本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書 235)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689399

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄で古本屋を一人で営んでいる女性のそのお店にまつわる本。

    沖縄の商店街の古本屋が閉店するのを聞き、新刊書店に勤めていた筆者が会社を辞め、その古本屋を引き継ぐ。

    客観的に聞くと、筆者は決断力、行動力も非常にあるように見えるが、この本からは、淡々と、自分がやりたいことに素直に実直に従っていたら、このような結果となったというようなニュアンスで。この安定感のあるスタンスが、芯が感じられ安心できる。
    これは本屋さんのスタンスとしても同様なのだろう、色々な古本屋仲間が助けてくれているようだ。

    また、商店街の中の小さな古本屋なのにもかかわらず、自分の生活を成り立たせている利益をあげている。これは商店街という立地(観光客がたくさん来る)と、沖縄ならではの沖縄本の収集(強み、ニッチ産業的なアプローチ)が合致して、ここでしか買えない沖縄本を観光客が買えるというところにあるのでしょう。

    また、本文内にあるように本を売ってくれる70代世代の沖縄の方々との交流もあるように、地元の人との交流も確かにあることが大きい。

    出版不況、電子書店の台頭という中で、新刊販売のリアル書店(特に小さい書店)は苦境に立たされている。
    自ら本を買い取り、自分で値付けして売る、売れなくても本は返品できない、いつでも自分が売りたい本が揃えられる訳ではない、と一見新刊書店と比べると不利な古本屋も、その本屋なりの特色を出すということは、新刊書店よりも勝った部分である。

    大きく状況が変わり、苦境にたっているからこそ、その生き残りの戦略の中に新しい価値がうまれるのだと思った。

    この作者は自分の実施いしてることをビジネス本のように高らかに講釈するのではなく、自分のやっていることを実直に報告している形式なので、非常に読みやすい。

  • 読んだ後、自分の街の本屋さんに行き、本を買いに行こうと、思った。

    元じゅんく堂書店員が沖縄で狭小の古本屋を開いた。沖縄の本を専門に扱う古本屋。

    なぜ沖縄で、沖縄の本専門の古本屋なのか。
    沖縄の歴史的な背景からも独自の出発文化がつくられてきた。地域にあるもの、地域に生きる人が多様であるならば、本、本と人が会う場も多様。
    沖縄の本を沖縄の人、沖縄に来る人に届けていきたいと開いた古本屋さん。
    図書館、新刊書店も本のある世界をつくる機能として大切だと考えてるところが素敵でした。
    全国一律の超大型書店の対極にある世界で、本と人が出会う場をつくっている。
    応援したい!

    自分が本屋、図書館、古本屋になりたい、そこでプロになりたいのではなく、それらの本と人が出会う機能、
    担う人を応援してたい、中間支援の立場をとっていたいのだなぁと思った。

  • 沖縄の市場で小さな古本屋を営む著者のエッセイ。
    以前ボーダーインクから出版された本は古本屋になるまでのことを多く語っていたけれど、こちらはおもに古本屋として板についてきた日々が描かれていて、より落ち着いたやさしい語り口で、本を大切にしている気持ちが伝わってくる。

    「沖縄の人には、自分たちのために書かれた本がこんなにある」

    沖縄で本屋をする、ということがとてもうらやましく思える言葉だと思う。

  • 「本屋になりたい」宇田智子。

    ジュンク堂書店の社員だった著者が、那覇支店に勤めて、そのまま沖縄で退社して小さな古本屋を始める。

    そんな著者の日常、愚痴、考えること、古本屋の仕組み、新刊本屋の仕組み、などなどが綴られます。宇田さんという方が徹底して非常に謙虚で文章にもそれが現れ、僕は好感を持ちました。
    「ドーダ」感や、「結局自慢かよ」感が、ほぼありません。(この自意識コントロールはなかなかなものです。意外と難しい)
     ご自分で本を出したときの感慨や、イラストを高野文子さんにダメ元で依頼した気持ちなど、謙虚なのに文章は活き活きしています。素敵な作家さんだな、と。その後どうされてるのか分かりませんが。

  • 大型新刊書店から、「日本一狭い」古書店に転身。
    沖縄で生まれた本を沖縄で売る。
    日本中、世界中の人を対象に書かれた本もあれば、沖縄の人に読まれるための本もまたたくさんある。
    沖縄には個性的な出版社が多いこと、独特の売り方があることも歴史を通じて知れば興味深い。
    一人店主の書店だけど、みんなに支えられて。
    新刊書店や図書館、ほかの古書店はライバルではなくて、互いに必要な部分を補完し合う存在。
    店をオープンしたての頃、商店街の方々に助けてもらった経験や、古書店組合の場でほかの店主に教えてもらいながらの仕入れなど。

    買い取りに行って、品揃えが変わる。
    並べ方を変えたばかりの本が、売れる。
    売れたらまた、棚の並べ方が変わる。
    本を通じていろんな人と対話する、何かに関わり続ける、素敵な本だなーと思いました。

  • 文体が柔らかくて優しい。
    個人的には、本との関わり方における著者のスタンスにとても共感できる。

  • 古本屋に行くのが、ルーティンになっている僕には
    とても興味深く読めた。
    でも、この本は、近所の図書館で借りて読みました。
    本との出会いは、いつ訪れるかわからない。

  • 著者は、沖縄の第一牧志公設市場前で小さな古本屋を営む方。

    書かれているのは、なぜ古本屋を始めたのか、どういう店づくりをしたいと思っているのか、本をとりまく環境のことなど。
    大きな野望や、強烈な主張があるわけではないが、静かに、でも熱く「本を通じて自分ができることは何か」を語っている。


    自信満々ではない。たぶん、(色々な意味で)まだ迷いの只中にあるのだろう。
    でも、この人は、やっぱり本とのかかわりの中で生きていく人なんだろうな、と思う。

  • 感想
    本を売る。書いた人がいて、運んだ人がいて、買ってくれる人がいる。当たり前だけどみんなに支えられないと本屋はできない。感謝を忘れず。

  • (借.新宿区立図書館)
    大型書店の書店員を辞め、那覇の市場(商店街)で小さな古本屋を開いた話。以前から気にはなっていたので文庫で増補版が出たのを機会に読んでみた。(と思ったら、新宿区立のは以前のプリマー新書版だった)
    著者が比較的若い女性であること、開店した場所が人通りの多いところ、沖縄本メインというあたりが特徴。プリマー新書が若い人向けということもあり新刊書店と古書店や本の流通などわかりやすく書いてある。
    新刊の文庫版はその後の様子なども書かれているようなので読んでみたいが、買うべきかもう少し落ち着くのを待って他図書館経由で借りるか迷っているところ。

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著者プロフィール

宇田智子(うだ・ともこ)
1980年神奈川県生まれ。2002年にジュンク堂書店に入社、人文書担当。2009年、那覇店開店に伴い異動。2011年7月に退職し、同年11月11日、那覇市の第一牧志公設市場の向かいに「市場の古本屋ウララ」を開店する。著書に『那覇の市場で古本屋 ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』(ボーダーインク)、『市場のことば、本の声』(晶文社)ほか。2014年、第7回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。

「2022年 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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