人は変われる: [大人のこころ]のターニングポイント (ちくま文庫 た 36-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432292

感想・レビュー・書評

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  • 家庭や会社で多くのストレスにさらされながら日々過ごしている我々にとって、如何に心の負担を軽くして、心をすり減らさないように処していくかは重大事であろう。

    本書では発達心理学の視点では十分に成熟した私たち大人でさえ、人生の解釈という視点では大きく変わり得るし、達観というか、より熟達した意識状態にも成り得ると説いている。

    同じ物事、外部からのストレスに対しても、その解釈によって心の状態は変化するし、自己の変化を通して、外部との関係性、外部そのものを変える事が可能だという視点は興味深い。

    心の治癒能能力としての三つの能力、
    ・自分から離れ客観的に自分を観察できる能力
    ・自分ではどうにもできない事柄を受けいれ、絶望する(納得する)能力
    ・新しい自分に気づいていける能力

    主観性の強い子供の心から、客観性が支配する大人の心へと変化していくのだが、更に強い大人の心に変化していくため、上記の能力を発揮し客観性を覆う大人の主観性が必要だと指摘してる。河合先生のおっしゃる、「自分の腑に落ちるものがたりを作ること」とも同義なのだろうか。

    窓から射す明るい陽射しを美しいと感じた瞬間から、自分を縛っていた解釈が解け、新しい解釈に変化し、状態が改善して行くクライアントの事例など、大人の心が変化していくありさまを描いている。このような変化の機会が、私の友人にもめぐってくることを切に望む。

    文庫版では、女優の中江友里さんが解説を書いておられる。当時大きな悩みを抱えておられた状態で、本書の内容を心の支えとされていた。

  • 大人はただ自分の心に向かい合えばいい

  • 人は大人になっても成長することができる。
    自分を俯瞰し、自分と状況を客観しし、
    それに絶望することで、何かを手放すことができる。
    さすれば、世の中を見るあたらしい解釈が
    生まれて、新しい自分のあり方を見つけていく。
    なんて人間は素晴らしく
    しなやかな力を持っているのだろうか。
    生きていくための示唆にあふれる本でした。

  • この本によると従来、発達心理学では30歳以後人は発達しないと言われているらしい。
    それでも人は変われると作者は本の中で断言している。
    それは新しい解釈を得ることによって。

    そして、その変わるプロセスとして、
    1.自分を客観視する。
    2.絶望する。
    3.純粋性を感じる。
    とある。

    この中で純粋性を感じるというのは分かりにくかった。
    それは個々によって違いがあるからかもしれない。
    「どうしようもない」「ついてない」など。
    それは概ね「あきらめ」という事のように思う。

    いくつかの例をもってこのプロセスの様子を紹介しているが、その中のひとつでは足をなくした男性が絶望の中から一瞬にして新しい解釈を得た様子が紹介されていた。
    それは劇的な事でなく誰にでもある、ありふれた光景。
    つまり、それを見るその人の見方が絶望を味わう経験によって変わったという事だと思う。

    私がこの本を読んで良かったと思ったのは絶望をする事により変われるという希望を得たこと。
    もちろん絶望したままで止まって変わらない事もあると思う。
    ただ、
    絶望なんて人生の中で味わいたくない。
    そんな経験をしてないような人が羨ましい。
    と思っていたけど、いったんそういう経験をしたからこそ本当の意味での大人になれる、主体性をもてるのだと思った時に心が少し軽くなった。

    この本は手軽に一瞬にして変われる、なんてノウハウ本ではない。
    変われる人は一瞬にして変われるけど、その前に客観視、絶望という経験があってこそという事をてらいなく書いてあるちゃんとした本だと思う。

  • 自分を変えるための第一の能力は自分から
    離れることができる能力
    第二は絶望ことができる能力
    第三は純粋性を感じることができる能力
    自己を客観視することによって
    自分の状況に絶望し、ついでそれが
    物事をありのままに見る力となる
    絶望の中では古い経験や知恵が役に立たない
    のでもう一度自分を見直そうとするからだ
    人は変われる、大人になっても
    いや大人になってこそ。
    今まで知らなかった事を知りそれを用いて
    人生を新しく解釈する。
    その結果同じ人生を豊かに送れるように
    なる‥
    筆者は発達心理学の裏付けや実体験から
    それを解き明かしていく
    思わず引き込まれ一気に読み終えた
    新しく力をもらった気がする

  • つまずき、絶望し、新たな間主観性を客観性と主観性の先に見出しうるのは、あるいは書いてある通りかもしれない。そして登場した各々にとって、新たなる純粋性を獲得して好転した事実は、まぎれもない真実なのだろう。だがしかし、それ以上でもそれ以下でもない。ほかのだれかにとって、これが真実になるとは限らないのだから。絶望を乗り越えて新たなる解釈を得た先にあるものが、新たなる絶望であった場合の挫折感はいかほどのものと思っているのだろうか。あるいはそこまでは救いようがないのかも。

  • 読みながら、自分の今置かれている状況を考えていた。そして、読み終わった時に感じた。「自由になろう」と。

  • 「客観性」と「主観性」のベクトルの違い

    今の私には難しく感じた。だが、何度も読み直して無意識下に擦り込んでいきたい

    変わりたい

  •  著者は、元・都立松沢病院の精神科医長。確か、単行本の時に読んだのですが、文庫でもあり気軽に再読。しかし、読み返すと、とても良いです。

     まずは解釈の仕方ということ。「あ〜、認知行動療法のことね」と読み飛ばしたのですが、心の3つの能力(①自分から離れる能力、②絶望できる能力、③純粋性を感じる能力)によって、現在からより深い解釈を得て古い自分を乗り越える(人が変わる)というお話は、実際の臨床事例を交えて説得力がありました。

     また、文字を書くという行為が、「意思(主体性)によって肉体の物理法則(客観性)が反応する」ことを引き合いに、人(主体)が変われば運命(客観)も変わると説いています。いわゆる自己啓発本というより、臨床体験を踏まえた温かい目線で人を見てきた独特の視点があると思いました。

     「人が変わるには、ある程度の人生経験が必要」とのことですが、初めに読んだ時より感じ入ったのは、ある程度の経験を積んだためでしょうか。ふと振り返るのに最適の1冊です。

  • 思秋期のおじさんとして大人の発達心理学のつもりで手に取ったら掘り出し物でした。脳科学的にはだいぶ古臭い訳ですが、臨床に裏付けられた理論は骨太だと感じる。 

    心の階層
    ①感覚
    ②欲求
    ③知性
    ④感情・感性 
    ⑤主観性(自我)

    ①が浅く⑤が深いヒエラルキー。

    ヒエラルキーとは、
    ①浅い層が深い層の土台になっている。浅い層がなければ、深い層は活動できない。
    ②深い層は浅い層を自分の中に取り込んでおり、自分より浅い層を自由にコントロールできる
    という意味。
    これは発達=進化の定義をピン留めした指摘だと思う。

    主観性を取り戻すために必要な3つの能力
    ①自分から離れることができる能力
    ②絶望することができる能力
    ③純粋性を感じることができる能力
    純粋性とは、
    以前よりも自分がしっくりいくという感覚
    この考えはどこか矛盾していると感じる直感
    より自分に近づいているという感性
    主観性への郷愁

    主観性からのプレゼント
    ①客観視能力の向上
    ②自立性、独立性の獲得
    ③自由であることの自覚
    ④身体機能の変化
    ⑤人との交流を楽しむ

    中枢神経の相転移
    精神の物質化
    大人の解釈
    主観と客観=運命

    「どうせ変えられないのなら、私はもう何をやってもいいのだ、と悟った私は運命から自由になる。自由になった私は、自分を好きなように変えはじめる。」

    重度の鬱でも患者の意向に従って薬は使わない。こういう精神科医もいたんですね。昔は薬もなかったし今よりはこういうタイプの医者も多かったのかもしれないけど、それにしてもこのスタンスはすごいと思う。


    ポイントは絶望なんだな。限界を知ることで超えてゆく。
     

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