- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480818409
感想・レビュー・書評
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アマゾンの上陸に震撼した日本の書店業界、紙の本は滅びるのかなど、
ジュンク堂の副店長が業界についてまとめたもの。
作家がベストセラーを出すと、気が狂わんばかりのストレスがあるという。
実際うつになった人もいるそうだ。
また、賞レースの裏で册数確保やコーナーの設営に東奔西走する様子など、
知らなかった裏事情がとても新鮮。
とにかく書棚に囲まれるのが大好きな私。書店よ永遠たれと願うばかりだ。 -
書店の危機が叫ばれて久しい。著者はジュンク堂池袋店の副店長さんで、大手書店ではあるけれど、今後の見通しには相当の厳しさを感じておられる。
だが、それでも、あえての「書店不屈宣言」である。
書店員たちが日ごろ感じていること、考えていること、出版の未来への想いを、周囲の方々の声とともに伝えてくれる。
印象的だった文章を引用します。
『「効率的な買い方」が日常生活に入り込んでくると、選書に失敗するという遊びがなくなり、本の選び方が痩せてくるのではないか? ・・・ 「文化」というものは無駄と無理の果てにあるもの、と私は無謀にも考えている』
Amazonなどで効率よく本を買うのもいいけれど、書店でさまざまな表紙を眺めたり手にとって重さを感じたりしながら、(時には読んでみたらそれほど面白くもなかったなどという経験もしつつ、)「書店で本を選ぶ喜び」を、自分はこれからも味わい続けたい。 -
大規模書店の裏事情。著者は池袋ジュンク堂の元書店員。
以前「書店繁盛記」というエッセイを読んだことがあるが、その後、アマゾンなどのネット書店や電子書籍の普及により、普通の本屋は苦戦を強いられている。著者は、雑誌や人文書、児童書などの売り場担当者にインタビューし、売り場を巡る様々なエピソードや担当者の意見を紹介し、現在の書店事情を考察している。
一昔前、会社の帰りに時々池袋ジュンク堂に立ち寄った。ふらふらしているとあっという間に2,3時間経ってしまうような本好きの楽園のような書店で、いつも沢山の客で賑わっている印象だったが 、現在は本や書店を廻る環境が大きく変わり、書店に足を運ぶ客が減り、売り上げも減っているそうだ。そんな状況でも若い書店員は本を買ってもらうために棚を工夫し、顧客の傾向を分析し、ベテラン店員と相談しながら改善の努力を続けている。書店員が自分のような客をどのような目で見ているのかが判って興味深く読めた。
著者は電子書籍やネット書店を脅威と感じているようだが、紙の感触が好きで、本は紙の本に限ると思っている人も多いと思う。例えば、美しい装丁で丁寧に作られた所有欲を擽る本は、電子書籍には無い価値がある。書店も本を単に商売の道具としてではなく、モノとしての価値をアピールすれば、将来も生き残ることができると思う。 -
ふむ
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同じような事を何度も書いているけれど、書店員の仕事はとっても大変ながらずっと憧れの職業です。1番は学校の図書館の先生、2番目は図書館司書、その次位に書店員が来ます。給料が安いのにハードワークで責任もある、でもやりがいはあるというまさにやりがい搾取の筆頭のような仕事ですが、それでも憧れうんですよね。
本が大好きな人は誰しも憧れる事があると思いますが、実際になるのかと言われたら躊躇しますよね。高校生の時にアルバイトしようと思ったら、高校卒業以降でないとなれないと言われて、一生本屋さんとして過ごす事無く生きていく事になりそうだとあきらめました。
筆者の田口さんは伝説の書店員ともいうべき超ベテランの書店員さんです。40年位本の世界を見つめ続けて来ているので、いい時も悪い時も本と一緒に過ごせた幸せな人です。
職場で有るジュンク堂の後輩へのインタビューを軸に書店の古今、本めぐる業界のこれからを語っています。
本もCDも1996年頃がマックスでそれ以降衰退の一途を辿っています。もっと楽しい事が沢山あるから関心を無くした、電子化によってメディアの統合が進んでいる等色々有ると思います。
これ実は思っている事が有って、時代時代で「かっこいい」という事が変わって来ているような気がします。僕らの頃は本を読んでいる方がカッコよかったし、音楽の事を沢山知っている方がカッコよかった。映画だって詳しい方がカッコよかったんです。スキーが上手いとかっこよかった時代もありましたが、既にその時も過ぎ好きな人だけが通うニッチな趣味になってしまいました。
本や音楽にこだわる事もまた、既にニッチな趣味になりかけているのであろうと思います。こればかりは大多数の趣味趣向がそうなっているので動かしがたいのが実情です。悲しい現実ですが早晩紙の本は無くなり、本屋も図書館も無くなる事になるのでしょう。永遠に有ると思っていたレコード屋もみるみる無くなっていっていますから。
それでも僕らは本にしがみつきたいのであります。馬鹿とは分かっていても愛しちゃってるんですもの。 -
1973年に書店員としての人生をスタートし、現在も副店長という立場で現場に立ち続ける著者による書店ドキュメント。ネット書店におされ、電子書籍の推移に神経を張りながらも、肉体労働を含めたリアル書店の仕事は続いていく。変化の激しい状況の中で、それぞれの現場は今、何を考え、どう動いているのか。現場で働く社員たちへの取材を中心に、業界全体への危惧、希望へと話は及ぶ。
書店の仕事への憧れが強い私としては、実際に働いている書店員さんの話をとても興味深く読んだ。
棚作りにかける情熱と、売れる仕掛けを作る難しさ。
電子書籍の勢力が増していることについては、私も利用しているので、少し心苦しく思ったが、やはり紙の本を扱う書店は、この先も残っていってほしい。
思わぬ本との出会いもあるし。
この本では、大型書店の話しか出ていないけど、小さな書店の言い分はまた違うものだろうな。 -
興味深々で拝読。
書店員の視線で読めば、全ての章においてふむふむ。共感と発見が多かった。初版は2014年に単行本、2017年末には文庫化された。
著者の田口久美子さんは、大型書店何店かでの現場経験を積んだうえで、ジュンク堂池袋店の副店長をされている。
本に携わることで痛感する"なんとかならないものか"という問題点が、明快に指摘されていると思った。
そして、何より、著者の純粋な本(そして本を取り巻く人々・環境に対しての)情愛が、すごーくすごーく伝わった。暖かい体温を感じて心地良かった。
タイトルも、とっても気に入りました!