日本人にとって美しさとは何か (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480873842

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  • 西洋のように荘厳な建築物のみに価値を見出さず、周辺環境や季節感を含めた美観に重きを置く。無駄なものは描かないことで主題を浮き上がらせる日本画。たくさん咲き乱れていた朝顔を、一輪を残しすべて切り取ってしまった利休の価値観。現代の絵文字にもつながる文字と絵の融合した芸術世界など、なるほど、これが日本なんだ、と思いました。針や筆などの道具を生き物のように供養する文化が日本人のロボットに対する抵抗を低くしているという考察も面白かった。こんなゆるくて懐の深い日本文化がありがたいです。

  • 和歌 誰でも詠む、歌を詠めば天地が動く
     やまとうたは、ひとのこころをたねとして、
     よろづのことのはとぞなれりける
     ちからをいれずしてあめつちをうごかし

     7~8世紀の詩が今と同じ言葉でつながる
     欧州は中世より前はラテン語

    絵文字 図と文字が越境する 
    散らし書き
    絵にも文字にも同じ筆
    音のない文字表現  例「シーーン」

    シェイクスピア 語彙数15200
    論語 漢字数1355

    日本の趣味
    影によって存在を、部分によって全体を暗示する(モネ)
    切り捨ての美学  肉付け、陰影の欠如
     西洋画:特定の瞬間に一つの固定した視点
     日本画:複数の視点で様々な部分を並置
          町や家屋は高い視点、人物は水平視点
          無地の金屏風

    西洋のモニュメント=思い出させる  堅牢な建造物 
     実体の美
    日本の名所 自然や季節と一体化されたもの
     状況の美

    観光 岩倉使節団 光=文明の光

  •  日本人は、誰でも歌を詠むことに対して、外国の方は驚くと著者が述べている。その理由は、詩人というのは、神から与えられた霊感を持った特別の才能のある人として認識されているからとある。歌を詠むこと一つとっても違いがある。ましてや、美意識に関しては何をかいわんや。

     「図と文字が越境する」では、日本ではごく当たり前に見かける絵の上に文字が描かれている作品。ところが西洋では、文字の部分と絵の部分ははっきり分かれている。言われてみればそうだ。

     鳥居に関しても著者は、聖なる部分と俗なる部分との境界としての役割があるが、外国人にはなかなかわかりづらいと述べている。その理由は、ヨーロッパの聖堂のように建物の中に一歩踏み入れると聖なる空間が広がっているのが認識できるが、鳥居だと周りに壁があるわけでもないのでどこから協会なのか認識できないからだ。あいまいな部分を残していても気にならないところがあったのだろうか。

     描き方、感じ方においても様々な違いがあり面白い。専門がルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術にも造詣が深い著者による日本人の美意識論。思いもつかないことがテーマに上がっていて脳内細胞にビビビとしびれるものがある。
     

  • 腹落ちする理論が多い。
    日本の美を誇りたい気持ちになる。

  • 短いエッセイで日本人の美意識と特徴を分析する。必ずしも手放しの礼賛ではなく、他の文化との冷静な対比になっているのがよい。
    明治以降の油彩や日本画に関するややニッチなテーマから、富士山、東京駅、芭蕉、琳派などメジャーなものまでとにかく幅広い。
    例示も多数あり、美術館へ出かけたくなる。

  • 日本人として当たり前に思っていたことが、西洋から見たらどれくらい不思議なのかを書いた本。
    自分の身近なものの良さって、意外と気づかないものだな。

  • 西洋絵画が専門の著者が折に触れてされてきた日本の美術・工芸に関する講演やエッセーを集めたもの。講演の記録が多いのもあって、同じ内容の繰り返しも多い。興味を引いた部分と物足りない部分とが半々という印象だった。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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