虚数の情緒: 中学生からの全方位独学法

著者 :
  • 東海大学
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  • Amazon.co.jp ・本 (1001ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784486014850

作品紹介・あらすじ

本書は人類文化の全体的把握を目指した科目分類に拘らない「独習書」である。歴史、文化、科学など多くの分野が、虚数を軸に悠然たる筆致で書かれている。また人生の「参考書」ともなるよう、様々な分野の天才達を縦横に配した。漢字、電卓の積極活用なども他に例の無い独特のものである。

感想・レビュー・書評

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  • 1位
    とんでもない本読んじまったなあ……。なんていったらいいんだろうか。こんな本ないよ。

    自然数、整数、有理数、無理数、実数、虚数。数の定義をどんどん詰めてゆき、「我々は虚数である」という真理にたどりつく。そして「虚数なくして現代物理学は成立しない」のだから数学の話は物理学の話へと……なんかもうめまいがしそうだ。

    吉田さんの、ときどき笑いたくなるような熱い文章も魅力的です。まず巻頭言が「さあ諸君、勉強を始めよう勉強を」だし、第Ⅱ部の題は「叩け電卓!掴め数学!」。
    第4章第5節は「今我々は、新しく有理数ではない数√2を得た。如何なる近くの隣人よりも、更に近い隣人が居る「有理数という名の大都会」、その超過密な住宅状況をものともせず、√2は敢然とやって来たのである」

    いちいち計算して確認しながら読まざるをえないから、読書が進まないこと進まないこと……。でも、そういう読書だからこその充実感があるんですよね。

    副題に「中学生からの全方位独学法」とある通り、中学生でも読み通せないことはない、かもしれない……。と、口ごもるのにはわけがある。実はまだ、読み終えてはいないのです。

    『虚数の情緒』も『自然をつかむ7話』も、宮崎哲弥『1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド』『新書365冊』で知りました。この二冊はとんでもない視野の広さと見識の高さを見せる書評集です。宮崎さんのこの二冊に、裏ベスト1を進呈したい!

  • 読みたいけど、、、高いよ!

  • 素晴らしい本である。”虚数”をテーマに数学、物理に留まらず歴史、教育など幅広いテーマについて書かれている類稀な本。難点は1000ページと分厚いため持ち歩き困難なこと。是非分けて分冊にするか、Kindle版を出して欲しい。

    中学生レベルの知識から虚数をテーマとして、”博士の愛した数式”で有名なオイラーの公式、そして後半は量子力学、場の量子論へ。中学生でここまで理解できたら素晴らしいだろう。学校の数学がおもしろくないと思っている中高生がこうした本を読めば数学や物理の深みに触れることができるのではないだろうか。私も中高時代にこんな本を読めばもっと勉強しただろう。息子が大きくなったら読ませてみたい。吉田武さんのファンになりました。

    子供を持つ親向けの本としても良いと思います。親として子供にここに書いてあるようなことを一通り説明できれば数学・物理に関する教育としては十分だと思います。

    少し残念だと思ったのは、虚数をテーマにしながら複素解析についての記載がないこと。私は大学で数学を専攻しましたが、コーシーの積分定理を初めとした複素解析の世界に非常な美しさを感じました。本書は虚数の基礎的なことを述べた後物理的なほうに行ってしまいますが、この後複素解析の方に行き、コーシーやリーマンの世界にいくという流れもあるのではないかと思いました。リーマン面の話なども盛り込めるとますます数学の深みを感じることができるのではないかと思います。

    この作者の吉田武さん、工学博士、という以外どんな方なのか判らない。Wikipediaでは著作家、と書かれているのでこうした数学系の本を書くのを仕事としている方なのだろう。著者紹介の欄では、”京都大学工学博士”と書いてあった。”工学博士”というプロフィールは良く見るが、”京都大学工学博士”という肩書きは始めてみた。
    京都大学出身であることをよっぽど強調したかったのだろうか。なんかちょっと残念な点である。このせいか、Webではこの方を京都大学の先生だと思っている方が多々いるようであるが、恐らく違うと思います。

  • 著者の明確なメッセージと情熱が伝わってくる非常に素晴らしい本だ。本は、こうあるべきだと思う。著者の魂がほとばしっている。

    内容は、オイラーを理解させる第二部までは何とか読めたが、第三部の物理学から一気に難易度が高まった。特に波動関数からは、これは本当に中学生独学用のテキストなのかと思ってしまった。しかし、本書はこの物理学の部分があるので、内容に深みが増しているように思う。

    本書で、数学と物理学の面白さに目覚めました。人生の大きなターニングポイントとなった非常に素晴らしい本です。

  • 「オイラーの贈り物」がけっこうよかったのでこちらも読んでみようと思い。本の分厚さにももえる。教育論のような話も随所に盛り込まれていて、これが著者の主張なのでしょうけれど、ただこれだけの本だったらうざいけれどちゃんと数学も教えてくれるのでとてもよかった。オイラーの公式が、「オイラーの贈り物」とはまた違ったアプローチで説明されていて感動した。

  • 副題は「中学生からの全方位独学法」。中学生向けの数学入門書のようなタイトルだが、中身は千ページ近くの大著。著者独特の教育論に始まり、数学のイロハ(方程式、関数、座標、)、虚数の導入、その応用例となる量子力学や電磁気学など、幅広い分野を解説している。
    図書館から借りたが、わずか二週間の貸し出し期間では全てを理解することは不可能。この種の本は手元に置いてじっくり時間をかけて読んでみたい。学生時代に出会いたかったし、数学に興味を持ち出した子供たちに是非お勧めしたい本だ。

  • 厚い。辞典みたい。今まで買った本の中で一番厚い。十分の一位読んだけど、いい感じ

  • 第I部 独りで考える為に

    0章 方法序説:学問の散歩道
    0.1 数学教育の問題点
    0.2 選択の自由と個性
    0.3 子供とは如何なる存在か
    0.4 文明と文化と
    0.5 「科学」と「技術」
    0.6 物理と数学の関係
    0.7 数学を敬遠するとどうなるか
    0.8 知性の誕生
    0.9 旅立ちの前に
    第II部 叩け電卓!掴め数学!

    1章 自然数:数の始まり
    1.1 すべては自然数から始まる
    1.2 計算の規則
    1.3 数の原子:素数
    1.4 約数と倍数
    1.5 奇数と偶数 
    1.6 空きの記号「0」
    2章 整数:符号を持つ数
    2.1 数としての「0」
    2.2 自然数から整数へ
    2.3 暗算の秘術
    2.4 パスカルの三角形
    2.5 基本的な図形の持つ性質
    2.6 三平方の定理
    2.7 フェルマー・ワイルスの定理
    3章 有理数:比で表せる数
    3.1 分数の加減乗除
    3.2 電卓のエラー表示
    3.3 小数の種類
    3.4 小数の表し方
    3.5 電卓の誤差
    3.6 小数と分数:相互の変換
    3.7 計算の精度
    3.8 バビロニアン・テーブルの秘密
    3.9 有理数の濃度
    4章 無理数:比で表せない数
    4.1 帰謬法の考え方
    4.2 無理数と小数の関係
    4.3 ギリシャの思想と無理数
    4.4 平方根の大きさを見積る
    4.5 無理数の居場所
    4.6 無理数と有理数の関係
    4.7 数を聴く・音を数える
    4.8 無理数の「循環する表現」
    5章 実数:連続な数
    5.1 実数の連続性
    5.2 実数の濃度
    5.3 数と方程式
    5.4 座標と関数のグラフ
    5.5 等号の意味と怪しい用法
    5.6 実数の濃度と平面の濃度
    6章 実数:拡張を持つ数
    6.1 二次方程式
    6.2 円周率を求める
    6.3 二次方程式と二次関数
    6.4 平方根を四則から求める
    6.5 美の論理と自然の神秘
    6.6 天才・アルキメデスの剛腕
    7章 虚数:想像された数
    7.1 虚数の誕生
    7.2 数の多角形
    7.3 二次方程式と確率
    7.4 誕生日と確率
    7.5 階乗と「いろは歌」
    7.6 虚数の情緒
    8章 指数の広がり
    8.1 指数法則の復習
    8.2 指数関数
    8.3 指数関数の近似とネイピア数
    8.4 近似の程度を高める
    8.5 指数関数の連鎖
    8.6 指数関数の逆の関係
    9章 虚実の挟間:全数学の合流点
    9.1 虚々実々なる関係
    9.2 幾何学との関係
    9.3 三角関数 
    9.4 オイラーの公式
    9.5 オイラーの公式の応用
    9.6 三角関数の値の新しい系列
    9.7 粘土板は古代の電卓か
    9.8 何故「年代」が判るのか
    9.9 一つの旅を終えて
    第III部 振子の科学

    10章 物理学の出発点:力学
    10.1 問題設定と実験の準備
    10.2 基本的な事柄
    10.3 運動に関する用語
    10.4 ガリレイの探究
    10.5 ニュートン力学
    10.6 重さと質量とバネ秤
    10.7 運動量の保存法則
    10.8 回転運動の基礎
    10.9 エネルギーとは何か
    10.10 温度と分子の運動
    10.11 相対論と三平方の定理
    10.12 運動量保存則の応用:体育との関係
    10.13 音による打撃の解析
    11章 重力と振子の饗宴
    11.1 調和振動子
    11.2 実際の振子の運動
    11.3 振子の応用
    11.4 最短時間バット軌道
    11.5 急がば回れ:トライアスロンと屈折率
    11.6 様々な振子
    11.7 隠れた振子
    11.8 宇宙へ誘う振子
    12章 波と粒子の狭間で
    12.1 波動方程式
    12.2 干渉と回折
    12.3 光学と電磁気学と
    12.4 量子力学の基礎
    12.5 電磁場の量子化
    12.6 径路の魔術:量子電磁力学
    12.7 場の量子論:そして「量子脳力学」へ


    さあ諸君。勉強を始めよう勉強を。数学に限らず、凡そ勉強なんてものは、何だって辛くて厳しい修行である。然し、それを乗り越えた時、自分でも驚く程の充実感と、学問そのものへの興味が湧き起こってくる。昔から、楽して得られるものなんて、詰まらないものに決まっている。怠けを誘う甘い言葉は、諸君に一人前になって貰いたくない、という嫉妬である。思い切り苦労して、一所懸命努力して、素晴らしいものを身につけようではないか。

    読者を自然数の初歩から有比数(有理数)へ、有比数から無比数へ、無比数から実数へ、そして実数から虚数(imaginary number)へと誘い、そして虚数が虚でも想像の産物でもなく「実存」であることをシュレーディンガー方程式で示しつつ、ファインマンの経路積分まで至るのだ。あの eiπ = -1 ですら、本書において重要な、しかし単なる、通過点である。

    その分説明は「稠密」ではなく、eiπ = -1 にしても ex ≒ 1 + x + (1/2)x2 という近似を使った推察に留めており、「そうなるような気がするだろ?その予感は正しい」という形で納得はさせても証明にはいたっていない(だからこそ「オイラーの贈り物」がある。)。さもなければ「わずか」1000ページでこれだけの内容は盛り込めない。その点において、本書は、"to convey to the reader some feeling"を狙った"The Road to Reality"の兄弟本である。

    感嘆を通り越して唖然とするのは、著者の勉強ぶり。学習というより、文字通り、自らを勉めて強いる姿勢。本書の内容は、文章数式図版はもとより、なんと偉人たちの肖像画まで著者の手描きなのだ。そのことをしらなければ、ジャギーの目立つモノクロのこれらの絵だけ見て、「なにこの素人」と勘違いしてもおかしくない。しかしこれも立派な理由あってのことなのだ。

    本書は、定価を下げる為、徹底的にこの事に挑む為に、"例によって"製本以外のすべての作業を著者自らの手で行った。出来には決して満足していない。もっと安くて良いものを、写真や図、グラフ、実験データなど、さらに充実させる事は可能だと思う。但し、これには些かお金が掛かるのである。本書は、ありったけの力で個人の限界にまで挑んだ積りではあるが、短編映画一本に数億円の金が動くと聞かされれば、どうして基礎科学の研究や出版に補助金が出ないのか、とついつい考えてしまう。読者の殆どの方は知らないであろうが、ピタゴラスやプラトンなど、誰が描いたか分からないような肖像画でも、勿論、版権が存在しそれを利用するのには相当のお金が必要なのである。一枚に二枚ならどうともなろうが、沢山の科学者、文化人を紹介しよいうとすれば、あっという間に書籍定価を上回ってしまう。

    またこの間、あらゆる交際を断ち、日毎増していく前からの腰痛、後ろからの腰痛に耐え、最高二十時間、平均でも一日十数時間を、執筆に捧げた。"異常な日常"は、ついに視力を半減させるに至った。


    P. 920
    「僕は、世界中の誰も答えを知らなかった問題を解いた経験は、唯の一回切りしかないんだ!」と。
    学ぶ=まねぶの限界は、ただまねぶことによってしか到達できない。

    そしてそれだけが、「内容」を超えて「情緒」を得るたった一つの冴えたやりかたなのだ。

    この情緒は、本物だ。

    虚数が、実存であるが如く。

  • この本は重い、また、枕としても十二分に使える厚さである。その内容は自然数、整数、有理数、無理数など数学の基本から虚数に話を進め、物理への適用までの広い範囲の内容を詳しく、かつ、易しく解説している。複素関数論は含んでいない。正に中学生から大学1年生までの範囲の数学を、歴史も含めて丁寧に解説している名著である。また、ルビが振られているので、数学用語を含めた日常用語の読み方の練習にもなる。数学の素養のある人は1か月くらい、苦手な人は半年くらいかけて読み進める価値のある1冊である。学生や社会人の高水準の教養書として推薦する。
    (電気電子通信工学科教員 推薦)

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00559989

  • 図書館で借りた。
    鈍器本w

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著者プロフィール

京都大学工学博士(数理工学専攻)。

「2021年 『はじめまして数学リメイク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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