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この作品からのみんなの引用
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死者には、それを抱いて眠るための物語が必要
― 237ページ -
カタヤマはよく言っていました。特に人の怖ろしがる病の場合は。なぜ、自分がその病気になったのか、納得できる物語が欲しい。患者が、いよいよ助からないとなると、カタヤマは、まるで依巫にでもなったかのように、その人の一生を謳い上げるようなストーリーをつくって、訥々と話して聞かせるんです。現地の言葉で。カタヤマの言葉は、拙いものだったけど、力があった。そうすると、患者は本当に満ち足りた顔になる。見栄のためじゃない、死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ、って、言ってました。
― 237ページ -
──人の道を踏み外したやつら。軽蔑。生理的な嫌悪感。大体の社会において、そんな扱いを受ける。もしくはそんな扱いをしないように意識するあまり、わざとらしく親切。アフリカは例外的だけど。そんな余裕ないからね。
──日本は?
──日本? 日本はひどかった。今はそれほどではないかもしれないけど。医療関係者ですら、病名がはっきりした途端、目つきが違った。あからさまに触りたがらない看護婦もいた。群れ全体が、異物を弾き飛ばそうとするんだ。
― 236ページ
みんなの感想・レビュー・書評
力強いのに淡々としている感じが好き。
ただ、作中作がいつもピンとこないというかぶっちゃけ邪魔なんだよね…。今回は棚の作品ということで、書かれる意味があったからまた別なんだけど。
私の大好きな作家、梨木香歩さんらしい、自然と生命の関係にひたれる一冊。
飼い犬の子宮にできた塊から始まり、知り合いの不可思議な死を知ったことで、アフリカに降り立ち、現地の人々に崇拝されている呪術医を訪ねることになります。
精霊や魔術といった、超常的なものを信じるのではなくて、「人間が必要としてきた物」として冷静に見つめる主人公。
主人公のフリーライターの女性がたどる、生命と魂の物語。
アフリカの自然と人々の描写が、英国や日本での経験を反映させてきた他の作品と違い新鮮でした。
それでも「リカさん」「裏庭」「西の魔女が死んだ」などとの共通点もあって、やっぱり梨木香歩さんらしい作品です♪
最後の「ピスタチオー死者の眠りのために」という所を読んで、すっとした。文をそのままの形ではなく、昇華させて書くという事がどういう事か何となく分かる。
少し怖い様な日常と不思議な物語が、静かな文章で綴られていく、そんな、ある意味いつも通りの梨木香歩さんの作品です。
結局大きな解決は見ないまま終わるのも、らしい雰囲気。
主人公は四十歳程の女性でしょうか。
アフリカに行くような行動力は無い私が言うのもなんですが、ターナーの絵が好きだったり、生まれ変わったら木になりたかったり、文章が書きたかったり、自分との共通点が多く、感情移入しやすかったです。
そういう感覚の人って、多いんでしょうかね。
なにものかに導かれてやってきた、アフリカ。棚は、すでに動きはじめたこの流れにのるしかない、と覚悟をきめた…。
梨木さんって、「からくりからくさ」とかもそうだけど、基本、異文化の衝突みたいなのをテーマに小説を書いてると思う。いつも思うけど、あんまりハッピーなハッピーエンドじゃない。白黒つけることもほとんどないし。あれ、結局何のためにぶつかったの?みたいな。分かりあえないまま、物別れになることもあるし。不毛じゃん、みたいな。でも、人間関係って、そういうもんだよなあと。100%理解しあえたから、死ぬまで友達とか、死ぬまで恋人とか、ありえない。むしろ、多くの場合、分かりあえないことの方が多いし。ただ分かりあえないかもしれないけど、分かろうと努力すること。そういうことが大切なんだろうな。それをコミュニケーションって言うんだろうなあと。
まるで神話の世界。
スピリチュアル系のお話。
アフリカの呪術医なんかが出てきて、すごく不思議な読後感。
良かった。
前半は日常の話だったのが
後半は全く別世界の話に。
昔よんだ
6人の容疑者
に出てくるよぉに
見えない何かを信じる
信仰心?が強い国の話は
また違った世界を見せてくれるので
面白い。
人は常に物語を求めているのではないか、ということに気付かされた気がします。生きるための物語、受け入れがたい何かを受け入れる為の、受け入れて進む為の、己を納得させる為の、そして死者の為の物語が必要なのではないか。
それは宗教的な領域なのかもしれないと思いつつ。
言葉や物語の必要とされる隙間を、人はずっと持ち続けるのだろうし、多分、そういうものが人を人にさせるのだろうなと、そういうことを考えてしまう一冊です。読み返したいけれど、読み返すだけの覚悟がなかなか決まらない、そんな本です。
全く関係ないと思っていた事柄が、不思議とひとところへ収斂していく様が不気味なのと同時にどこか心地よかった。
梨木さんの作品を読んでいると、非科学的といえる不思議な、でもどこか身近な現象が扱われていることが多い。
それらは神秘的で、重厚で、かつ読了後には「ああ、そういうものなのだ」と、すとんと納得できる。
亡くなって初めて始まる人間関係、そんなものもあるのかもしれない。
野生に近づきたくて犬を飼っているのに、その犬にオムツを履かせて、保険のきかない治療を施して延命させる。矛盾を感じつつも、犬への愛情が勝ってしまう。
自然とはなにか、今の生活は自然なものなのか。
文明は人間のエゴなのか。
同じ時代に、アフリカでは民間信仰のような呪医が信頼され、
テロ組織の元子ども兵士が生きている。
遠く遠くに運ばれていくような感覚だった。
前半は飼い犬の病気を中心にストーリーが展開する。それも絡みながら、後半のアフリカでのスピリチュアルな世界を軸に据えたストーリーが展開していく。
アフリカの空気や生命力が臨場感を持って描写されています。そして何も知らない遠い国に懐かしさを思う不思議な感覚に陥りました。
度重なる偶然にはありえないと思いつつ、ちょっと理解出来ない呪術に困惑しながら、でもこの物語には必要不可欠なのだと流されて読むのが良いのだと思いました。
この人の作品のファンタジックなところを味わいたくて読みました。 前半の飼い犬の手術にあたる医者の描写が、私自身の病院との付き合いとシンクロして「どこの医者も同じだよね…」と言いたくなりました。 それと真逆のような呪医。 うさん臭さはあるものの 『カタヤマはよく言っていました。特に人の怖ろしがる病の場合は。なぜ、自分がその病気になったのか、納得できる物語が欲しい。患者が、いよいよ助からないと... 続きを読む »
アフリカと死者のはなし。
「ピスタチオ」がどう関わってくるのかと思ったら、
ドラマチックな結末が待っていました。
作品中に出てくる民話みたいにメッセージ性はなかった。
と、思う。
全てが、何か大きなもの(ジンナジュ?)の存在に動かされた経過の記録でした。
「ゲド戦記」と「ガダラの豚」を足して、
男くささとエンタメを引いた世界観。

とても現実的な日々を過ごしていくと、こうした物語に入り込むのに時間がかかる。それが自分の日常に近いものであるならなおさら。
だけれども、物語がアフリカの大地で動き出した瞬間に、物語を物語として受け入...





