僕らの憲法学: 「使い方」教えます (ちくまプリマー新書 75)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687760

感想・レビュー・書評

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  • 2008年刊。著者は専修大学法学部教授。◆徹頭徹尾憲法の成立目的たる立憲主義を解説した本。◇とりあえず、手っ取り早く立憲主義を知りたい人は、本書を読むと、時間がかからずそれなりに理解できる点で良いかも。しかる後、本書列挙の「本書以降の参照文献」や「その他の憲法概説書」に向かうと良いのでは…。◇高校生対象というレビューもあるが、読書力のある中学生でも十分読めるくらいに簡明な叙述に落とし込んでいるのは実に得難い。◆確信犯的改憲論者が読むと怒髪天になりそうな内容かもしれないが、これが憲法の成立目的である。
    逆説的に、本書の内容に怒る政治家が、本音の部分で何を考えているか。本書を読破すればそれを容易に推測できるはず。

  • 「憲法」という立場から、法律、冤罪、戦争、自衛を改めて包括的に考える事が出来た。著者の、国民と公権力の緊迫した攻防を楽しむものとして憲法を挙げている姿勢が終始伝わってきた。柏崎出身で憲法学者とは面白い経歴だと思う。

  • 勉強になりました。

  • 「緊迫した攻防」ということばに惹かれる。
    公権力と主権者である国民の間に悪い意味で馴れ合いがあるので、緊迫した関係は残念ながら作れていない。
    それは主権者の責任であることはわかるのだが・・

  • 憲法の初歩の初歩から、憲法学への橋渡し。公民の教科書のような内容ではなく、憲法学の基礎といった感じ。以下内容。

    そもそも憲法とは、公権力の暴走から国民の権利を守るために存在しているものである。我々は公権力を国民の味方だと思い込みがちであるがそれは違う。公権力は一般市民が持ち得ない強い力、他者の人権を侵害してもなおそれを正当化してしまう可能性をもっており、歴史を振り返ってみても公権力が国民の敵となったことは数えきれない。だからこそ、我々国民と公権力は「緊迫した攻防」を繰り広げるべきであり、それを司る基準となるのが憲法である。立憲主義の根本を分かりやすく説明。
    二重の基準論にも言及。憲法の特質上、特に守るべきものとされるのが自由権であるということ。また、憲法が前提とするのは「強い個人」であるということ。民主主義が最も大切にする多数決と立憲主義の対立についても軽く触れる。多数決は諸刃の剣である。多数決に支えられた公権力も、危険な存在となりかねない。しかし、誇り高き1%になることを恐れない。その1%を守るのが我々の日本国憲法であるのだから。
    強く、判断力のある国民と、自覚ある公権力がマッチした時に、しなやかで本物の立権主義が完成される。

    最近遠ざかっていた憲法の感覚を取り戻すために読んだが、思っていたよりも自身が触れたことのある憲法学とこの本の著者の考え方が合致していて嬉しかった。自分に欠けていたと思わされたのは、国民、公権力、ひいては国家を理想的に作り上げるのは主権者たる国民ひとりひとりであるという責任の考え方。もっともっと憲法学についてこれから自分の知識、理解を深めていきたいと思った。

  • 学校の「社会」の授業では詳しく教えてくれない憲法の本当の姿を再確認しようよ!といった感じ。
    著者が冒頭から末尾まで一貫して主張するのが「緊迫した攻防」を繰り広げることの必要性。公権力への抑止といった、本来憲法が持つべき力を効果的に発揮させるためにも、ぼくら一人一人が小さくも大きな力で、その運用に目を光らせなければならないんだよ、と。

    世論に流されがちな日本においては、憲法改正うんぬんの前に、まずは前提としての理解から始めましょうかね。

  • [ 内容 ]
    憲法は大切?
    新しい憲法が必要?
    でも、肝心なことを忘れていませんか?
    憲法は、僕たち一人ひとりが「使う」もの!
    著者目線で考える等身大の新しい憲法論。

    [ 目次 ]
    序 たくさん憲法について学んでも、肝心なことは教わっていない!
    第1章 憲法の楽しみ方教えます!-「緊迫した攻防」のルール
    第2章 国家が敵になるとき-目の前で痴漢が捕まったら
    第3章 憲法の使い方-国民ができること・すべきこと
    第4章 憲法の人間像-僕たちはどうあるべきか
    終章 九条改正を考えよう!-一八歳、国民投票に向けて

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 憲法とは何か、再確認。本文もわかりやすく素敵ですが、巻末の参考文献紹介が実にありがたい。

  • 公権力の危険性を認識し,立憲主義と民主主義を武器に,公権力と国民との間に「緊迫した攻防」を実現すること。そのためには,「ものすごく強い」人間を前提とすること。検察という公権力側に居る自分を相対化するのに最適な一冊だった。しかし,立憲主義がこの国に根付く日は来るのだろうか。何らかの日本的変容が不可避なのかもしれない。それが立憲主義の核心を損なわないものであれば良いのだけれど。

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著者プロフィール

1982年生まれ
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)
現在 北海道大学文学研究院専門研究員

■主要論文
「イギリス奴隷貿易廃止運動史研究の射程:「ウィリアムズ理論」、「モラル資本」論をこえて」(『北大史学』50号、2010年).
「イギリス奴隷解放論の歴史的形成:リヴァプールにおける「反」奴隷解放運動(1788~93年)」(『西洋史学』251号、2013年).
「18世紀イギリス奴隷解放論争に見る人権理念と自由概念:リヴァプールの法曹ロスコーと書籍商ラシュトンの表現活動を手がかりに」(『北大史学』58号、2018年).

「2021年 『人権論の光と影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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