えられていてバラ色の未来を描いた云々」といった雰囲気は、全くありません。閉塞感、喪失感に満ちた作品が多いです。シブいですよ。まぁ、中には落語の前座噺みたいな作品もありますがヽ( ´ー`)ノそんな高低差も含めて、若きSF者こそ読むべき。
やはり圧巻なのは光瀬龍。60年代に書かれたとは思えない普遍性を感じる圧倒的なスケール、壮絶とも言える虚無感。ストーリー的に完結した作品ではないのですが、屁理屈こねずに世界観に酔え!というタイプの作品。読む人を選ぶかもしれませんが、鴨は大好きです。 -
一時期めちゃくちゃはまっていた60年代日本SF。今読むとやっぱり古いけど、でも良いものは良い!
筒井康隆と大森望の解説がたいへん興味深い。 -
筒井康隆らしい、新機軸を巧みに導入した短編を集めた選集だった。ただ、筒井の悪い癖である構成が重視され、理論偏重になっていたきらいがなかったとはいえない。
当時新しかった新機軸でも今では使い古された手法の1つとなっていたものもあり、時代を感じた。とはいえ収録作品はどれも瑞々しく読みごたえがあり、SFの領野はこれほどまでに拡げることができるのかと驚いた。若く野心的な一冊だった。 -
60年代に書かれたsfなんて今更読んでも面白くないだろうという偏見を吹き飛ばす、珠玉の作品たちが勢ぞろいの短編集。時代の雰囲気を映した重めの作品と、人を食ったようなスラップスティックで皮肉な作品が半々くらいで収録されている。
筒井康隆の解説もしっかりと書かれているので、先にそちらを読んでから本編を読んでもいいかもしれない。
個人的に面白かったのは以下。
わがパキーネ(眉村卓)、渡り廊下(豊田有恒)、ハイウェイ惑星(石原藤夫)、終わりなき負債(小松左京)、機関車、草原に(河野典生) -
2020/8/29購入
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1980年10月に徳間書店から刊行。2013年3月ちくま文庫にて復刊。15のSF作家によるアンソロジー。全て再読です。いずれも面白いお話で、60年代SFを再認識できました。楽しかった。
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筒井康隆は中学から高校にかけて狂ったようによ読んだ。新潮社から出た全集も毎月出されるのを楽しみにしてた。が、いつしかから、SFの荒唐無稽さが、バカらしく思え離れてしまった。
今回、本当に久しぶりにSFを読んだ。目利きの筒井氏の撰修といこともあり期待してたが、やはり玉石混淆かな。
個人的には、ハードSFより、情感溢れる「渡り廊下」や、発送が面白い「そこに指が」「X電車で行こう」が好み。
続刊で70年代の集成も出ているが、購入どうしようかな。