もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430878

感想・レビュー・書評

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  •  傑作『完全教祖マニュアル』の著者の1人による、前代未聞の“笑える仏教入門”である。文庫化を機に初読。

     タイトルを見て、「なんだ、『もしドラ』の二番煎じか」と感じる人は多いだろう。じっさい、『もしドラ』ブームに乗って出版されたものではあるのだが(単行本は2010年刊)、たんに二番煎じ扱いしてしまったら著者が気の毒だ。

     というのも、著者が2006年に上梓した『完全覇道マニュアル――はじめてのマキャベリズム』(文庫版は『よいこの君主論』と改題。辰巳一世との共著)は、小学5年生がマキャベリの『君主論』を読んで学級制覇に乗り出す(笑)という本で、まさに「もしドラ」的入門書の先駆であったからだ。順番からいけば、むしろ「もしドラ」のほうが著者の二番煎じなのだ。

     それはともかく、本書は仏教入門として非常によくまとまっている。タイトルや表紙の印象で、「どうせ薄っぺらい内容だろう」とあなどってはいけない。
     たとえば、阿頼耶識や悪人正機についての解説など、どんな仏教入門よりも本書の説明のほうがわかりやすかった。

     著者が自身のブログで書いた「ヒップホップで学ぶ日蓮」はネット上で大評判を呼んだ傑作エントリであったが、本書はあのテイスト(=笑えるけど、内容はしっかりしている)で仏教史全体を通観した本なのだ。

     ただ、困ったことに、“東京のパンクロッカーが謎の老僧に出会って仏教史を学んでいく”という小説仕立てになっている部分が、まったく面白くない。
     それに、ストーリー部分を全部読み飛ばして解説だけ読んでも、十分本として成り立っている。小説仕立てが意味を成していないのだ。

     中森明夫の『アナーキー・イン・ザ・JP』(アナーキスト大杉栄の魂が現代のパンク少年の脳に棲みつく話)を読んだときにも思ったことだが、物語の中に登場するパンクロッカーというのは、どうしてこう類型的で陳腐なのだろう? 

     一口にパンクロッカーといっても、遠藤ミチロウやヒュー・コーンウェル(博士号を持っている)のようなインテリもいるわけだから、シド・ヴィシャスみたいな頭の悪いDQNばかりではない。なのに、フィクションの中のパンクロッカーはどいつもこいつも、二言目には「ファックだぜ!」とか言うバカばかり。ステレオタイプにもほどがある。

     まあ、小説仕立てにせざるを得なかった事情はわかる。仏教学者でもない一ライターがフツーの仏教入門を出しても売れるはずはなく、“売るための仕掛け”が必要だったのだろう。

  • キリスト教のが面白かったので買ったが、物語としては変化に乏しい

  • 会場は興奮の坩堝 リズムキープという己の職責を忘れて 稚拙な演奏 菩提樹 仏陀伽耶ブッダガヤ 法悦 恍惚の中で餓死しようとしている 我が意を得たりとばかりにニヤリと笑いかけた 苦 一切皆苦 悟り 解脱 紀元前のだいたい五百年くらい イスラムのムハンマドが五七〇年頃の生まれ 天上天下唯我独尊 アシタという仙人 いつも鬱々としている暗ーい子 難産 出産後に実母が亡くなっていた 紛う事無きニート思想 瞑想と苦行 因果関係確定法 それに基づく論理的な現実認識を完成させます(世界を論理的に理解したのです) 先の観察型瞑想法により生存欲求を絶つことに成功します 認識と感覚が分断されて 自分の行動や心の動きを冷静に客観的に分析 全てを「他人事」のように感じるようになる 智慧 「煩悩を滅した」境地に達したゴータマさん 仏陀(目覚めたもの) 釈迦牟尼世尊しゃかむにせそん、略して釈尊しゃくそん 三昧体験 この感覚を「全体ドカーン」と呼称します 諸説紛々 「根本的な生存欲」が無明ということにしておきましょう ブラフマー 憤懣やるかたないぜ 五比丘ごびく 中道=どっちも程々にね! 四聖諦ししようたい=四つの聖なるホントのところ 八正道 永遠普遍の正義 諍いの原因 柔軟性 無常=ほぼ全てのものは変化し続けて永遠には存在しない 五蘊非我ごうんひが=五つともアートマンではなく全部非我 おそらく彼にとって、「アートマンではないものをアートマンと勘違いする」のは解脱する上で大きな問題でしたが、「本当のアートマン」を特定する必要は特にない、と考えていたのでしょう。 慈悲=他人への思いやり 大乗仏教 わずら煩い はつねはん般涅槃 呵々大笑 あらはん阿羅漢 りたぎょう利他行 詭弁をろう弄したかったわけではありません 龍樹の縁起観により世界は全部相互依存によって成り立っていることもわかったのです 六波羅蜜や十波羅蜜 バラモン教が民間宗教に接近してヒンドゥー教へと進化 マントラは一種の呪文 遮二無二 中国ナイズされた仏教 玄奘三蔵 原典を求めてインドへ 物事は常に自分が知覚した形でしか認識できない 経験データの総体(阿頼耶識あらやしき)をうっかり「自分」だと勘違いしちゃうのが末那識まなしき 唯識自体が究極的には無意味 けごん華厳 さいちょう最澄たん 神道と山岳信仰 修験道 千日回峰行 唐の大都会である長安 天才ルーキー空海 サンスクリット語を四ヶ月程でマスター 高野山を下賜かし とうじ東寺はさいじ西寺とセットで都を鎮護 徳一 ナンミョーホーレン法華経 方便 敬う やおよろず八百万の神 一念三千は天台宗のスローガン 真言宗の即身成仏 法然ちゃんは南無阿弥陀 日蓮ちゃんは南無妙法蓮華経 互いのリリックをビーフし合ってる 鎌倉新仏教は「庶民にも分かり易いヘンテコリンな仏教」と捉えて下さい 相互扶助組織 一念義と多念義 親鸞は公然と妻帯していた 忍性にんしょう日蓮ちゃんといえば佐渡に流罪るざいになった折 「本当に元気」でなければ殺す覚悟も殺される覚悟も持てません 自覚は信仰とも言えますし思い込みとも言えます。強烈に思い込めば強烈に元気になるわけです。 宗教には本当は道徳的な善悪などなく、あるのはただ人間が発散する巨大なエネルギーの畝りだけなのかもしれません。 排他性は単純化にも繋がります 疾風迅雷 警策きょうさく 悟りの解釈は大乗仏教になって変質した それをカバーするのが禅問答 家に帰るまでが遠足であり、言語世界に帰るまでが悟りなのです。 りょうかん良寛は越後の出雲崎の名主の長男として生まれ 蔑称 唾棄すべき存在 淡々とした文章ながら捻ったツッコミで笑いを誘うもの 辛辣な批判 昨今の世相を鑑みるに 「シッダールタ輪廻やめるってよ」 ウェブ世代に限らず仏教の見せ方の新たな地平を開いた一冊

  • 2017年2月12日紹介されました!

  • 著者の「仁義なきキリスト教史」を楽しく読めたので、仏教も書いていたことを知り、こちらも読んでみた。

    釈尊の目指したところが、「何もかもどうでもいい」という境地だというのは、今の一般的日本人のの考える仏教観からすると意外に思える。

    いわゆるブッダが涅槃に入ってからは、当時の他の宗教や中国でのいろいろな考え方にもまれ、日本に伝わってからもさらにいろいろと変化してきたという仏教史が、おもしろくしかも簡潔にまとめられているので、読んでいて飽きてこない。

    末那識(まなしき)、阿頼耶識(あらやしき)などの説明は非常にわかりやすい。女子高生をみて感じる感覚が阿頼耶識に溜まっていくのか、なるほど。

  • ブッダって29までニートやん、そういえばイエスも33くらいまでニートだったし、そういう考え方もできるか。「悟り」はラリってるだけ。日本の仏教の辛気臭さの原因は『日本霊異記』だった。など斬新な視点からの指摘も多い。ただ、政治や税金と絡めた成立過程はあまり描かれておらず個人から思想が出てきたというスタンスから描かれていることには物足りなさを感じなくもない。

  • 細かいレビューは後日書きたいのだが、日本の宗教に興味があったので非常に面白かった。 途中の挿話が時折というか一貫して馬鹿馬鹿しいレベルに下品。ここまで来ると笑うのも疲れるレベル。笑

  • 2013/8

  • 略して『もし仏(ブツ)』。
    パンクロッカーまなぶが,時空を越えて釈尊,龍樹,玄奘をはじめとする仏教の巨人とバトルして,仏教史を旅していくという異色の入門書。まったくもって意味不明な設定かと思いきや,「何もかもどうでもいい」という仏教の悟りとリアルパンクの精神には共通点があるんだとか。最澄が萌えキャラだったり,法然や日蓮がラッパーだったりするのもふざけてるようでいてなかなか深い。
    とっつきにくい仏教だって,ファッションパンクみたいに楽しんじゃえばいいのでは?という気分で書いたとのこと。蝉丸P住職による解説も良い。

  • 20131123

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著者プロフィール

1980年生まれ。広島県出身。作家。著書に『仁義なきキリスト教史』『完全教祖マニュアル』(辰巳一世との共著)など多数。

「2020年 『仁義なき聖書美術【新約篇】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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