- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480689016
感想・レビュー・書評
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日本語を表記するため漢字を用いたことから、日本語は漢字を通して中国語の影響を受け、中国語由来の日本語「漢語」が生まれる。また漢語に和語をつきあわせるためにルビをふったりすることは、昔から相当自由に行われていたのであり、夏目漱石が多用する自由なルビもその流れの中のことで特別なことではない。考えてみれば今でも外来語(「コンプライアンス」とか)に和語・漢語のルビを振ったりすることはよくある。
言葉と文字の関係について誠実に研究してきた著者の日本語を見る目はユニーク。語り口が慎重すぎてわかりづらくなっているところもあるが、昨今の雑で乱暴な論の展開が多い新書の世界にあっては、むしろ好感がもてる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書き言葉としての日本語の成立過程。説明が丁寧でいいな。『百年前の日本語―書きことばが揺れた時代』(岩波新書)と同じ著者なのね。
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日本語は4種類の文字を使用していると小学校の時に教えられた。
漢字、ひらがな、カタカナ、アラビア数字の4つだ。現在だとアルファベットも、これに入るかも。
なかで漢字は特別で、日本語は最初漢字のみで表記されていた。今では考えられないけど、表音文字として利用されていた。万葉集が確かにそうだもんね。これが中国語の字義と近しかったりすると漢語として日本語になっていったのだそうな。逆に表意的に運用されて根付いた語もあるわけだ。
漢字を使うことで中国語から日本語へことばが流入したが、逆もあったらしい。やまとことばの「おおね」に「大根」をあてたので「だいこん」。つまり大根は漢語ではないわけだ。
漢字の使われ方を古今の漢字辞書を通して、丁寧に解説している。無理に結論づけないところも清潔だ。
ゆったりとした文章の運びをする著者の生年を見て驚いた。自分と同じである。己の乱暴な文章が情けなく思えた。 -
勉強になりました。
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漢字しかなかった時代の『万葉集』から
中国語との接触と漢字の受け入れられ方、
平安時代の漢和辞書『和名類聚抄』、
さらに後の『類聚名義抄』などの漢字辞書をくわしくみることで、
日本語が中国語をどのように漢語としてとりいれたか、
そしてそれ以降、漢字かな混じりの文体が
どのように多様化してきたかが述べられ、
最後の「現代」の部分の問題提起
(常用漢字表、名付けや地名についてなど)につなげられている。
言語によって世界の切りとり方が違うことと翻訳可能性について、
また、言葉の流入は文化の流入の問題でもあること、など、
日本語だけでなく ひろく言語について考えるうえで
大切なことがらに少しずつだがふれられている。
私自身もぐいぐい読めるというほどではなかったから、
中高生が読むとなるとけっこうきびしいかもしれない。
でも、古い時代のことを研究する心構えや態度を
噛んで含めるように説明してくれるあたり、
そして慎重でていねいな議論の運びは、
めんどくさくて読み飛ばしたくなるところをこらえて
じっくり読むのもまた勉強。
日本語について散発する「美しい日本語、正しい日本語」論や
「漢字廃止論」の適正な着地点を考える参考にもなる。