- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480770158
感想・レビュー・書評
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人は誰でも同じ孤独を抱えている。
でも決してそれを分かち合えない。
誰かと繋がっている感覚は夢でしかない。それでも幻想を信じられる人は幸せだ。
幻を信じられない人、何らかの理由で幻から見放された人は、何とか自分のやり方で、自分の目に映る世界を説明しようとする。そうしないと、彼らは自分自身すら見えなくなってしまうから。もし運が良ければ、彼らは偉大な芸術家になれるだろう。自分の感覚と社会が調和する場所を見つけられさえすれば。
残念なことに大抵の異邦人は的はずれに周囲を困惑させて、孤立するはめになる。この本はそういう気の毒なろくでなしを主人公にした短編集。上手じゃないし、もしかしたらまちがったやり方なのかもしれないけれど、彼らは必死に誰かを愛している。もしくは、愛そうとしている。だから私は彼らが好きだ。
トーベ・ヤンソンは偉大な芸術家だ。けれど彼女自身は、自分をまぬけで的外れな人間だと思っていたのかもしれない。
誰かの世話をするのは、所有するのと同じなのかもしれない。同じ?似ている?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今年はトーベ・ヤンソン生誕100周年だそうだ。ちなみにウィリアム・バロウズ(97年没)も、SF作家のラファティ(02没)もそう。翻訳家の朝吹三吉(01没)も。ヤンソンさんも01年没だし、みんな割と長生き。
12編の短編は、相変わらずの「孤独」が充実。孤独充実・・・
「ドク充」とは呼ばない。
機関車を描くことに取りつかれた孤独な男性が、駅で見かけた機関車を見る女性に惹かれるも愛情を示されると殺意を覚える「機関車」とか、
ゲイのカップル(と思われる)の片方がミニチュアの家作りに没頭し、一方がキーッとなる「人形の家」とか、
アメリカに移住し、妹がイタリア人のダメ男に惚れてしまうフィンランド人姉妹の話とか、
酒におぼれるかつてのフラワーチルドレンとか、
他人との分かり合えなさ、微妙な距離、孤独の心地よさと心地悪さ、老いていくことについて、とどの短編もあとをひく話ばかり。
母親を間にソファに座ってテレビを見ているレズビアンのカップル、恋人の母親の背中ごしに手を伸ばすとはらいのけられ、そのまま恋人の母親に手をまわす。母親が娘の恋人に対して「あなたの手には電気が走っている」なんてシーン、何かこう不穏な感じとか気まずい感じとか、ザワザワしてくる。
決して主題ではないが、やんわりと触れられる同性愛について、「なるほどね」というのはなんとも下品ではあるが、やはり「なるほどね」と思ってしまった。 -
「日常に確たる根を持たず、周囲となんとなく折り合わず、しばさばみずから他者との絆を断って、自由で不毛な無人地帯をつくりあげる」訳者あとがきより
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トーベ・ヤンソンコレクション5。
短篇集です。
風変わりな登場人物を集めた作品集のような感じを受けました。
ヤンソンさんの作品の登場人物にはなかなか感情移入できません。
距離をおいて見物しているような、けれど目が離せないという
気持ちでいつも読んでいます。
強いて理解出来るとすれば、『人形の家』という作品でしょうか。 -
実を言うとイプセンの同名の作品と混同しちゃってました。こちらは、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの作品集。表題作の「人形の家」は人形の家作りに取り付かれた装飾家の話なのですが、どこまでエスカレートするねん!っていう主人公の家作りへの熱中ぶりがすごい。狂気じみた世界なんだけど、読後にふっと和むのはトーベ・ヤンソンの作品特有の優しさかもしれない。
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ムーミンで有名なトーベ・ヤンソンの小説集。なんだかこいつらただならぬ関係か…?と思わせる表題作と全体の「クールさ」が良いです。装丁も素敵!