モロッコ流謫 (ちくま文庫 よ 28-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431851

感想・レビュー・書評

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  • 数多の文学・芸術家がモロッコに焦がれ作品に昇華してきた。筆者も若き頃に聞いたツェッペリンやブライアン・ジョーンズのエキセントリックな音楽に、やがてボウルズの小説に誘われて彼の地を踏む。臆すことなくボウルズを訪問し親しい関係を築くのだから人懐こい可愛がれ体質なのだろう。羨まいし。ボウルズの妻ジェインに魅かれた。生来の破滅的性格がモロッコの地でより極められた悲劇。一方やはり波乱に満ちた人生を送ったジュネがこの地で『恋する虜』を執筆し穏やかに晩年を暮らす。狂気にも静謐にも導くモロッコに私もまた惹かれつつある。

  • 4/8 読了。
    地中海を挟んでヨーロッパとアフリカを繋ぐ都市であり、20世紀初頭には多くの知識人から愛された国モロッコ。アメリカからモロッコのタンジェに移り住み、二度と新大陸に戻ることのなかった作家ポール・ボウルズの足跡をたずね歩きながら、かつてフランスとスペインの植民地であった、そしてイスラム教徒のアラブ人とベルベル人の国であるモロッコを考える。

    チャトウィンの『パタゴニア』や菅啓次郎の『コロンブスの犬』などを思い起こさせるところのある、<旅>という概念のそのものにまつわる思索の記録。ここに出てくる人びとはボウルズにしろ平岡千之(三島の弟)にしろジュネにしろ、モロッコで生まれたわけでもない異邦人なのだが、だからこそ距離を保ちながらも自らの視線を彼らと重ね合わせる著者の筆致には嘘がないと思える。長年タンジェを住処としながらイスラム文化にとけ込むことのなかったボウルズに対し、イスラムの中心的思想である喜捨の精神を体現し、モロッコの人びとから愛されたジュネの墓所をたずねる最終章は、どこか須賀敦子のユルスナールをたずねる旅にも似た静謐な空気をまとっている。

  • "人はなぜモロッコを放浪するのか?"
    ポール・ボウルズ作品の翻訳者による紀行エッセイ。ボウルズ、バロウズ、ジュネなどが魅せられたモロッコと作品の関連が解き明かされる。モロッコの迷宮を巡るようにボウルズという作家と作品の深淵へと導かれる。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

四方田 犬彦(よもた・いぬひこ):1953年生れ。批評家・エッセイスト・詩人。著作に『見ることの塩』(河出文庫)、翻訳に『パゾリーニ詩集』(みすず書房)がある。

「2024年 『パレスチナ詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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