渡邊二郎著作集 8 ドイツ古典哲学Ⅱ (渡邊二郎著作集(全12巻))

著者 :
制作 : 高山 守  千田 義光  久保 陽一  榊原 哲也  森 一郎 
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (609ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480752680

作品紹介・あらすじ

ドイツ哲学を貫く"無"の系譜。シェリング/ヘーゲル研究。存在の深淵を直視しつつ、救済を期待する。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のシェリングやヘーゲルについての論文のほか、ヘーゲル左派やマルクス主義にかんする論文などが収録されています。

    本巻において多くの分量を占めるのが、シェリングにかんする論考です。著者はハイデガーの研究者として知られていますが、「存在」の根源にまなざしを向けようとするハイデガーの思索に通じるものを、「神の内なる自然」へ向けてさかのぼるとともに、その力動的な働きによって世界が切り開かれていくありようを論じたシェリングの『自由論』などで語られる思想のうちに見いだそうとする試みがなされています。

    また、ドイツ哲学における「無」や「ニヒリスムス」についての考察も含まれています。著者は、ヤコービによるフィヒテ批判において「ニヒリスムス」ということばが用いられていることに注目するとともに、フィヒテとヤコービの双方の考えを批判し、「無」の積極的な働きをみずからの思想の根幹に据えたヘーゲルの思想の意味について考察をおこないます。さらに、こうしたドイツ観念論における「無」をめぐる議論が、ハイデガーを中心とする現代の哲学においてもつ意義を明らかにしようとしています。

    後期のシェリングや後期のハイデガーの思想には、ベーメなどの神秘主義思想に類する秘教的な性格があり、一部の哲学研究者を魅了しつつも、その難解さを敬遠する向きもあるのではないかと思いますが、著者はその思想の意義を明瞭なことばで語っており、個人的には興味深く読みました。ただ一方では、そうした著者のあまりにも明晰な整理によってとらえられることのない魅力が、これらの思想のうちに存していたのではないかという気がしないでもありません。

  • 資料ID:21302383
    請求記号:121.6||W||8

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著者プロフィール

哲学者。放送大学名誉教授、東京大学名誉教授。専攻は西洋近現代哲学。著書に『ハイデッガーの実存思想』『ハイデッガーの存在思想』(以上勁草書房)、『ニヒリズム』(東京大学出版会)、『構造と解釈』『英米哲学入門』『芸術の哲学』『はじめて学ぶ哲学』『現代人のための哲学』(以上ちくま学芸文庫)、『歴史の哲学』(講談社学術文庫)、『人生の哲学』(角川ソフィア文庫)などがあり、『渡邊二郎著作集』全12巻(筑摩書房)に集成されている。

「2021年 『増補 自己を見つめる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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