男の子のための軍隊学習のススメ (ちくまプリマー新書 89)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 69
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687890

作品紹介・あらすじ

時代の空気、格差とイジメ、男と女。軍隊小説には、人生における全ての悲喜劇が凝縮されている。現代の男の子(と女の子)に日本と日本人の姿を問いかけるわが帝国軍隊をめぐる波瀾万丈の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ホモソーシャルの源? エリート男子・女子を結んだもの:朝日新聞デジタル
    https://www.asahi.com/articles/ASP6V6W84P6JUPQJ00M.html

    筑摩書房 PR誌ちくま 2008年9月号 軍隊小説、我が青春  高田里惠子
    https://www.chikumashobo.co.jp/pr_chikuma/0809/080905.jsp

    筑摩書房 男の子のための軍隊学習のススメ / 高田 里惠子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480687890/

  • 組織体制が滅茶苦茶な日本の軍隊、要は階級とは別に在軍年数の序列(年功序列)があり、これが巾をきかせていた。反戦本ではないとしながらも、これだけで充分に戦争は嫌な状況。

    美化されがちな海軍にも陸軍同様シゴキと称するリンチがあった。また、中曽根元首相は主計科士官だったが、これは大卒が比較的お手軽に士官になれる「短現」と呼ばれる制度の為、その仔細も。
    書籍内で大西巨人の「神聖喜劇」を大プッシュされ、漫画で読むきっかけとなる。

    <その他の書籍紹介>
    https://jtaniguchi.com/tag/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e7%b4%b9%e4%bb%8b/

  • 910

    読者層は(中)高生男子をターゲットに、軍隊小説を100倍楽しんで読む方法を解説してくれてます。
    私は中年のおばさんだけど、軍隊小説を読むことはほとんどなかったにせよ、面白かったです。陸軍・海軍の気質の違いや、エリート東大生たちだって屈辱的な身体検査を受けたとか、隊の中での序列ややこしいとか、隊にいながらにしてのらりくらりとし、生きて帰ると心に決めた者だっていたことや、女情男子、わだつみ像の彫刻について等。
    戦時のドラマを見る時にも、クスリと笑える裏ネタとかになってくれそう。


    軍事小説は読まないけど、
    司馬遼太郎の『坂の上の雲』や、妹尾河童の『少年H』、歴史とは関係ないけど有川浩の『図書館戦争』やら思い出しながら読みました。

  •  タイトルから内容が分かりにくいが、冒頭を読めば「この本の正体」として、その内容が書かれている。要するに、「日本の軍隊や兵士をテーマにした小説や体験記」を「百倍楽しむ法」(p.9)について解説したもの。具体的には、帝国軍隊に入隊するまでにどのような過程があるのか(徴兵なのか志願なのか、入隊検査と甲乙丙)、入ってからのルート(二等兵なのか、下士官なのか、将校なのか)といったことについて、多くの作品を引用しながら、解説したもの。巻末には詳しい軍隊小説のリストも、詳しい参考文献とともに載せてある。
     あくまで文学作品を読むための解説であって、著者自身の思想的なことが書かれている訳ではなく、基本的には中立の立場で書かれている。そもそも軍隊小説を読んだこともなければ、旧軍についての本も読んだことがなく、新鮮だった。さらに想定される読者は思春期の高校生、ということで、著者の語り口が軽妙で面白く読めた。
     「陸軍内の序列そのものが二本立て」(p.48)、つまり「階級系統」と「敬老系統」というのは、陸軍だけでなく、似たような二本立ての序列は他の多くの職場でありそうだ。「若いころは、特に『みんなのなかでいちばん若い』ときには、誰かに叱られても、軽んじられても、甘えても、それなりに恰好がつくのですが、年をとると、そうはいかない。ある程度は敬意を払ってもらわないと、居心地が悪くなってしまうというのは、けっこう辛いものです」(p.62)という老初年兵の話の所で、妙に納得してしまった。おれももう30になって、確かに仕事失敗してすみませーん、という年齢ではないなあ、と思う。「無事、有能な若者を元の職場に戻すこと」(p.119)を目指した海軍の「短現」制度というのがあるのは興味深いと思った。結構面白い本だったので、同著者の他の本も読んでみたいと思った。(14/10/05)


     2021年4月中頃に再読。というか本当に読んだ記憶がなく、booklogで感想を書こうと思ったら「既に本棚に登録済み」で、ちゃんと感想も書いていてびっくりした。結構個性的な本なのに全く読んだ記憶がないなんて…。
     2回目に読んだ感想で、納得したところは、「職業軍人とは教育者である」(p.32)という、教育社会学者の佐藤さんの言葉。「戦争でも起こらなければ軍人は訓練、検閲、演習、講評といった『教育活動』で生涯を終えることが通常であった」(同)という部分は、確かにそうだよなあと思った。あとは「日本とヨーロッパの軍人の違い」という部分。「ヨーロッパでは職業軍人の将校は貴族的伝統をもち、社会の上層部の出身者だったことです。」(p.42)という部分。日本の独自性を感じたが、これはアジア全体ということではどうなんだろう、と思った。あとは『魂の試される時』という小説があるそうだが、この題名の意味するところは筆者によればこれは「自分の卑しさとか狡さとかがモロに出てしまったというような、イヤな体験の思い出のこと」(p.51)らしい。魂、とまではいかないけど、あるんだろうな、こういう時、と思う。最後に明治から昭和にかけての「天皇制神話」について。哲学者の久野氏によれば「民衆にとっての天皇制神話は、教義が誰にでもわかるという意味で『顕教』(もしくは『たてまえ』で)であり、統治エリートにとっては『密教』(もしくは国家運営のための『申し合わせ』)であった、と説明しています。」(p.85)の部分、分かりやすかった。そして「『顕教』信奉者の帝国陸軍は、もともと『国民大衆』には近しい存在だったと言えるでしょう。神たる天皇の前では、すべての臣民が平等であるという『たてまえ』のもとで、社会的地位や学歴がチャラにされる陸軍の原則は、『国民大衆』の支持を得ました。」(同)ということだ。最近、録画してずっとHDに残っていた「100分で名著」というNHKの番組の松本清張特集で、『神々の乱心』という松本清張の遺作の紹介を見て、すごい興味をそそられたが、それにも通じるものなのかな、と思った。(21/04)

  • 勉強になりました。

  • 内務班小説のススメ

  • 日本の軍隊は欧米のように実社会の階層が反映されなかった。実社会での地位や階層はおおかた無視される。筆者はそれを「真空地帯」と呼ぶ。
    徴兵検査ではアナルまでほじくられ、権威ある東大の学者が軍隊序列の最下級に遇され、田舎出の下士官にぶんなぐられる。本書は「丸山をぶちのめしたい、戦争は希望なんだ」と訴えた赤木論文の大本をわかりやすく教えてくれる。

    心理学者によれば、トラウマは自己の努力だけでは語ることができない。ゆえに従軍記や動員された知識人たちが戦後に書いた物には語られなかったこと、「格好つけてる」部分がある。その部分を真に受けず、「語ることができなかったこと」を念頭に読もう。まんま小熊英二が「<民主>と<愛国>」で言っていたことをさらっと使ってる。「格好つけた部分」を「真に受ける」ことも、学ぶ観点からは大事なことだと思うけど、まあそれはこの本のポイントではない。男性学した男性学。

  • アブダビ行きのエティハド航空の機内でショスタコの弦楽四重奏2番を聞きながら書いている。
    本書は私にとってはじめての高田里恵子の著書となった。軍隊経験者の文筆家の紹介を通じて、いわばミクロの視点から戦争の側面を描いたものだ。政治と政策の面だけでなく、一人ひとりがおかれた境遇の面も想像しながら当時を思うことは、あまりなかった。引用された描写には、滑稽さ、皮肉、あわれさ、悲しみ、威厳、武勇伝、都市と田舎のあらゆる差、学歴の差が入り混じっている。正統派的でないかもしれないこの新書から、多くの持つべき視点を与えてくれる。外国との戦争に加えて、社会階層、地域、軍隊の階級の戦いがあったのだ。

  • 「学歴・階級・軍隊」と類似した内容をくだけた感じで書きつづったもの。まとまりはないが、まとめないのが著者の狙いなのかも。
     まとめてしまうと見えなくなってしまう部分をあえてまとめないことで見せようとしているのかもしれない。それはそれで一つのやり方で、間違えではないように思える。

  • 軍隊小説が語る戦争・政治・兵器という『モチーフ』だけでなく、戦中または戦前から戦後にまたがる人間の孤独とジレンマを説いていく『文学のススメ』にもなっていると思う。この著者の趣味が多分に含まれているような気がするし、『軍事・戦争』小説を読み解く上での最低限の知識はここにはない(知識に関しては主に『軍隊』小説にのみ言及しているように思われる)。逆に言えば『軍隊』を描いた物語を読む入門書として読むべき本だ。

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