進化論の5つの謎: いかにして人間になるか (ちくまプリマー新書 88)
- 筑摩書房 (2008年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480687876
作品紹介・あらすじ
「進化する」とは、いったいどういうことか?そもそも最初の細胞は、物質からどうやって発生したのか?多細胞生物はどのように出現したのか?大分類はどのように生じたのか?意識とは?理性とは?5つの謎に挑み、いかに生きるかを考える。
感想・レビュー・書評
-
メルロ=ポンティやドゥルーズの思想にかんする独創的な入門書を執筆している著者が、進化論にふくまれる問題についての哲学的な考察を展開している本です。
前半では、本書のタイトルにもなっている進化論の5つの謎が提出されています。「そもそも原始細胞はどうやって発生したのか」「多細胞生物の出現」「生物の大分類はどのようにして生じたのか」「意識というものがなぜ出現したのか」「理性は進化の結果であるといえるのか」というのがその問題ですが、いずれも進化論が実証可能な科学的仮説ではなく歴史についての説明であるというところに問題が帰着させられることになります。
後半に入ると、進化論それ自体が、進化の結果獲得された人間理性の働きの結果だということにもとづいて、「進化が本当であれば理論としての進化論が生じるはずがなく、進化論が正しいとすれば「進化」とされているものは真理ではない」というパラドクスが提出されます。そしてここから、ニーチェの理性批判やドゥルーズの生命哲学へと議論を引っ張っていきます。こちらの議論はおもしろく読むことができました。
進化論についての哲学的考察というべき内容ですが、本書を中高生向けのレーベルである「ちくまプリマ―新書」で刊行するというのは暴挙というほかありません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いかに科学的実証主義が哲学的発想を駆逐し、哲学でないものを哲学であるかのように語られるようになったのかという観点から進化論周辺の議論や、そこに潜む科学の誤謬を指摘するという内容だった気がする。
-
勉強になりました。
-
日本人であることの利点は、ヨーロッパ人が考えたことのうち、思いこみや宗教的信念などの<思考>を、<事実や理論>から比較的自由に分離できること。そう語る著者による、「進化論」論。
本書で著者は、「進化論」は、壮大な思想体系とされたヘーゲルの歴史観や、人々の政治的実践に大きな影響を残したマルクスの歴史観に匹敵するほどの<思想>である、と述べている。<思想>であるということが意味するのは、それは<自然科学>ではない、ということだ。この立場から著者は、「自然は、必然的に調和に向かうような、完結した場所ではない」と述べ、やや唐突ながら、「自然における調和は、一時的で部分的な現象、もっといえば<祈り>のようなものに過ぎない」と続ける。
自然の調和とは<祈り>でしかない。東日本大震災を経験した我われには、あまりに重い言葉だ。 -
進化論については、どうしても人間の意図が様々な形で紛れ込んでしまうということだけは覚えておこう。
-
進化論は科学なのか?優生学との関係は?とか、いろいろと書きにくいことを非常に簡単にまとめてあって、簡単なのでもの足りない感じもするんだけれど、新書的には品質は高いと思いました。でもアマゾンの書評はそうでもないみたい。5つの謎ってのはキャッチーなタイトルにしたかったからもってきたもので、読み終わっても何が謎だったのか覚えてないのは弱点かも。たとえば28この謎って書いてあっても別に良かったよね。いろいろと発想するにはよい本だと思います。
-
進化の捉え方の哲学的な思考。