男の絆 明治の学生からボーイズ・ラブまで (双書Zero)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480864116

作品紹介・あらすじ

「男の友情」は男にしか分からない…。そんな"絆"も、じつは歴史の産物だった。明治時代までさかのぼり、学生の間ではやった「男色」の、その後も展開を追う。いまの男女問題を解くヒントに満ちた、画期的な考察。

感想・レビュー・書評

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  • 明治時代の「男色」から現代の「同性愛」に至る流れが分かった。
    「家庭」の役割、「男女の役割分担」など今は常識に近いことも明治~大正時代にできあがった概念なのですね。刷り込まれてしまって抗うことすら難しいけれど「生きづらい」と感じる人が少ない世の中にならないものかと思ってしまいます。

  • 4章までは歴史の話、とはいっても明治時代の学生男色についてというほかでは見られない切り口。恋と友情がオーバーラップしている時代がほんの100年前にあったということを史料から明らかにしている。5章以降は現代日本の同性愛者・女性の置かれている立場について。特に日本はマイノリティにつらく当たる社会らしい。何度も目の当たりにしていることながら、改めてがっかりする。

    同性愛に限らず、歴史を振り返ると今当然と思っていることがどれほど危ういことか。カチカチ頭をほぐす良書。

  • 本書は、ヘテロセクシズムが歴史的にどのように構成されたかの分析を行う。その中で、江戸時代の男色にまつわる文学作品、明治時代の学生男色、大正時代の新しい家庭像や、恋愛=結婚=家庭という捉え方、女性の専業主婦化、性科学による同性愛概念の普及、ボーイズラブなどを取り上げ、現代日本に存在するヘテロセクシズムを歴史的産物として捉え直す。

    ヘテロセクシズムでは異性愛が当然視される。その帰結として、同性愛は排除される。さらに、男性の優位性、特に、男性による公的領域の独占は女性の公的領域からの排除につながる。結果として、男性同性愛排除と女性排除が「男の絆」を守ることに貢献するという構図になる。

    タイトルは、サブカル論だと思ったが、実際は社会における捉えられ方を分析する。そのために、同性愛者や男の絆・同性愛にまつわる法律やジャーナリズム、文学作品やその受容のされ方をさまざまな資料から紐解いていく。

    著者は意図的に、主流ではないことを分析するのではなく、そもそもの当然視されているヘテロセクシズムの側の 分析を行ない、それを通じて非主流の分析をも行なっている。その意図は成功していると思う。

    本書では扱われていないが、女性同性愛そのものやそれを扱う文学作品の捉えられ方の分析を本書の内容につなげられるとより面白いと思った。たとえば、「といちはいち」の歴史などが考えられる。

  • 「よかれと思ってやったのに」関連本。
    現在でも高く評価されている「男の絆」「男の友情」。明治時代の学生男色を資料から丹念に追い、「男の絆」の背景を解き明かす。

    ホモファビアに関連する本として抜群におもしろい。初耳の内容が満載で、当時の小説や新聞記事の引用に、こんなことまで書いているのかと驚く。

    福沢諭吉や巌本善治の「男女交際論」により、「肉交/情交」という二分法がうまれ、「やったか、やってないか」で男女の関係を分ける発想が、日本社会に定着していく流れは、非常に興味深かった。この流れで「清らかな交際」の概念も広がったという。最近の概念!

    下ネタを話すことや、一緒にキャバクラに行くことは、異性愛者であるとアピールすることでもあり、「男の絆」コミュニティに入るのに有効、に納得。
    飲み会でこういう空気になることは、今でもある。ただ、嫌がる人や話を変えてくれる人が、男女問わず、昔より増えた気はしている。

    男女別姓や同性婚に反対している政治家にこそ読んでほしい良書。

  • ◆6/30オンライン企画「人間関係のデモクラシー -“家族”から思考する-」で紹介されています。
    https://www.youtube.com/watch?v=Hb8Oqmmxsvw
    本の詳細
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480864116/

  • 主にビジネス世界の男性社会の成り立ちを理解したく、読んでみた。

    男同士のあこがれや尊敬は、一般にあるものなのだろう。


    ホモソーシャル=ホモフォビア(同性愛嫌悪)+ミソジニー(女性嫌悪)

    ホモフォビア(Homophobia)とは、同性愛、または同性愛者に対する恐怖感・嫌悪感・拒絶・偏見

    ーーーーーーーーー

    ●江戸時代
    ・陰間:男性が男性にセックスを提供する職業
    ・幕末には、男色文化は絶滅の危機

    ●明治初期
    ・硬派学生、男色は魂を高めあうもの
    ・美少年+若武者の男色関係、大流行

    ●明治中期
    ・男色学生が眉目秀麗な美少年を誘拐

    ●明治後期
    ・福沢諭吉、恋愛という概念の普及
    ・女学生増加
    ・女学生との恋愛+結婚が正統性を獲得
    ・肉交・情交か(やったかやってないか)という価値観台頭
    ・男色(男性同士の肉交)の排除
    ・男同士の(恋・恋愛ではなく)”友情”の強調

    ●大正
    ・性や性欲に関する科学的な物言いが一気に世の中にあふれる

    ●男性による公的な空間の独占
    ・社員・主婦システム
    ・男女の 2 極ではなく,企業を含めた 3 極構造
    (企業が、家族手当などによって、積極的に主婦化を支援)
    ・現状でも、ワークライフバランスを実現させる下地が整ってない

    ●概念
    ・恋・色
     ⇔恋愛:清くて正しい、価値の高いもの、おそろしく情熱的なもの、危険な香りのするもの?(輸入時)

    ・結婚を前提とした恋愛―ヘテロセクシズム(異性愛主義)の制度化

    ・「日本男児たるもの」と大上段に構えつつ、読者のプライドをくすぐるような文章が人気を博す→今も同じ

    ・ソドミー:「不自然」な性行動を意味する法学において使われる用語で、具体的にはオーラルセックス、肛門性交など非生殖器と生殖器での性交

    ・女性=本来は、人格をもった一人の人間として女性を尊重し、男性と同じように社会を構成し、つっくり挙げていく存在。
     ⇔恋愛や性の対象としてしか見ない、モノにした女の数を誇る、男性同士の絆を深めるための道具として扱う態度

  • 男社会への疑問、「ホモソーシャル」について学びたくなる中で、本書に辿り着いた。

    深みある内容が、平易に書かれていて読みやすい。
    図4-1 明治時代の「学生男色」解体モデルは秀逸。
    著者の職業が高校教師だからってのもあるだろうか…。稀有なレベル。読んでて大変助かる。有り難い。

    日本近代史好き、日本で生まれ育った日本人男性として、身近な案件について興味深く学ぶ事ができたと思う。

  • ジェンダー、家族論にも踏み込んで興味深い。丁寧な注でとても読みやすかった。

  • 「男同士」に隠された日本社会。

    結構軽い気持ちで(ヲタク的な興味で)読んでみたけど、ジェンダー論とか踏み込む社会系の本でした。なるほどと思うこともいくつか。男性が書いているってところが、ひとつポイントかと。

  • 「色」と「情」がないまぜだった江戸時代の「男色」が明治になって「同性愛」と「男の絆(ホモソーシャリティ)」に分離して、前者が後者によって駆逐されていくというような内容。「同性愛」もヘテロ同士の「恋愛」概念が流行するにつれて、男を女に見立てた代理恋愛に変容してゆくそうだが、戦前の旧制高校や陸軍(自衛隊では今もなお)で見られたのはまさしくこれだろう。時代因か状況因かというところ。

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著者プロフィール

福島大学教育推進機構准教授。専攻は社会学、ジェンダー/セクシュアリティ研究、教育学。著書に『〈男性同性愛者〉の社会史』(作品社)、『男の絆』(筑摩書房)、共著に『「テレビは見ない」というけれど』(青弓社)など。

「2022年 『「地方」と性的マイノリティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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