Think: 夜に猫が身をひそめるところ (ミルリトン探偵局シリーズ 1)
- 筑摩書房 (1999年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480803528
作品紹介・あらすじ
猫には猫だけが行ける場所がある-空想ではなく推理。猫とホルンとビスケット。どこまでも謎の解けないミステリー・ノヴェル。
感想・レビュー・書評
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クラフト・エヴィング商會4代目の吉田音が書いた本という設定。吉田篤弘さんの他の小説で少しふれられていたので、早速読んでみた。
「謎を解かないまま、どこまでも考え続ける探偵になったら、夜に猫が身をひそめる場所にたどり着けるかもしれません。」そうしてできあがった円田さんとおんちゃんのミリルトン探偵局。猫のThinkが持ち帰ったものの謎を解かないままひたすら考える2人。想像の世界の広がりの楽しさが味わえた。その後に、実際は何に使われていたものなのかが語られ、二重に楽しめた。Thinkが持って帰ってきた青い16個のボタン、釘、光沢ビスの袋のかけらなどの写真付きで、遊び心満載。とても楽しめた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
黒猫のシンクが拾って帰ってくる物から、答えのない推理をするミルリトン探偵局。
黒猫、音楽、水、箱舟、黒装束の水読み。
「さらばじゃ」、「どこへでも行くがよい」。
明言はされてないから答えはないけど、ミルリトン探偵局と久助・奏者、箱舟の物語たちのつながりを自分なりに見つけた時の、あの、感動…!
答えはないけど考える、そして「また最初からやり直し」。本だってそう読めると楽しいし、日々の生活だってそう生きれたらきっと楽しい。川の水が動いていることだとか、両手が荷物でふさがっていることだとか、「午後4時」のことだとか、そういう当たり前の日常を切り取ったワンシーンに気づきたい。きっと、私にも音ちゃんみたいなこと考えてた時期はあった気がして、でもいつからか私はそれを忘れてしまったのかなと感慨に耽るけど…
でも、今も、これからも、答えのないことを考え続けたい。
だって、私も、世界で一番おいしいお菓子ミルリトンの味を知らないから、ね。 -
もうすごい昔に本屋で面出しされてて、表紙に一目ぼれ。
何も謎を解決しない、探偵物語。
登場人物みんな好き。猫たくさん出てくる。 -
おんちゃん最高。クラフトエヴィングのたまごというか、それの純粋版というか。でも、おんちゃんが大人になっても、今のクラフトエヴィング的にはならないんだろうなと。・・・とはいえ、おんちゃんも吉田夫妻の創作なのでしょうけども。でも、いやぁ、楽しめました!
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これは私が東京の小さな書店で働いていたときに遭遇しました。
表紙のザラザラ感やデザインに惹かれて購入。
物語かと思いきや、実在の地名が出てきたり、そういう流れなのかと思えば、間に短編が挟まっていたり。
現実と空想の世界を行ったり来たりするような気持ちになれる本です。
猫が運んでくる不思議な物は、本当にリアルで感激します。
どうやって作ったのだろう…と脱線しても楽しいです。
この本がきっかけでこの作者の本を集めてしまうようになりました。 -
ちょっと切ない感傷的な、謎解き物語。
おいしそうなお菓子と優しい人たちが織り込まれていてて、ちょうどいいバランス。 -
「クラフト・エヴィング商會」4代目の13歳の少女(著者と同姓同名)が、黒猫シンクの拾ってきたものの謎を解くために、名探偵(?)円田さんと「ミルリトン探偵社」を結成し、さまざまな推理をめぐらせる。
昔活字好きさんの間で話題になってたな~、と図書館で見かけて借りてきたのですが、著者情報を見ると、偶然にも、同じ日に借りた吉田篤弘さんの娘さんとのこと。
父母としてクラフト・エヴィング商會のお二人や編集者の方も登場し、どこまでが本当なのか…?という興味も含めするする読んでしまった。
筆致は飄々としつつ穏やか。推理パートと物語パート(回答編?)が交互に差し挟まれているが、どちらのパートが真実なのかも最後まで明かされず、想像力をかきたてさせられる。最後はファンタジーっぽい感じ。でも、不思議と納得しちゃった。
写真がまた素敵で、いいなあ、こんな町に住んでみたいわあ、と思いながら読みました。装丁まで含めて、素敵な本でした。 -
初めて読んだクラフト・エヴィング商会関係の本がこれだった。著者としてのクレジットは本書の主人公でもある「吉田音」となってはいるが、実際に書いたのは吉田音という中学生の女の子ではない。しかし言葉の選び方やストーリーの展開における彼女の位置付けには「しっかりした、どこかにいそうな中学生」の印象が上手に出ているので、架空の少女を著者に仕立てた遊び心を違和感がなく受け入れることができる。何より作中の吉田音嬢の健やかさにとても癒される。探偵局の名前にもなっているミルリトンはお菓子の名前だ。あまりにもおいしそうな描写だったので後日レシピを調べて作ってみたけれど、「Borelo」へ続くこのシリーズで語られているミルリトンの魅力にはとても及ばなかった。
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面白かった。
クロネコシンクが拾ってきた「おみやげ」をもとに、クロネコがどこに行っているのか推理する小説。
不思議と、謎と、ふとした寂しさと、そして声を出して笑ってしまう面白さ。
特にホルン奏者の話は、つい我慢できずに笑ってしまうシーンが多数。
それでいて、随所に謎を含んだ構成に、続きが気になって読み進めた。
つながっていないようでつながっている。