Think: 夜に猫が身をひそめるところ (ミルリトン探偵局シリーズ 1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 370
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480803528

作品紹介・あらすじ

猫には猫だけが行ける場所がある-空想ではなく推理。猫とホルンとビスケット。どこまでも謎の解けないミステリー・ノヴェル。

感想・レビュー・書評

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  • クラフト・エヴィング商會4代目の吉田音が書いた本という設定。吉田篤弘さんの他の小説で少しふれられていたので、早速読んでみた。
    「謎を解かないまま、どこまでも考え続ける探偵になったら、夜に猫が身をひそめる場所にたどり着けるかもしれません。」そうしてできあがった円田さんとおんちゃんのミリルトン探偵局。猫のThinkが持ち帰ったものの謎を解かないままひたすら考える2人。想像の世界の広がりの楽しさが味わえた。その後に、実際は何に使われていたものなのかが語られ、二重に楽しめた。Thinkが持って帰ってきた青い16個のボタン、釘、光沢ビスの袋のかけらなどの写真付きで、遊び心満載。とても楽しめた。

  • 黒猫のシンクが拾って帰ってくる物から、答えのない推理をするミルリトン探偵局。

    黒猫、音楽、水、箱舟、黒装束の水読み。
    「さらばじゃ」、「どこへでも行くがよい」。

    明言はされてないから答えはないけど、ミルリトン探偵局と久助・奏者、箱舟の物語たちのつながりを自分なりに見つけた時の、あの、感動…!

    答えはないけど考える、そして「また最初からやり直し」。本だってそう読めると楽しいし、日々の生活だってそう生きれたらきっと楽しい。川の水が動いていることだとか、両手が荷物でふさがっていることだとか、「午後4時」のことだとか、そういう当たり前の日常を切り取ったワンシーンに気づきたい。きっと、私にも音ちゃんみたいなこと考えてた時期はあった気がして、でもいつからか私はそれを忘れてしまったのかなと感慨に耽るけど…

    でも、今も、これからも、答えのないことを考え続けたい。
    だって、私も、世界で一番おいしいお菓子ミルリトンの味を知らないから、ね。

  • もうすごい昔に本屋で面出しされてて、表紙に一目ぼれ。
    何も謎を解決しない、探偵物語。
    登場人物みんな好き。猫たくさん出てくる。

  • おんちゃん最高。クラフトエヴィングのたまごというか、それの純粋版というか。でも、おんちゃんが大人になっても、今のクラフトエヴィング的にはならないんだろうなと。・・・とはいえ、おんちゃんも吉田夫妻の創作なのでしょうけども。でも、いやぁ、楽しめました!

  • ミルリトン探偵局シリーズの2の方から読んでしまったため、今さらながら知る事実が多々。

    まずミルリトンというものの正体は、「この世で・いちばん・おいしい・お菓子!」らしい。
    とはいうものの、この作者(?)、クラフト・エヴィング一族の言うことは、丸呑みに信じるわけにもいかないので、一応調べてみた。
    そうしたら、この世で一番おいしいかはわかりませんが、実在するフランス菓子のようです。
    ただし、フランスからも姿を消しつつある…らしい。

    13歳の少女、吉田音が、本を読みたいときに行く図書館以外のもうひとつの場所。
    お父さんの友達の円田さんの家。
    見知らぬ本がみっしりと詰め込まれている円田さんの本棚。
    でも、本より円田さんの話の方がめっぽう面白くて、結局いつも本のことを忘れてしまう。

    そんな円田さんの家に住んでいるらしい考える黒猫(Think)が、夜の散歩から持ち帰ってくるものを前に、Thinkが夜どこへ出かけているのかを推理する。
    それが「ミルリトン探偵局」
    “謎は、シンクが運んでくる。
    解ける謎でも、決して解かない。”

    “分からないのがいいんです。分からないから、また考えるでしょう?(考え)だけは、どんなに狭いすき間でもするする抜けてゆきます。想像したり分かってしまったらそこで止りです。でも分からなければ、いつまでもどこまでも楽しめます。食べたことのないミルリトンみたいに”

    こうやって始まった物語は、シンクの持ち帰ったものにまつわるパートと、著者の日常パートが交互に語られ、ぐるりと話が一回りした時に最初とは少しずれたところに着地する。
    「つむじ」とか「うず」とか好きだよね。クラフト・エヴィング商會。

    多分始まりと終わりがぴたりと重なる「円」ではなくて、ずれている「うず」だからこそ、話が動く、思考が流れる、ということだと思うのね。
    決して完結することのない物語。

    “なぜなら私は「驚き」を愛するからだ。「驚き」は、人が何かを知ってゆくたびに、ひとつずつ消されてゆく。子供のとき、世界のすべては「驚き」に充ちていた。何も知らなかったからだ。(中略)
    知らなくていい。
    知らない者、分からない者だけが、考える。
    そして「考える者」だけが少しだけ前へ進める。そうではないか?”

    シンクのパートと著者のパート、交互に追いかけるように語られてはいるものの、言っていることは同じだ。
    つまりふりだしに戻っている。
    ちょっとだけ違うふりだしに。
    そして、ちょっとだけ違う未来に向かって一歩を踏み出す。
    そうやってどこまでも歩き続けることが、大事なんじゃないかな。
    ゴールすることじゃなくて。

  • これは私が東京の小さな書店で働いていたときに遭遇しました。
    表紙のザラザラ感やデザインに惹かれて購入。
    物語かと思いきや、実在の地名が出てきたり、そういう流れなのかと思えば、間に短編が挟まっていたり。
    現実と空想の世界を行ったり来たりするような気持ちになれる本です。
    猫が運んでくる不思議な物は、本当にリアルで感激します。
    どうやって作ったのだろう…と脱線しても楽しいです。
    この本がきっかけでこの作者の本を集めてしまうようになりました。

  • ちょっと切ない感傷的な、謎解き物語。
    おいしそうなお菓子と優しい人たちが織り込まれていてて、ちょうどいいバランス。

  • 「クラフト・エヴィング商會」4代目の13歳の少女(著者と同姓同名)が、黒猫シンクの拾ってきたものの謎を解くために、名探偵(?)円田さんと「ミルリトン探偵社」を結成し、さまざまな推理をめぐらせる。

    昔活字好きさんの間で話題になってたな~、と図書館で見かけて借りてきたのですが、著者情報を見ると、偶然にも、同じ日に借りた吉田篤弘さんの娘さんとのこと。
    父母としてクラフト・エヴィング商會のお二人や編集者の方も登場し、どこまでが本当なのか…?という興味も含めするする読んでしまった。

    筆致は飄々としつつ穏やか。推理パートと物語パート(回答編?)が交互に差し挟まれているが、どちらのパートが真実なのかも最後まで明かされず、想像力をかきたてさせられる。最後はファンタジーっぽい感じ。でも、不思議と納得しちゃった。

    写真がまた素敵で、いいなあ、こんな町に住んでみたいわあ、と思いながら読みました。装丁まで含めて、素敵な本でした。

  • 初めて読んだクラフト・エヴィング商会関係の本がこれだった。著者としてのクレジットは本書の主人公でもある「吉田音」となってはいるが、実際に書いたのは吉田音という中学生の女の子ではない。しかし言葉の選び方やストーリーの展開における彼女の位置付けには「しっかりした、どこかにいそうな中学生」の印象が上手に出ているので、架空の少女を著者に仕立てた遊び心を違和感がなく受け入れることができる。何より作中の吉田音嬢の健やかさにとても癒される。探偵局の名前にもなっているミルリトンはお菓子の名前だ。あまりにもおいしそうな描写だったので後日レシピを調べて作ってみたけれど、「Borelo」へ続くこのシリーズで語られているミルリトンの魅力にはとても及ばなかった。

  • 面白かった。

    クロネコシンクが拾ってきた「おみやげ」をもとに、クロネコがどこに行っているのか推理する小説。

    不思議と、謎と、ふとした寂しさと、そして声を出して笑ってしまう面白さ。
    特にホルン奏者の話は、つい我慢できずに笑ってしまうシーンが多数。
    それでいて、随所に謎を含んだ構成に、続きが気になって読み進めた。

    つながっていないようでつながっている。

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