渡邊二郎著作集 (第10巻)

著者 :
制作 : 高山 守 
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480752703

作品紹介・あらすじ

"呼ぶこと"の存在論的美学研究、『芸術の哲学』『美と詩の哲学』。"美"は"呼びかけるもの"である-存在と美をめぐる晩年の思索。

感想・レビュー・書評

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  • 『芸術の哲学」(1998年、ちくま学芸文庫)と『美と詩の哲学』(1999年、放送大学教育振興会)のほか、七編の論考が収録されています。

    『芸術の哲学』で著者は、感性における「美」を解明する「美学」の基本的な立場に同調せず、「美」に触れることにおいて存在の真理が開示されるというハイデガーの立場を引き継ぎながら、存在論的美学が展開されています。著者はまず、アリストテレスの『詩学』を考察の対象にとりあげ、そこに著者自身の存在論的美学に通じる発想を見いだすとともに、「悲劇は、人間的性の普遍の真実を、知りかつ学ぶ喜びに繋がっていた」ところにカタルシスの概念の意義があったと主張しています。

    つづいて著者は、ニーチェ、ハイデガー、ショーペンハウアーらの美学思想に同様の発想を認めるとともに、カントの『判断力批判』の検討をおこない、近代的な主観主義美学を越える存在論的美学の着想があったと論じています。

    一方『美と詩の哲学』では、プラトン、プロティノス、アウグスティヌス、偽ディオニシウスなど古代から中世の美学思想がとりあげられ、美を「秩序・調和・均衡」とみなす考えかたと、美を「光輝き」ととらえわれわれに対して呼びかけて来るものとみなす考えかたが西洋の美学思想史のなかに共存していることを明らかにしています。著者が共感を示すのは後者の見かたであり、ハイデガーから受け継いだ存在論的美学の発想に通じるものだとみなされています。さらに著者は、ドイツ・ロマン主義の代表作のひとつであるフリードリヒ・シュレーゲルの『ルツィンデ』を紹介しながら、近代的な思想の枠組みのなかで自然的生命の美が表現されていることを明らかにし、それを存在論的美学の近代的な変奏として解釈しようとしています。

  • 資料ID:21302385
    請求記号:121.6||W||10

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著者プロフィール

哲学者。放送大学名誉教授、東京大学名誉教授。専攻は西洋近現代哲学。著書に『ハイデッガーの実存思想』『ハイデッガーの存在思想』(以上勁草書房)、『ニヒリズム』(東京大学出版会)、『構造と解釈』『英米哲学入門』『芸術の哲学』『はじめて学ぶ哲学』『現代人のための哲学』(以上ちくま学芸文庫)、『歴史の哲学』(講談社学術文庫)、『人生の哲学』(角川ソフィア文庫)などがあり、『渡邊二郎著作集』全12巻(筑摩書房)に集成されている。

「2021年 『増補 自己を見つめる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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