紅茶と薔薇の日々: 森茉莉コレクション1食のエッセイ (ちくま文庫 も 9-9)

著者 :
制作 : 早川 茉莉 
  • 筑摩書房
3.43
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本棚登録 : 609
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480433800

作品紹介・あらすじ

天皇陛下のお菓子に洋食店の味、庭に実る木苺……森鴎外の娘にして無類の食いしん坊、森茉莉が描く懐かしく愛おしい美味の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 森茉莉氏の、全集未収録分や、ごく短いコラムなども含むエッセイ集。
    編者・早川茉莉氏がテーマ別にまとめたアンソロジーで、この『紅茶と薔薇の日々』は、「食」がテーマとなっている。

    森茉莉氏の作品は、小説を一冊読んだだけでした。
    エッセイには、退廃的な感じで自己陶酔なことが書かれているのかなあ…?と思っていたら、全くの誤解だった。
    とてもサバサバした人で、文章もユーモアのセンスにあふれていて、読みやすい。
    そして、好き嫌いがはっきりしていて、けっこう良く怒る(笑)

    1年間滞在した巴里がとてもお気に入りのようだ。
    驚くのが(何度も出てくる)、生牡蠣3打(ダース)!
    大好きだった、パッパこと森鴎外氏のことも何度も出てくる。
    1987年まで御存命だったので、私にも分かる話題もある。
    研ナオコと対談したら、「話し方が桃井かおりに似ている」と言われて喜び、今度もの真似してみようかしらなんて思ってみる可愛いところもあり。
    なんとか言う店で永井荷風を見かけたという新聞記者の情報で、弟といっしょにそのカフェに行ってみるというけっこうミーハーな一面もあったり。

    『紅茶と薔薇の日々』というのは、映画『酒と薔薇の日々』から取ったものだが、ひとり暮らしの部屋に好きなものばかりを集め、ボッチチェリ(の絵のような)薔薇の模様が入ったカップでお茶を飲み、コカコオラやベルモットの空壜(あきびん)には一輪ずつ薔薇の花が挿してある、という、森茉莉世界の象徴である。

    第一章 食いしん坊
    第二章 料理自慢
    第三章 思い出の味
    第四章 日常茶飯(ル・パン・ド・メナージュ)
    第五章 紅茶と薔薇の日々

  • タイトルの「紅茶と薔薇の日々」ではないが、読んでいる間、至福の時間を感じた。

    子供時代「週刊新潮」に連載されている「ドッキリチャンネル」を母が愛読しており、度々話題に出てきた。私としては圧倒的に辛口芸能人批評が好きだったのだが(文学少女だったはずなのに)、母は鴎外の茉莉さんへの溺愛ぶり、茉莉さんの爵さんへの溺愛ぶり、女友達の話、日常生活など、本当に毎週楽しみにしていたことが思い出される。
    認知症であるが読書を続けている母に、今度持って行こうかな。

    小さい頃、親の愛をしっかりと受け、贅沢な暮らしをしていたら、老年になり、一般的にいう孤独な生活、そんなに裕福ではない生活であったとしても、心豊かに過ごせるものなんだ。いいもの、美味しいものを知る、体験することの大事さを思う。
    プライド、矜持というものが、人間にとってはとても大事なものなんだと、これは今ふと思った。そういうものは親から大事に育てられたことによって、いやでも、強くない方がいいのかもしれないのに、身に備わってしまうものだと自分を振り返っても思う。

    1番印象的だったのは、新婚なのにご主人と離ればなれに暮らす寂しさをお父さんに手紙に書いた、その手紙への鴎外の返信。「柿の味の時は柿の味を楽しむのがいいのだが、梨の味の時には梨の味を楽しまなくてはいけない」という内容。今の私にも響く言葉となった。
    そして、菫の押し花が添えてあったというところで、ますますグッときてしまった。まだ少女のまま結婚した娘に対する父の思い、それを受け取った娘の気持ち。それを半世紀以上たっても忘れない娘の気持ち。

  • 面白かったです。森茉莉さんって本物のお嬢様だったのだな、箱入り娘で。父の溺愛ぶりもすごいです。登場する食べ物が、古風な言い回しと共にすごく美味しそうで素敵でした。同じエピソードが何度も登場したりしているのですが、それがますます強く印象に残ります。森茉莉さんの文章、好きです。食べるって大切。辛酸なめ子さんの解説も面白かったです。このシリーズ、読んでいきたいです。

  • 森鴎外の娘にして無類の食いしん坊、森茉莉が描く美味の世界は懐かしくて愛おしい。単行本未収録作品16編を含む珠玉の53作を編んだ絶味アンソロジー。
    一部内容がかぶっているものもあるが、それが気にならないほど面白い。切れ味鋭い、だけど愛するものに対しては大げさなくらい愛を込めて批評するその視線に気づけば虜になっていました。初めて森茉莉を読んだけど、ちっともはじめましてな感じがしない。なんて素敵で、なんて凛とした言葉たちだろう。こだわりが強いところ、食いしん坊なところ、かっとなりやすいところ、など似ているなぁと感じる点も多くて、同世代なら気が合う友達になれそうだなんておこがましい考えすら持ちました(笑)読むのがすごく楽しいぞ、この人。お父上より断然好きだ。色々他の著作も読んでみたい。

  • 何度読んでもうっとりする。今回は森茉莉の自己肯定感の高さに驚愕。やはり、溺愛されて育ったからなのだろうか。お料理の得意なイメージは本人が言う通り、全くない。だが、出てくるお料理はどれもこれもおいしそう。そして、何といっても、バタァ、ステェキ、サラドゥ、スウプといったレトロかつロマンチックなカタカナの優美さよ。赤毛のアンのミス・ラベンダーも好きだが、森茉莉はミス・ラベンダーよりも逞しいお嬢様。コカコオラを飲みながら、モイラの目で睨んだり、バカ音楽と罵ったり、ベットでお料理する。だけど、紅茶と薔薇の日々に出てくる、自己主張強めのロマンチック満載の部屋でひとり暮らしているのだ。私が目指すべきはここだな。改めて思う。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00587735

    両国の角力見物に欠かせない青々とした固めの枝豆、美味しいものでごはんを食べないと小説がうまく行かない、パッパがポケットに入れて持ち帰った天皇陛下のお菓子、愛すべき下北沢商店街の料理店「スコット」…森鴎外の娘にして無類の食いしん坊、森茉莉が描く美味の世界は懐かしくて愛おしい。単行本未収録作品16編を含む珠玉の53作を編んだ絶味アンソロジー。(出版社HPより)

  • 最初から最後まで食について丁寧に語られているエッセイだった。森茉莉という人物に興味があるというよりも、私にとっての理想たる、お嬢様とお嬢様の私生活とお嬢様の人生観が森茉莉の生き方に似ているのでは?と思って森茉莉の作品を追ったのだけれど、どうやら違ったらしい。森茉莉の作品は好きだけれど。自分の理想を思い描いた淑女って完璧で教養のある少女なのだと思った。恐らく、今の時代で現実には存在しないと思うのだけれど、自分の理想の淑女についてもっと明確にして行きたいなと思った。私は生粋の庶民だから実現する事は出来ないけど。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • タイトルが素敵。森鴎外の娘、森茉莉の食生活、私生活が見えてくるエッセイ集。父親から愛されて育った…知ってはいたけど、ほんとに溺愛されてたんだなあと伺えます。作中に出てくる料理にときめきます。コロッケのトマトジュース煮が気になる。

  • 食をテーマにした森茉莉エッセイ選集。独自の美学を持っていた方のようで、彼女の基準にそぐわないものには、けっこうな毒舌を発揮。自分自身にもわりと辛辣。独特の言い回しは慣れてくると癖になる。第一章から、食べてもいない料理に胃袋をつかまれた感じ。森鴎外の娘として、明治・大正・昭和を生きた日々の思い出と一緒に、自宅で作った料理、レストランの洋食、甘いものなどについて語られています。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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