甲羅男にカブト虫女

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480831361

感想・レビュー・書評

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  • チュツオーラの12の短編を所収。不徳や悪事がもとで妖怪や精霊にジュジュ(呪術)をかけられ、その過ちを身をもって思い知る…という戒しめの民話がほとんどを占める。
     チュツオーラの原文は訳者泣かせの破天荒な英語として有名。そのため訳者によって語り口が随分異なる。本書の訳では「日本昔話」風。
     現代アフリカ文学の書棚で扱われながら、内容は民話や童話の風味。読み手はその辺に戸惑ってしまったかも。絶版、断裁処分に至ってしまったのはそのためか。
     珍本である。

  • 奇才チュツオーラ御大の短編集。奇想が光っている。

    昔噺を「そのまま」文章にしてしまったような、とりとめのなさが味わえる。本来、物語そのものには意味がないはずだ。直言的な教訓などもってのほかだろう。それでは物語の意味がなくなってしまう。だいいち...つまらない。“意味に到達する前”(by 安部公房)の与太ばなしを楽しめた。特に『裏切りアデ』はラストで大爆笑。なんだかなあ。

    ただ、とりとめのなさという点では、傑作『やし酒のみ』に劣る。もっとふしぎなものたちが出てきてほしかった。

    ところで、表紙絵と挿絵は、御大の同郷かつ友人であるアーティストのものらしい。力強さと妖しさが無秩序にまとめられていて、とても「アフリカ」っぽい。中身とぴったりです。

  • 短編集。
    甲羅男とカブト虫女の逸話とその後。他、いろいろ。

    優男カメは国を裏切り、王の呪いで甲羅を背負った甲羅男にされてしまう。ジャングルで出会ったのは美しいカブト虫女、調子良く口説いて結婚する。

    世間知らずな兄弟は詐欺師に騙され、不義理な親友を助けた誠実な男は殺されてしまう。

    勧善懲悪なんて何の事?、ってな感じですな。
    調子良く生きぬいてゆく者勝ち、騙すが勝ちってな世界。

    かと言って、殺伐としているわけではなく、歌ったり踊ったり、結構楽しそう。

    訳者が、昔話風の口調に訳している効果もあって、なんだかのんびりした雰囲気です。

    ジャングルに囲まれ、魔術や死が身近にあるからこそ、生き抜いた者が正とされるんでしょうか。

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著者プロフィール

1920年、ナイジェリア生まれ。ヨルバ族出身。『やし酒飲み』はアフリカ最初の本格小説と激賞された。他の著書に『ブッシュ・オブ・ゴースツ』がある。1997年、没。

「2010年 『アフリカの日々/やし酒飲み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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