学校が教えないほんとうの政治の話 (ちくまプリマー新書 257)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689665

感想・レビュー・書評

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  • 中高生向けの政治を考える本。大人が読んでも、まあ、わかりやすい。美奈子節が炸裂しまくりで、スカッとすること間違いなし。この本が出てから4年経過し、先日は真新しさのない立憲民主党という党名と代表が決定。明日は自民党総裁選...。今秋の解散・総選挙はどうなるのか? この本を読めば関心を持てることだけは間違いない。

  • 高校生とか大学生、若い社会人向けだと思うが、内容的には日本の近代政治の流れがコンパクトにわかりやすく示されているので、年齢を問わず読みやすいと思う。
    政治には中立はないという前提は、たしかにそうだ。考えることから逃げてはいけない、と気づかされる。
    有権者の意識、政治家の説明力、マスコミの報道のあり方、日本は2流であり、著書の中でいう『ゆる体制派』中心の国になるのだろうな、と思った。一有権者として、やっぱり勉強して、選挙に行きたいと思う。次は憲法の本でも読もう。

  • 安倍晋三元首相の国葬の是非をめぐり、また北朝鮮拉致被害者の帰国から20年という節目を迎えるにあたり、「政治」に関心を集めたいと思って本を探している中で出会った一冊です。

    学校では特定の政党や政治スタンスについての授業(指導)ができない(教員個人の意見表明、という形であっても非常に神経質にならざるを得ない)という事情がある一方で、生徒に対しては「政治に関心を持つように」指導してゆかねばならないというジレンマがあります。

    なぜ、政治に関心が持てないのか、それは「自分のスタンス」と「推しが誰(何)か」が明確になっていないからだ、と筆者は主張します。
    そして「右派/左派」「保守/リベラル」「体制派/反体制派」などの対立軸を設定して社会問題を紹介し、「政治スタンスに”中立”はない」と繰り返し主張します。

    自分自身がどのような政治スタンスなのか、今の世の中に対して「このままでよい」と思っているのか「変えなければならない」と感じているのか。
    私憤や義憤を抱いたところから、人は政治的になる、という筆者の「あとがき」に共感しましたし、ぜひ生徒に紹介してみたいと思う本でした。

    文章は中学・高校生を意識したのか、少しフランクすぎる印象もありますが、「何をめぐって”対立”しているのか」ということがわかりやすく解説されていますし、自分がそれぞれの立場に「賛成」なのか「反対」なのかを考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。

  •  若者が政治に無関心なのは「ひいいきのチームがないから」と本質をずばりと突く。じゃあ決めよう、あなたは「体制派」「反体制派」か、どっち? 
    〈「体制派」とはいまの政治を支持し「このままのやり方でいい」と思っている人たち、「反体制派」は今の政治に不満があって「別のやり方に変えたい」と考えている人たちです〉
    〈どっちでもない? あ、そうですか。そんなあなたは「ゆる体制派」「ぷち体制派」「かくれ体制派」です。どっちでもない、つまり政治に無関心で、特にこれといった意見がない人は、消極支持とみなされて自動的に「体制派」に分類されます。〉
     ここを足がかりに、資本主義と社会主義、右翼と左翼、全体主義と個人主義、といった概念をわかりやすく解説していく。政治に「中立」はない、政治参加には「党派性」が必要だという、この気づきがすばらしい。

     すごいよこの本。名言の宝庫。
    〈いいですか。政治的な発想は反体制派的発想と結びついているのです。権力の側からいえば、みんなに政治音痴の「ゆる体制派」でいてもらうのが、いちばんいいわけ。〉
    〈自分は誰の味方でいたいのか。上半分の資本家や富裕層と、下半分の労働者や貧困層と、どちらの側につくのか。そして、あなたやあなたの家族はどの階級に属しているのか。それは政治を考えるときの大切な指標なのです。〉
    〈「国益優先派」は「全体主義」。「人権優先派」は「個人主義」です。〉
    〈国家権力は強大で、放っておくと必ず「全体主義」に近づいていく(中略)。個人主義は、国にとってはたいへん面倒で邪魔くさいものなのです。そして邪魔くさいからこそ、個人主義は社会全体にとっても有益だし、必要なんです。〉
     ほんと、学校の授業の副読本にしたいくらい。

     もっとも重要なのは、「戦後日本の体制派」はどちらだったのかという指摘だ。
    〈意外にも(?)左派、自由と権利を重んじる個人主義こそが「体制派」だった。それを私たちは「戦後民主主義」と呼んできたのです。〉
     だから日本会議は、安倍晋三は、「戦後民主主義」を目の敵にしてきたし、そのディスりが浸透してきているのだ。左派は自分たちをつい少数派ととらえたがるが、現在を正しく把握するためには、上記の「気づき」が必要なのだ。

     政治を考える最初の一歩というだけではなく、政治と自分とをつなぐ道しるべとして、すばらしい一冊だと思う。

  • 取り付きにくい、政治に対して分かりやすく解説。序文にある、ひいきのチームを作ること、そして中立はなく何かを選ぶ、とところどころに出てくるメッセージが良い。
    歴史的な背景となった事件なども含めて例示されるので、わかりやすい。

  • 政治的な立場に中立なんて有り得ない。無関心は「ゆる体制派」から始まって、今(2016年当時)の日本の状況まで、実に分かりやすくまとめてあって、これなら小学校高学年あたりからでも理解出来ると思った。だった207ページの中に江戸時代の一揆から近代日本の黎明期、戦争論と戦前の言論弾圧、憲法について戦前・戦後の右翼と左翼、全体主義と個人主義…これだけ盛り込んであってもすいすいと読めると思う。書評家らしくゴーマニズム戦争論についてもちらっと触れている。ちょっと残念なのはタイトルかなぁ?もうちょっとインパクトのあるタイトルだったら良かったかも?

  • 前から一度読みたかった斎藤美奈子さんの最新著、偶然に本屋で見かけて購入しました。
    野球になぞらえて、「ひいきの政治チーム」を読者に考えてもらうための実践的政治入門書。するどい切り口と表現、歴史的な経過もたどることができる中身。新聞のコラムで読んでいた斎藤さんと長く会話ができたようで、とてもよかったです。

    「政治を考えるのに中立はない」、「メディアの役目は中立公正、不偏不党ではなく権力の監視」。それがもっと常識になる必要がありますね。政治に対する怒りは、「何でこんな目にあうの」「あの人が何でこんな境遇に置かれているの」という私憤・義憤から始まるという指摘は、その通りだと思います。そんな材料は周りにたくさんあり、そのことを多くの人に伝えていくことが必要ですね。常に自分の立ち位置を、しっかり確認していきたいと思います。

    おすすめの一冊です。

  • 現在の複雑な政治状況の見取り図を、いくつかの対立軸を使って、わかりやすく描き出している。書きぶりはぶっちゃけ話のようだが、混乱しそうな概念を慎重に段階を踏みながら上手に整理している。物事をあえて単純化しているようで、じつは対立軸の組み合わせや展開によって、実際の事態や概念が複雑であることを理解できるようになっている。そして自分の声をなんとか若い人たちに届けなければという、著者の切実な危機感、というか強烈な熱意を感じる。これはいろいろな意味で学者には書けない本だなと思う。

  • これぐらいの内容を頭に入れておけば、日本の政治について相当程度語れる。授業においては、この本に書かれている内容にどのような教材で迫っていくか、この本で提示されている対立軸をめぐってどう意見形成してもらうかがポイントとなろう。

  • 今の中学生、高校生、それに政治の知識にうとい大人達に、ぜひ読んでもらいたい本。特に、選挙にも行かない今の大人達には、この本に書かれている基本的な教養すらない人がほとんどだろう。前半から日本で起きた歴史の出来事を軽く交えるなどして、政治の基本、考え方などから、「右翼・左翼」「保守・リベラル」など勘違いしている人が多い部分にも、しっかり触れていて、政治の教養がある人でも十分読める。
    すでにこれらの知識はあったものの、政治にうとい人にどのように説明していいか困る事も多かったため、「なるほど、確かにこう言えば理解してもらえるな」といった新しい気づきもあったため、個人的に文句なしの良書である。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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