モチーフで読む美術史 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430762

感想・レビュー・書評

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  • ◆面白かった!絵画の中で象徴的に用いられる66モチーフの意味や用例を示した参考書。カラー図版もふんだんに挿し込まれた贅沢な1冊。西洋絵画だけでなく、東洋のものについても触れられている。さらなる参考文献が紹介されているのもうれしい。できれは、高価でも、文庫でなくもう少し大きめの冊子で読めたら申し分ないんだけど。◆「蝶」「魚」「種」「手紙」「書物」「ヴァニタス」「梯子」が興味深かった。特にオランダ絵画における「手紙」と絵の中の絵「海をゆく船」との関係には物語を感じてうっとり。これは、知らなきゃ損してしまうな。◆後書きを読むと、執筆時、著者がプライベートで大変キツイ想いをしていたことを知る。最後に置かれた、本書の内容を踏まえた俳句が胸を打つ。

  • モチーフに視点を据え、見開きで簡潔に説明した文章と東洋画と西洋画の比較も見開きで確認でき、良質な一冊だと感じました。
    が、あとがきにいたたまれなくなりました。ご冥福をお祈り致します。

  • 一つのモチーフにつき2ページの解説で読みやすかった。これを読んでから国立西洋美術館の常設展(現在は2022年まで休館中)を観ると、より楽しめるのでもっと早く読んでおけばよかった・・・。

  • 非常に勉強になる。絵画の見方だけではなく、特に西洋文化全般を知る上でも重要な知識満載。

    にしてもあとがきが泣ける。娘を持つ父としては胸が締め付けられる。

  • 先日ギリシア神話を読んだので、それがどのような絵画として描かれているか、興味があったので読んだ。
    教養として、いままで知らなかったことを読めたので良かった。ただ、美術のなかでも、絵画はどうも楽しんで鑑賞できない苦手意識が。。。今度再チャレンジしたい。

    同じモチーフでも、東西の違いが面白かった。たとえば、『橋』は日本では格好の題材になるが、西洋ではあまり絵の題材になることはない。日本だと、写真でも橋はよくでてくる。18切符のポスターとか、個人的には好きだ。
    『ヴァニタス』の項は面白かった。日本で言えば、「諸行無常」「色即空是」といったところか。これは東西で同じ概念だな。

  • 絵画によく描かれる動物や食べ物などが何を表しているのかを解説するという、ありそうでなかった入門書。
    西洋の絵画がいかに象徴に満ちているかがわかり、絵画の見方が大きく変わる。

  • 2024/01/20 p.8-29

    p.8
    “夫婦の間にいる犬。”
    言われるまで、犬がいることに気づいていませんでした。

    p.9
    “結婚式の情景を表した結婚記念肖像画であり、同時にこの絵自体が結婚証明書となっているという説が有力だ。”
    記念に残すって、現代のフォトウェディングみたい、と一瞬思いました。けれど結婚式をおこなっているなら、普通にカメラマンさんに撮っていただくのと変わりませんね。
    結婚という区切りで、何か形あるものを残すのは、いまも昔も同じようです。

    p.10-11
    “動物というより食材としか見られなかったようだ。”
    かわいそうに。愛でてもいいじゃないですか、と思ったものの……感情移入するところせなくなってしまうから、このくらいの距離がちょうど良かったのかもしれませんね。

    p.18
    “持物とは、正確には「アトリビュート」といい、ある人物が誰かを見分けるための伝統的な道具や動物といったモチーフのこと。”
    持物(じもつ)と読むのですね。「じぶつ」かと思ってしまいました。

    しかも、これ、その人の持ち物ってわけではなくて、その人のモチーフってことなのですねえ。お決まりのものから連想するのは、オタク気質を感じます。

    p.19
    “いくつかは画家自身の自画像のようにも見えてくる。”
    そういう見方もあるのですねえ……。ちょっと予想外でした。

    p.23
    “《祈る老婆》の猫も、実は平穏な老婆の祈りをかき乱す悪魔の使者なのだ。悪魔に魅入られた老婆が心配になる”
    ……まぁ、確かに、かわいいにゃんこが近くにいたら祈りよりにゃんこを優先したくなりますよね。「猫の下僕」と自称している方もいますし、魅入られている人は多いと思います。

    例えば、悪魔のVの方に魅入られている方々は、悪魔を愛でてしあわせそうです。それはそれでいいのかもしれません。どう生きようと、その人の自由ですから。
    宗教的にはまずいのかもしれないですけれど。

    p.27
    “二十世紀になってウォルト・ディズニーがミッキー・マウスを創出するまで、イメージの中の鼠は一貫して忌み嫌われる存在であったのだ。”
    イメージを一新できたディズニー凄いです。


    2024/01/22 p.30-98

    p.30
    “ここから洗礼者ヨハネがイエスに洗礼を施す場面には鳩が登場するのである。”
    キリスト教といえば鳩というイメージがあります。

    p.31
    “また中国や西洋とちがって、普通は食用にもしない。”
    中国はともかく、西洋でも食べるのですか?(中国は犬でも何でも食べるというイメージ)
    鳩って美味しいのでしょうか……? まぁでも、鶏肉は美味しいから、そういう感じ……?

    p.34
    “イタリアなどでは兎肉はごく普通に肉屋で売っており、食べても鶏肉とほとんど区別がつかない。”
    へぇ、うさぎって鶏肉っぽい味なのですね。
    カエルもそうじゃなかったでしたっけ? 鶏肉っぽい味は、よくあるのでしょうか?

    p.37
    これが後に食べられてしまったと思われるうさぎさんかぁ……と思うと、切ないです。

    p.38
    “日本ではなぜか北海道以外ではあまり食べられないが、”
    ジンギスカン、美味しいですよねえ。確かに、もっと広まっても良さそうです。

    p.54
    “イタリアの蜥蜴でも試してみたが、”
    試したのですか……! イタリアに行って、「そうだ、指を噛ませよう」と思う人は珍しいです。

    p.58
    “悪魔と同一視されるまでに嫌われるようになったのは、キリスト教の影響が大きい。”
    そうでしょうねえ……。原罪に関わるのですから。

    p.58
    “手や足がついた、罰を受ける前の姿で表現されることもあった。”
    蛇足が蛇足ではない時もあったのですね!

    p.63
    “ラテン語では蛇と竜がドラコという同一の単語であるため、”
    マルフォイ!
    寮のモチーフが蛇だし、これは意図的な名付けだったのですね。

    p.75
    “ヘデロが死ぬまでそこにとどまっていた。”
    人が亡くなるのを待っている状況って恐ろしい……。とはいえ、逃げなければ自分も殺されてしまうのですから、仕方ないのかもしれないですけれど。

    p.77
    このロバさんの表情、優しいですね。すき。
    空の色が美しいです。穏やかで、きれいな絵ですねえ。生死が関わっているとは思えないくらいです。

    p.79
    “あまりに高すぎるのではないかと非難された暁斎は、これは鴉の値段ではなく、長年の画技修行の価なのだと答えたという。”
    むかしから、絵の値段の意味がわかっていない人がいたのですねえ。悲しいです。
    絵を描くのにかかるのは、描く時間、画材の値段だけではないです。

    p.81
    その高いと言われたカラスの絵、とても美しいです。高音がつくのも納得の出来です。

    p.86
    “古代から、蝶は人間の魂の象徴であった。”
    だから、「胡蝶の夢」が生まれたのでしょうか?

    p.90
    “魚は古くはイエス・キリストの象徴であった。”
    神様を象徴とするものが多いですねえ。鳩とか魚とか。
    何でもかんでもつなげて、生活に神は宿ると考えていたのでしょうか? 日本の八百万の神ほど生活に結びつけてはいないのでしょうか?

    p.94
    “吊るされたこの鮭の絵は、”
    この文章だけで、どの絵だかわかりました。続く“重要文化財になっており、日本人の多くが知っているに違いない。”の文章で、確信を得ました。


    2024/01/23 p.98-113

    p.102
    “古くから野菜や果物を主題とする「果蔬図」というジャンルがあったが、”
    果物の果と、中国語で野菜を意味する蔬菜の蔬ですね。
    日本語でなんて読むのかわからないですけれど、文字を見ただけで意味がわかりました。ほんのり中国語を学んでいてよかったです。

    p.103
    “よい果物の代表が柘榴である。”
    柘榴って良いイメージなのですか! 赤い実が恐ろしいと思われそうな雰囲気なのに。


    2024/01/25 p.114-141

    p.118(p.120)
    “ふとこちらに気づいたように目を向ける男。”
    生きている、と感じました。正確には「生きていた」ですけれど。
    目の前にその人がいるかのような感覚です。絵画で自分がそう感じるのは珍しいかもしれません。
    目元がキュートな方ですね。

    p.119
    “ローマのコロンナ美術館でこの絵の前に立つと、今でもテーブルで男の向かいに座り、彼の食事を中断させてしまったように感じられる。”
    やっぱり、彼が目の前にいるかのような感覚になりますよね。

    p.122(p.124)
    “しかしこの一家には、ほとんど会話らしきものはなく、厳粛な雰囲気が漂っている。”
    そうでしょうか……? 左端のご夫婦と思しき男女は目を合わせているように見えるので、何か話しているように感じました。コップを差し出している男性も何か言ってそうな口の形。
    この著者さん、家族間で物凄く話すご家庭だったのでしょうか? 本当にまともに話さない家庭は、目線を合わせず、下を向いていますよ。

    p.123(p.125)
    “しかし、おぼろげながらも北朝鮮の社会状況を知っている目から見ると、この情景が現実とはかけ離れた理想的な状況にすぎないことは明らかである。”
    笑顔が嘘っぽいと感じました。つくりもの。
    それは、実際にはこんな状況ではないってことが滲み出ていたのでしょうか……?

    p.127
    “向日葵といえば誰しもが思い浮かべるのは、ゴッホの絵であろう。”
    そうですね。真っ先に思い浮かびました。


    2024/02/17 p.142-186

    p.142
    “神が太陽であるとすると、聖母マリアは、太陽の光を受けて輝く月にたとえられた。”
    発想が詩的ですね。

    p.146
    “何よりも目をひくのは夜空を満たす星であり、そこを斜めに走る天の川である。ここに描かれた星座とその位置関係はきわめて正しく、この絵の描かれた一六〇〇年当時のローマの星空をかなり忠実に写し取ったものだという。”
    そうなのですか……! 凄い!
    観察して位置を把握したのか、それに加えて星座の知識があったのか……どちらなのでしょう?

    p.147
    “この夜景はゴッホの心象風景でもあり、月や星によって自らの激しい宗教感情を表した一種の自画像であった。”
    情報が多くて頭を抱えます……。
    心象風景であることも、宗教が関わっていることも、自画像であることも、何もかも知りませんでした。「星月夜」は確かに不思議な絵ですけれど。そこまでいろいろ込められていたとは……。

    p.166
    “キリスト教では、神は光であった。”
    だから「太陽」とも言われていたのですね。

    p.183
    “ここにあげた《司書》とよばれる作品は、書物やしおりをたくみに組み合わせた肖像画。”
    (中略)
    “その職業を表す事物によって人物を作り、しかもそれがモデルにそっくり似ているというのが、この画家の特技であった。”
    実際にモデルさんそっくりなのですね! 凄い!

    お名前や解説を読む前にp.185の絵を見ただけで、「もしかしてあの野菜で表現した方?」と思い浮かぶのが本当に凄いです。素晴らしい表現力……。ジュゼッペ・アンチンボルドさん。


    2024/02/18 p.186-271

    p.222
    “ちなみに、マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツはカトリック教徒であり、それゆえ彼はコンピューターソフトにウィンドウズ(窓)という名称を与え、スクリーン上の小さな記号をアイコン(聖像)と名付けたのである。”
    そういうことだったのですね! 当たり前に使っていたことばの由来を、初めて知りました。

    p.242
    “トランプの四つの記号は、騎士、農民、商人、聖職者という、人間の四つの階層を表している。スペードは剣を表したもので、騎士。クラブはごつごつした棍棒に由来し、農民。ダイヤは金銭的価値が高いということで商人。そしてハートは血を表し、晩餐式(ミサ)の聖なる血から連想される聖職者を表していた。”
    へぇ……! どうしてこのマークになったのか、考えたこともなかったです。
    商人が一番覚えることができそうです。農民はいまいちイメージできないので、覚えるのが難しそうですね……。

    p.246
    “医療関係者でないかぎり、生活の場で血を見ることはほとんどない。”
    それ、女性の前で言わないほうが良いですよ。こちとら毎月血を流して、人によっては心身の不調に苦しんでいるのですから。

    p.255(p.257)
    ゴッホの「靴」という絵は、実際に歩き回って脱いだものを見て描いたそうですね。だからこんなにくたびれているとのこと。
    “ゴッホが繰り返し描いた自画像の変種にほかならなかった。”
    とありますけれど、この方の主張の通りなら、ゴッホはいろんな種類の自画像を描いていることになりますね。「星月夜」もそうおっしゃっていましたから。

  • 読書録「モチーフで読む美術史」3

    著者 宮下規久郎
    出版 筑摩書房

    p114より引用
    “ このチーズは豆腐のように見えるが、イ
    タリアのリコッタチーズは豆腐のように淡白
    な味である。そもそも豆腐自体、中国人が唐
    時代に北方民族のチーズを模倣して大豆で作っ
    たものであり、味も食感も似ているのは当然
    である。”

    目次より抜粋引用
    “犬
     猫
     羊
     向日葵
     分かれ道”

     美術史家である著者による、絵画に描かれ
    た動物などのモチーフを基に、名画の楽しみ
    方を記した一冊。新聞連載「神は細部に宿るーー
    モチーフで読み解く美術」の、加筆文庫オリ
    ジナル。
     身近な動植物からはっきりしない概念まで、
    元となった作品の写真と共に解説されていま
    す。

     上記の引用は、チーズについての一節。
    精進料理でよく使われている豆腐のもどき料
    理の、一番元の豆腐自体がもどき食材という
    のは面白いものですね。
     絵だけをパッと一目見てもわからなくても、
    こういう楽しみ方を教えてくれる著作がある
    事で、一つ楽しいことが増えるのはありがた
    いものです。

    ーーーーー

  • 読む経緯:小平図書館にて配架
    東京新聞と中日新聞にて連載されていたものを書籍化
    文が2ページあり続く2ページに絵が掲載された構成。
    絵画に描かれたモチーフの紹介。聖人の持物など。
    ショートショート
    あとがきは読んだ方が良い

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著者プロフィール

宮下 規久朗(みやした・きくろう):美術史家、神戸大学大学院人文学研究科教授。1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒、同大学院修了。『カラヴァッジョーー聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞など受賞。他の著書に、『バロック美術の成立』(山川出版社)、『食べる西洋美術史』、『ウォーホルの芸術』、『美術の力』(以上、光文社新書)、『カラヴァッジョへの旅』(角川選書)、『モチーフで読む美術史』『しぐさで読む美術史』(以上、ちくま文庫)、『ヴェネツィア』(岩波新書)、『闇の美術史』、『聖と俗 分断と架橋の美術史』(以上、岩波書店)、『そのとき、西洋では』(小学館)、『一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ《聖マタイの召命》』(ちくまプリマー新書)、『聖母の美術全史』(ちくま新書)、『バロック美術――西欧文化の爛熟』(中公新書)など多数。

「2024年 『日本の裸体芸術 刺青からヌードへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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