動物農場: 付「G・オーウェルをめぐって」開高健 (ちくま文庫 お 67-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431035

感想・レビュー・書評

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  • あまりにも痛烈。もとより不滅の傑作ではあるが、尚更強烈に感じるのは、今の日本にもそのまま当てはまる事柄が多すぎるからだろうか。
    本書を読んだ人は、豚にいいようにされ続ける動物たちに対してこう感じると思う。
    「いい加減に気づけよ……」

    和を尊ぶのは日本人の良いところでもあり悪いところでもある。
    コロナ禍が過ぎればもとの生活に戻る……。
    ワクチンをうてば……。
    みんながやってるからやってる……。
    周りがどうであろうと、もう少し自分で考えるということをしてほしいものだ。いいように扱われているうちに、権力によって奪われたものは容易くは戻らない。本書が目を覚ます契機になればよいが、そういう人ほど読まないジレンマ。
    しかし今年になって「一九八四年」や「華氏451度」が売れているようで、多少危機感は高まっている?

  • 大人向けの寓話として、一つのコミュニティが独裁政権になる過程を描く。
    簡単かつ簡潔で、心が痛くなる。
    しかし、考えさせられる一冊。

    その後の解説が著者の他の著作やさまざまな作品が当たり前のようにでてきて、最後の数ページまで惰性で読んだんですがもう諦めました。

  • 動物たちが、人間に搾取される日々から自由の日々を目指して反乱を起こす。しかし、待っていたのは、人間に飼われていたときより不平等で過酷な、豚にこき使われる毎日だった。農場の経営者だったジョーンズが戻ってくるとの脅しやありもしないデマをかけて、リーダーの権力を使い横暴なやり方で他の動物を支配しようとする。最初に決めた人間嫌悪とルールはどんどん薄れていき、家や紙幣、酒などどんどん人間みたいになっていくのはおもしろい。最後のピルキントン氏との宴会で人間と同様階級や支配を正当化している。利権が目の前にある時、人は倫理とか前に持っていた純粋な目的なんかを忘れてしまうのかと考えた。この物語は現実の出来事を動物に例えて表現しているようだが、こんな虐殺など残酷なことが行われていたとは今じゃ考えられない。しかし、拡大する格差、肥え続ける資本家、反論できない場の空気では現代でもある。恐ろしい物語だと思う。

  • 荘園農場の家畜たちが農場主である人間ジョーンズに対し反乱を起こし農場を動物たちのものとした”お伽話”。反乱の発端は老雄豚のメージャー爺さんの演説、そして”イギリスの家畜たち”という劇中歌。ナポレオンとスノーボールという2匹の若き豚が中心的役割を担い成し遂げた”革命”は、成し遂げた瞬間から徐々に変化していく-。
     英雄がリーダーになり、権力をもち、支配者になったとき、共同体はどう変化していくのか。記録や記憶、情報の書き換え・・・。登場動物の役割が、いかに権力者の都合のよい行動として機能していくか、個人の恣意的な意思(嘘と恐怖によるコントロール)が共同体を崩壊させうるモデルをみらせれたような感じ。
     読了後、現代社会にもあてはまっているのではと、ふと思ってしまった。ちなみに文庫本のほぼ半分は開高健氏のオーウェル評になっているけれど、これも結構面白い。

  • 物語そのものが人間の民主主義と政治を皮肉っているものであるため、常に今読んでいる文が何を指摘しているのか裏のメッセージをキャッチするための宝探しのミニゲームのようだった。

    その中で、見つけきれたものを書き出してみた。

    (裏のメッセージを列挙)
    ・大敵を倒した後の権力闘争
    ・権力闘争後の弾圧と思想統制
    ・行動の本末転倒感
    ・肝心なところの論理は難しい話で乗り切る
    ・武力を使っての権力基盤確保(犬)
    ・大多数無能派の掌握(喚く羊)
    ・簡単な世論操作(羊)
    ・憲法の別(新)解釈
    ・歴史の捏造(作り替え)
    ・敵国の情報の国内向けプロパガンダ
    ・結局革命前と変わらない、ただ多く血が流れただけ
    ・もつ側が持たざるものとを分かりやすく区別できる仕組みを作る
    ・昔の世界を知らず、単に触れられる情報によって形成される世論

  • 従順で良い奴ほど、飼いならされ都合よく利用され、最後は捨てられる。
    目に見えない悪者を仮想敵として注目させ、自分たちの劣悪な環境に納得させる。

    支配階級と奴隷階級の格差がいかに腐敗して広がっていくかが想像できて楽しかった。
    組織で暮らす人間だったら誰もが共感できる部分ありそう。

  • ナチス、ロシアの全体主義への警告を謳った、寓話小説。
    現在であれば、朝鮮や中国となるが、実際にはアメリカや日本でも、この傾向はみられる。
    この小説で、哀れな動物たちを読み手はどうみるだろうか。

    おかしいと思いつつも意見を言えず、ただ従う動物たち
    (意見を言おうとすると、独裁者に従う動物たちの鳴き声にかき消され、
     独裁者に従順な鋭い牙をもつ犬たちが吠えかける)
    過去の英雄が「犯罪者」へ転換されていくのを、みつめる動物たち。
    (あの勇猛さはみせかけであり、演技だった!すべて人間たちと共謀していたのだ!)
    歪に変わる七誡
    (徐々に条件付けされ、緩和されていき、最後には内容が変わっていく。
     そして人間たちから農場を取り戻した当初は文字を勉強し、七誡をよむことが出来たが
     それが出来る動物たちは、話が進むにつれ少なくなっていく)
    懸命に働き、定年を迎える際に殺処分され、その肉や皮を売られる動物たち

    これらを、自分の身近な社会に紐づけていったとき
    この動物たちをみつめる自分が、実は動物たちと同じ立場にあると感じる

  • 開高健の翻訳は、読みやすい。社会主義に対する強烈な批判。権力に対する堕落は、最初から起こっている、、ということが怖い。

  • 豚も人間に反乱を起こした時は、本当に動物は皆平等と思っていたでしょう。当時の共産主義への批判だったのかもしれませんが、人が集まれば必ず起こってしまう事。何度も読んでいますが、深い内容です。

  • 人は権力をもつと変わるのだろうか。
    慢心からか仕組みのためか。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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