ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生 (コレージュ・ド・フランス講義1978-79)
- 筑摩書房 (2008年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480790484
作品紹介・あらすじ
健康・衛生・出生率・寿命・人種などにより政治実践に対して提起される諸問題の合理化を試みる"生政治"を考察するために-ドイツ的形態の新自由主義およびアメリカ新自由主義を実証的に展望し、"ホモ・エコノミクス"の出現へと遡って市民社会を独自に分析する。現代史にフーコーが大きく踏み込んだ稀有な講義。"社会科学のアルケオロジー"の到達点。
感想・レビュー・書評
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ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生 (コレージュ・ド・フランス講義1978-79)
(和書)2012年07月13日 14:26
ミシェル・フーコー 筑摩書房 2008年8月
講義集成の11と12を読み面白いので他の本も借りてみました。本当は13が借りたかったけど図書館はいろんな人が利用するから思い通りにならないこともあります。でもこのような高価(あくまで僕にとって)な本をかりて思う存分読めるのはありがたいことである。
こないだフーコーさんの別の本で、神 世界(宇宙) 人間 ということを考察した本があった。カントについてだったけれど。このシリーズを読んでいると自分が、体調を崩す以前に神 世界 人間について考えていたことを思い出させられる。
なんだかもう一度やれそうな気がしてきて勇気づけられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「性の歴史 知への意志」(1976) に始まり、コレージュ・ド・フランスの講義では、「安全・領土・人口」(1978)ときたところで、いよいよ「生政治の誕生」が論じられるはずであった講義ですね。
が、なかなか本題には入らずに、古典経済学の「経済人」の概念などを検証しつつ、第2世界大戦後のヨーロッパの自由主義、そして当時のホットなトピックでだった「新自由主義」の議論が展開される。
フーコーは、過去の文献の読解を通じて、現在とは違うディスクールが存在していたことを示すことで「現代」を浮かび上がらせるというアプローチが主で、インタビューとかを別として、近現代のことに直接言及することは稀である。
そういう意味では、とてもレアな講義ですね。
大学時代は経済学を中心に学んだ私としては、「経済人」や「自由主義」の話は、親しみが持てるテーマ。
そして、「生権力」が、「福祉国家」を生み出していくのだが、その「生の権力」が実は「死の権力」、つまり全体主義に転換可能なものであることが遠巻きに語られて行く。
かなりスリリングな議論なんだけど、フーコーには、いわゆる「生権力」「生政治」について、正面から話して欲しかったな〜。
というのは、翌年の「生者たちの統治」では、あっさりと問題系は「真理と主体」に変更されて、なんと初期のキリスト教の文献の読解に変わるわけですからね。
で、この初期キリスト教の読解の話しから、現代に戻って、「生政治」の話に接続されるのかと思っていると、さらに時代を遡って、ギリシア、ローマ時代の文献の読解になっていくのだけど、その議論も完全には議論されないまま、フーコーは他界してしまう。
というわけで、フーコーの70年台半ばからの最後の10年間の議論はほんと面白いし、推理小説的なスリルもあるな〜となんかマニアックなところまで読んでみたくなるわけで、そうしたモヤモヤの中心にある講義ですね〜。 -
モグっていた大学院の授業で使ったが、新自由主義について経済・政治だけでなく社会の病理にまで繋げて考えさせられた一冊。