誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸 (ちくま文庫 ま 33-3)

  • 筑摩書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432001

感想・レビュー・書評

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  • 著者の最初の著作『反社会学講座』が話題となった際(2004年刊行か…)、既存のレッテル貼りされた情報を疑うことと、自分で考える/調べることの重要性が深く心に残りました。あれから17年…。

    本著では目の付け所が面白い様々な題材を、文化史的な観点でまとめています。
    順番に全部並べてみると・・・土下座、先生、全裸、ノーネクタイ、"笑顔が絶えない"、姓名判断、牛を使った物流、牛乳の殺菌方法、戦前の新聞広告、亡国論、"所説あります"と。
    読んでみると、考えずにそうだろうと思い込んでいたコト、例えば「土下座には長い歴史があって、江戸時代の大名行列に庶民は(今で言うやり方の)土下座をしていた」なんてのが間違いだったとわかり、知識を得ることの面白さを感じます。
    もちろん、著者の軽妙な語り口は健在で、非常に読みやすいです。昔のおかしな(現代から見て)ファクトに対して、ムチャクチャ丁寧にツッコミを入れていて、これ自体も笑えます。

    それぞれのテーマについての記述のほか、世の中の事象を「通りすがり」にバサッと切り捨てていくのも痛快です。
    出掛ける子どもに「交通ルールを守りなさい」と言うコトに意味があるのか?とか、内田樹さん(実名!)の「先生はエラいものなのだ(後略)」という発言を「証拠もないヘリクツ」「推理だけで理論を構築したがる手抜き名探偵」とこき下ろすのは、読んでいるコチラがヒヤヒヤするような。。

    1点、牛乳の消費量について、日本で最も牛乳を買わない都道府県が北海道と沖縄県とあり、これで牛乳を飲まない道/県だとしているのですが、北海道の人って牛乳貰ってるから買わない(けど飲んでる)とか無いのかなぁ…と思いました。
    ただ、(シロウトがごく軽くですが)調べてもデータが出てこないですね。
    ・札幌市の牛乳消費量自体は県庁所在地/政令指定都市の中では中位くらい
    https://www.japan-rank.com/article/192879892.html
    ・北海道の消費量が少ないコトは、専門家の中でも謎らしい
    https://www.news-postseven.com/archives/20130722_201166.html?DETAIL
    学者さんというのはこういうテーマに日々向き合っているんだと思うので、凄いなぁと。。

    今はググると著者(パオロ・マッツァリーノ氏)の正体?という情報も出てくる時代ですが、まぁ調べるだけ無粋なような気もします。

  • 雑学的知識が増える本。おちゃらけた調子で書かれており読みやすい。テーマは土下座、先生、全裸、ネクタイ、笑い、名前、東京の牛、牛乳、新聞の一面広告、亡国論の10個。
    ●土下座は、古代は神や貴人にすることだった。江戸時代の大名行列が通るときにするのは下座と呼ばれていたが、武士は別として庶民はウンコ座りしていればよく、これが下座だった。昭和初期から戦後にかけて土下座のカジュアル化が進み、今では謝罪で土下座をするとか、選挙で土下座をするようになった。
    ●ネクタイは明治時代に取り入れられたが、昭和6年頃から夏場のノーネクタイが増え、徐々に一般化した。昭和27年ごろから再びノーネクタイの是非が問われ始め、昭和36年頃には夏場でもネクタイ着用が普通になった。最近のクールビズに端を発するノーネクタイの広がりで、ネクタイ業界は不満を鳴らすが、省エネルックが流行らなかったように、政府が奨励しても一般人がそのとおり動くかは別の問題であり、むしろ一般人が積極的に選んだと考えるべきで、政府のせいだというのはお門違い。
    ●キラキラネーム、DQNネームが増えているといわれるが、日本人は西洋人に比べて、名前の流行の変化が激しい。正しい歴史認識は、近頃変な名前をつけたがる親が増えたのではなく、日本ではいまだに変な名前をつけたがる親が多いである。平安時代は悪い名前をつけて邪気を払うということで、紀貫之の幼名は阿古屎(あこくそ)。『徒然草』でも吉田兼好が変に小難しい名前が多いと立腹しているくらいで、鎌倉時代でもそうだった。女性名は平安時代は子が付く名前、鎌倉~室町時代は変化に富んだ混乱時代、室町~明治はちよ、とらみたいなかな2文字が流行。

  • 笑えるけど疲れる

  • 東2法経図・6F開架:210.04A/Ma99d//K

  •  当たり前すぎて、見逃されている・・・もしくは、面倒くさがられる庶民史を過去の新聞等から丁寧に拾い上げて、昔から当たり前だと思われていたことが、実はそんなに当たり前ではなく、そんなに歴史がない事に気付かせてくれる本。 土下座は畏敬の礼法で使われていたものが、現在では単なる謝罪や懇願のみで使われている事や「先生」という言葉に対する日本人の「侮蔑」と「尊敬」が入り混じった感情を紐解いて成る程と感じた。

  • タイトルにあるような雑多な事象について、それが近頃の現象なのか、明治大正期はどうだったのか、過去の新聞などから読み解く。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    普段は気にもしないような事を改めて調べると中々に面白い事実が分かるのだと思ったよ。
    先生という呼称や日本の牛乳、広告や亡国論など面白かった。特に面白かったのは日本の謝罪文化や亡国論の分析は面白かった。
    他に印象に残っているのは著者の調査方法だったな。過去の新聞記事にキーワードが使用される回数を調査すのは地道だけど確実な調査方法何だなと感じた。
    自分も過去に関することを調べようと思ったら、新聞を調べることは覚えておこうと思う。

  • 土下座のところで、突然マレーシア、ルングス村の人の話が出てくるのは笑った。豚か山羊を相手と祈祷師に送るんだってさ。日本は誠意=謝罪+誠意、というわけのわからない公式があるとの主張をするための前段が突拍子なくて面白い。
    他にはビックリマークを濫用する広告の下りも面白かったなぁ。
    全体を通して楽しく読めました。

    あと、亡国論の箇所にはいい言葉があったので以下書き置き。

    もっと身近なもの、自分の身の回りの人や家族やご近所など、滅びやすいものが滅びないよう、努力をかたむけるべきです。それは自分にしか守れないんですから。
    近所のガキが悪さしたら叱りなさい。電車や公共の場での迷惑行為に講義しなさい。リードをつけずに犬の散歩をしているルール違反の飼い主を注意しなさい。自分の所属している職場や学校で起こっている具体的でちっぽけな問題に向き合い、ちょっとでも良い方向へ向かうよう、努力してみてください。
    どうでもいい歴史や思想を語って国を憂うヒマがあったら、自分の身の回りに目を向けるべきです。小さな問題を解決しようと体を張らない人間に、国が滅びるなどと大口叩く資格はありません。デカイ思想を語るだけの思想ヒーローは、実際には世の中を一ミリも動かしてないのです。
    大切なのは、みなさんひとりとりが、身の回りの問題に取り組むローカルヒーローになることです。

  • 素敵で 的確な視点

  • 記述は稚拙。視点は秀逸。;「つゆだくの誠意と土下座カジュアル」「先生と呼ばないで」「全裸のゆくえ」「部屋と開襟シャツとわたし」「絶えないものは、なんですか」「名前をつけてやる」「東京の牛」「疑惑のニオイ」「戦前の一面広告」「たとえ何度この世界が滅びようと、僕はきみを離しはしない」「諸説あります。

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著者プロフィール

パオロ・マッツァリーノ(Paolo Mazzarino):日本文化史研究家。著書に『反社会学講座』『続・反社会学講座』『誰も調べなかった日本文化史』(以上、ちくま文庫)、『読むワイドショー』(ちくま新書)、『「昔はよかった」病』(新潮新書)、『サラリーマン生態100年史』(角川新書)、『思考の憑きもの』(二見書房)などがある。

「2023年 『つっこみ力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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