絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434838

感想・レビュー・書評

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  • 絶望名言の著者、文学紹介者 頭木さんによる、アンソロジー

    自分の気に入った話は…

    ○車中のバナナ 山田太一
    ○瞳の奥の殺人 ウィリアム・アイリッシュ
    ○心中 川端康成
    ○ぼくは帰ってきた フランツ・カフカ
    ○ハッスルピノコ 手塚治虫


    ~絶望図書館 ご利用案内 より引用~

    この図書館は、「絶望的な物語」を集めてあるわけではありません。「絶望から立ち直るための物語」を集めているわけでもありません。絶望して、まだ当分、立ち直れそうもないとき、その長い「絶望の期間」をいかにして過ごすか?
    (中略)
    そういう物語との出会いは、それで何か解決されるわけではないのですが、しかしそれでも、命綱となることがあります。

    「本を読まないということは、そのひとが孤独でないという証拠である。」太宰治

    「本には、悲しんでいる人を助ける気持ちなんか、ちっともないとしても、本を読んでいる間は、ぼくは本にしっかりすがりついていられる。」フランツ・カフカ

  • 他のブクログユーザーさんがレビューを書いてくださりこの本の存在を知りました。
    『絶望名人カフカの人生論』の編訳者の頭木広樹さんが『絶望したときその心に寄り添ってくれるような物語』を集めたアンソロジー。

    絶望の種類によって章が分かれていて「人がこわい」「運命が受け入れられない」「家族に耐えられない」「よるべなくてせつない」の4章、古今東西の12編の短編が収められている。

    どれも誰もが覚えのある「絶望」だと思う。
    ただ、「絶望」って人によって姿形が違うと思うので、誰にでもフィットする気がしない。
    私には「寄り添ってくれる」ほどの近しい関係になれるような物語はなかったけど、読んでる間は軽い胃痛を忘れるほどには面白かった(笑)

    三田村信行さんの『おとうさんがいっぱい』
    大昔、オカルト本読んで、ドッペルゲンガーが一番怖かったことを思い出した。ラストはちょっと涙目。

    筒井康隆さんの『最悪の接触』
    恐怖と可笑しみ、でもやっぱり恐怖。
    なに考えてンだかまるっきり分からない‘他者’と一緒に暮らしたら?
    皮肉っぽいなー。ラスト一行に笑った。

    山田太一さんの『車中のバナナ』
    短いエッセイだが心に残る。
    このエッセイの言っていることが分からない人にはならないようにしたい。

    川端康成さんの『心中』
    うわーすごい、たった三ページでこれだけの世界が書けるとは!ショートショートの神様、星新一さんも「何べん生まれ変わったってこれだけは書けない」と書かれていたとか。

    最後に収められているのは手塚治虫さんの漫画『ブラックジャック/ハッスルピノコ』
    懐かしのブラックジャック、ピノコが切な辛い。

    あと気になっていたシャーリイ・ジャクスンも読めて良かった。

    最後にカフカの言葉が載せられている。

    本には、悲しんでいる人を助けるつもりなんかちっともないとしても、本を読んでいる間はぼくは本にしっかりすがりついていられる。

  • 著者、頭木弘樹さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    頭木 弘樹(かしらぎ ひろき、1964年(昭和39年) -)は、文学紹介者。カフカやゲーテの翻訳もある。

    筑波大学卒業。大学3年の20歳のときに潰瘍性大腸炎を発病し、13年間の闘病生活を送る。そのときにカフカの言葉が救いとなった経験から、2011年に『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社)を出版。以後、さまざまな本を執筆している。

    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    この図書館は、
    「絶望的な物語」を集めてあるわけではありません。
    「絶望から立ち直るための物語」を集めてあるわけでもありません。

    絶望して、まだ当分、立ち直れそうもないとき、その長い「絶望の期間」をいかにして過ごすか?
    そういうときに、ぜひふらりと館内に入ってきてみていただきたいのです。
    ここには世界中からさまざまなジャンルの物語が集めてあります。
    児童文学、SF、ミステリー、エッセイ、口承文学、現代文学、日本文学、海外文学、マンガ……。
    古今東西から、これぞという作品を選りすぐってあります。
    絶望的な話もあれば、笑える話もありますし、せつない話、とんでもない話、どきりとする話など、さまざまです。
    しかし、どれもすべて、絶望した気持ちに寄りそってくれるものばかりです。
    今の気持ちにぴったりな、心にしみる物語がきっと見つかるはず。

    この中では、山田太一「車中のバナナ」が、良いとの声が多いようです。

  • あまり私には合わないかなと読み終えてからの感想だったのが解説を読んでみて変わった。解説から読んでみたら気づかなかった視点から読書出来たのではと。解説が1番楽しく読めた。

  • 明らかなタイトル買い。
    でも、オビのラインナップ見ていたらワクワクして、手に取らずにいられなかった。

    こんな絶望を感じている人に、という処方箋的なイントロダクションもなかなか素敵。

    人に受け入れられない絶望に。
    三田村信行「おとうさんがいっぱい」
    なんてネーミング。なんたるシュール。

    山田太一「車中のバナナ」はめっちゃ共感。
    受け入れることが前提の思いやり、というのだろうか。車中でおもむろに渡されたバナナ。
    何故食べないの?受け入れられないの?
    結構です、と言える決定権がどうして自分にないんだろう、と確かに不思議になる。

    ウィリアム・アイリッシュ「瞳の奥の殺人」
    これ。なんとなく結末読めるけど、ハラハラ。
    おばあちゃん、がんばれ!
    おばあちゃん、負けるな!

    安部公房「鞄」は元々好きな作品。
    人生の選択肢が限られているという絶望に。
    なるほどね。

    川端康成「心中」も短いけれど、なんかどの角度から照らしても、切なくて鋭い。
    家族の音。
    一緒に暮らしていると、足音でも誰か分かる。
    それを想像することが出来る。
    イライラすることも確かにある。
    でも、静寂が良いとは限らない。

    ラスト。
    手塚治虫「ハッスルピノコ」
    あー。昔、ブラックジャックめっちゃ読んだな。
    書かれたくない部分こそ、丁寧に掬いあげられているというか、ブラックジャックの表情に、苦しくなったこと、確かにある。

    どれを読んでも味わいがあって、こういう完成度の高いアンソロジーは是非薦めたくなる!

  • 『虫の話』が強烈に印象に残った。
    無理に不幸な方に話を進めているわけじゃなく、誰だってこうなるかもしれないと思わされた。

    絶望に寄り添う話だとわかっていると、どれも気張らずに読めるような気がした。

  • 頭木弘樹さん編のアンソロジー。たいへん粒ぞろいだった。

    筒井康隆「最悪の接触」
    話の通じない話を書いたら、究極の、ぶっとんだ断絶を味わわせてくれる筒井康隆。あまりにもその断絶ぶりが激しくて、声を立てて笑ってしまった。

    山田太一「車中のバナナ」
    『食べることと出すこと』でも紹介されていたエッセイ。
    視点の鋭さに感嘆する。

    アイリッシュ「瞳の奥の殺人」
    これはたしかに絶望だわ。わかっているのにどうにも阻止できない……後半の展開よかった。

    安部公房「鞄」
    頭木さんがあとがきで「学校では『著者はどういうことを考えて、この作品を書いたでしょう?』というような読み方を習いますが、そんなことはむしろどうでもいいことで、自分にとってその作品がどう心に響くかということのほうが、よほど重要です」と書いていて、ほんとうにそうだなと思った。

    李清俊(イ・チョンジュン)「虫の話」
    この作品がいちばん絶望が深かった。また宗教というものの、欺瞞性のようなものも描かれていて、はじめから終わりまで慄然となる短編でした。

    シャーリイ・ジャクスン「すてきな他人」
    これ、ほんとうはどうなんだろう? でもきっとそんなことは関係ないんだ。なんとも深淵をのぞく物語。

    ほかの作品も、頭木さんの解説も、一様に充実していて読みごたえがありました。

  • 「絶望」という響きにはどうしてか弱く、それだけでついつい手に取ってしまいます。底知れない甘やかさと危うさが内包されているような気がして、壊れ物を扱うように大切にしたい感情のひとつです。
    本書はそんな絶望感に寄り添ってくれるような物語を、というコンセプトで編まれたアンソロジーだそうです。
    悩みの種類ごとに細分化されており、絶望のソムリエみたいで魅力的な構成でした。純文学、ミステリー、SF、エッセイ、漫画等々、ジャンルも国境も超えるバラエティ豊かな文章が集められています。
    普段ならまず読まないようなものにも触れることができ、その新鮮な驚きと良さを知れただけでもとても大きな収穫でした。

    「最悪の接触」筒井康隆
    いつか読んでみたいと思っていた筒井康隆作品。思っていたより読みやすく、宇宙人との共同生活実験という不条理な設定もわりにすんなり入り込めた。ほかの小説もすぐ読んでみたい。

    「瞳の奥の殺人」ウィリアム・アイリッシュ
    息子が嫁に殺されてしまう計画を知りつつも、見てることしかできない老婆の話。単純にミステリーとして面白かった。

    「虫の話」李清俊
    中国文学。幼い息子を誘拐殺人によって失ってしまった母親の苦悩と葛藤が、夫の目線から綴られていく。とても苦しい話だった。信仰と、海容。赦すことを許されていないって想像を絶する永遠の暗闇だ。

    「すてきな他人」シャーリィ・ジャクスン
    出張から帰ってきた夫は、夫にそっくりな他人だった!妻の発想は頭がいかれてるとしか思えないようなものだが、でもこの感覚はとても分かる。カプグラ症候群というらしい。でも「他人である」というのは夫婦関係においてこれ以上ないほどすてきな事実じゃなかろうか。そう、本物の夫だって、正真正銘の他人なのだ。

    「ぼくは帰ってきた」フランツ・カフカ
    なつかしい、という感情とはちがう。違和感。これもよく分かる。そこにあるひとつひとつのものが、どれもよそよそしく感じられる。自分の知らない仕事に没頭していて、それらのものたちにとって自分は一体何の役に立つというのだろうか、という置いてけぼり感。
    その言葉にできない違和感を、ここまで端的に美しく言葉にするのはすごい、カフカ。

    冒頭におかれた太宰の言葉も、大好きな一文です。
    絶望や孤独は、私たちに物語の素晴らしさを教えてくれるある種の燃料でもある。その点においては幸福だと言い切ってしまいたい。
    本を読まなくても済む人はもちろんそれで問題ないが、私は、現実の実際的な絶望をかみしめながら読書に没頭し本に救われることが何よりも好きなのだ。
    自分だけの絶望図書館があったらなにを配架するだろう?考えただけでワクワクする。

  • 別に絶望してるわけではないんだが、タイトルに惹かれて図書館で借りてきた。物語はどれも太陽のような陽射しは当たらず、絶望のままだったり、何も解決しなかったり。

    本の最初にはこんな言葉が記されていた。
    「本を読まないということは、そのひとが孤独でないという証拠である。 太宰治」
    本の最後にはこんな言葉が記されていた。
    「本には、悲しんでいる人を助ける気持ちなんか、ちっともないとしても、本を読んでいる間は、ぼくは本にしっかりすがりついていられる。 フランツ・カフカ」
    活字を経由して物語の中の人たちが、頭の中で動き、心を揺るがす。それが決して楽しい物語でなくても、いやむしろ辛い、悲しい、苦しいからこそ、心にぴったりと寄り添ってくれるのかもしれない、と読みながら思った。

    もし私が本屋さんとか図書館をやるとしたら、アンソロジーの棚をひとつ作りたい。誰かが誰かの物語を選んで編んだ本。選んだ誰かと、何人もの作者の頭の中を覗ける楽しさ。

  • 自分では選ばないような本が紹介されていて興味深かった。
    「車中バナナ」がすごく印象に残っていて共感できた。
    もし自分がそこにいたら、きっと食べてしまうかな。
    でも、食べない人がいてもさらっと流せる人になりたい。
    最低限のモラルは必要だけど、いろんな人がいて、いろんな考えがあってそれが当たり前に受け入れられる社会になったらいいな。

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著者プロフィール

頭木 弘樹(かしらぎ・ひろき):文学紹介者。筑波大学卒。大学三年の二十歳のときに難病になり、十三年間の闘病生活を送る。そのときにカフカの言葉が救いとなった経験から、2011年『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社/新潮文庫)を編訳、10万部以上のヒットとなる。さらに『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ 文豪の名言対決』(草思社文庫)、『ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟』(春秋社)を編訳。著書に『食べることと出すこと』(医学書院)、『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』(ちくま文庫)、『絶望読書』(河出文庫)、『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』(春秋社)、『自分疲れ』(創元社)。ラジオ番組の書籍化に『NHKラジオ深夜便 絶望名言』(飛鳥新社)。名言集に『366日 文学の名言』(共著、三才ブックス)。編者を務めたアンソロジーに『絶望図書館』『トラウマ文学館』(共にちくま文庫)、『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』(河出書房新社)、『ひきこもり図書館』(毎日新聞出版)がある。NHK「ラジオ深夜便」の『絶望名言』のコーナーに出演中。日本文藝家協会、日本うんこ文化学会会員。

「2023年 『うんこ文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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