新版 熱い読書 冷たい読書 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.17
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本棚登録 : 135
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430885

感想・レビュー・書評

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  • 辻原氏による書評集。連載をまとめたものであるからか、それぞれが短くて簡潔。紹介される本は小説が多いけれど、それ以外の源氏物語や古典の詩歌に触れた本の解説に特に興味をひかれた。カフカ『変身』の解釈は、おおっ!と目からウロコ。読んで感動したり面白かったりする本ももちろん好きだけど、読んだその時は分からなくて消化できなかった本が、後に別の本を読んだときにハッと思い出してこういう事だったのかと一部だけでも理解できる、そういう広がり続けていくよう読書をしたいと改めて思った。

  • 作家、辻原登が小説、ノンフィクション、評伝などについて週刊誌に連載された書評をまとめた一冊。

    現存する作家において、もはや死に絶えた日本近代文学の系譜を受け継ぐ稀有な作家、というのが私が彼に対して持っている勝手な印象であるが、そうした雰囲気は書評の対象として選ばれる本のセレクトや、実際の書評内容にも通ずるものがある。

    個人的には周恩来の評伝を対象として、政治的人間が時に残虐の暴力性を持つということ、その点で20世紀を代表する1人である毛沢東の姿と、対比的に周恩来を語る語り口が面白いと感じた(もちろん紹介される本自体の内容も含めて)。

  • 著者の小説は数冊を読んだだけでが、その度にその巧さに唸らされた。その辻原さんの書評なので、手にしてみる。
    一冊の本を紹介するのは文庫本の2、3ページ。短いが鋭い評が満載。読書量が凄いのは判るが、こんなに次々に面白い本に出合えるのものだろうかと正直驚く。
    「悪童日記」亡命中の中年女性がはじめて書いた小説を大手出版社に送り付け、出版された。悪漢小説の傑作。
    『「清明上河図」をよむ』大河を描いた絵巻を語る大著。
    「天上の歌 岡潔の生涯」天才数学者の深遠な世界観。

    そしてゴーゴリ、ナブコフ、セルバンテス、トルストイについての文章。読みたい本がこんなに増えて、どうしたらいいんだろうというのが、目下の感想。
    団鬼六の小説。老人のSM作家<私>が骨折して、愛人に口述筆記をさせるが、そんな羞ずかしいこと打てないと拒否される…。メタ小説にもなっているとのこと。面白そうだが、本屋に注文しづらいなあ。

    近江を語り、淀川に関する本を語る数編。「花はさくら木」に結実したのだろうと思いながら読んだ。

  • 2000年刊行の単行本の文庫化だが、新版とあるように2002年から2013年までのの毎日新聞書評欄の新刊書評が新たに収められている。(全体の約半分も)毎日新聞の書評欄を長く采配を振っていた丸谷才一好みの書評の芸を満喫できた。特に、要約の技は凄い。「熊野でプルーストを読む」が素晴らしかったので、「東京大学で世界文学を学ぶ」と読んできたが、やはり本業の小説も読みたくなってきた。

  • 辻原氏は小説家であり、優れた読み巧者でもある。

  • 「冬の旅」の迫力が懐かしい。

  • これだけの紹介冊数なのにも関わらず、まったく読んだことのある本がないという、ひどく珍しい書評集。(^^;
    なんで、これ買おうと思ったんだろう?(^^;

    とはいえ、紹介のされ方というか、文章が良くて、普段絶対読まなさそうなロシア文学とか買っちゃいそうな勢いです。
    最後の長文のエッセイもなかなか。

  • あまり書評集を高評価することはないのだけれど、なんていうか、ミステリから句集まで幅の広さに得ることが多かった。とはいえ、丸谷才一に関しては数回取り上げているが。いかに刺激的だったかという点で、満足。自分の幅の狭さも実感。

  • まるで短篇小説を読んでいるかのような書評集。
    新聞や雑誌に掲載された、比較的短い短文を集めたものだが、取り上げられた本に対する著者の愛情が溢れている。
    何冊か読んでみたいのがあったので探してみよう。

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著者プロフィール

辻原登
一九四五年(昭和二〇)和歌山県生まれ。九〇年『村の名前』で第一〇三回芥川賞受賞。九九年『翔べ麒麟』で第五〇回読売文学賞、二〇〇〇年『遊動亭円木』で第三六回谷崎潤一郎賞、〇五年『枯葉の中の青い炎』で第三一回川端康成文学賞、〇六年『花はさくら木』で第三三回大佛次郎賞を受賞。その他の作品に『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『闇の奥』『冬の旅』『籠の鸚鵡』『不意撃ち』などがある。

「2023年 『卍どもえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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