新訂 自閉症の謎を解き明かす

  • 東京書籍
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487799190

作品紹介・あらすじ

現在の自閉症の理解の基礎に多大な貢献をした初版から19年,最新の医学的研究成果を踏まえ,認知心理学から脳科学へとつなぐ全面改訂を経て,自閉症理解の最先端とこれからが見える新たなる必読書として登場。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと怯むくらい分厚い本で、頑張って読んだ。自閉症/アスペルガー症候群研究の百科事典的な趣があり、かいつまんでわかりやすく、とはとても言えないが、この分野に興味があるものにとっては貴重な一冊だ。ぼくは興味深かった。

    本書で自閉症の謎が解き明かされるわけではもちろん、ない。自閉症の謎を解き明かすために、世界中の研究者や医学者が何を考え、やったか(やっているか)を総括した本だ。自閉症の原因が脳にあることはおおよその研究者は合意しているが、ではどこにどのような原因があるかは、まだわかっていない。他人の心の動きを推し量る能力に欠けるため、対人コミュニケーションに問題が起きるのが自閉症だとされているが、それがなぜ起きるのかわからない。逆にいえば、「他人の心を推し量る能力」がどのように発生するかもわかっていない。たぶん自閉症の人たちから見れば、なんでそんなことができるのかのほうが不思議なのではないだろうか。自閉症の謎は、人間の心の謎でもある。

    その一方で、重度の自閉症であり、作家でもある東田直樹の書いたものを読んでいると、話ができないだけでコミュニケーションに問題があるとはとても思えない。「他人の心を推し量る能力」あるいは「他人の心をおもいやる能力」が東田直樹に欠けているとすれば、「自分のことで人が苦しんでいるのが辛い」という言葉は出てこないだろう。自閉症と一言で言うけれど、それにはいろいろなタイプが含まれているのだろうと思う。空気を読めない(読まない)、人付き合いをいやがる人は珍しくもないが、それも脳に原因があるのだろうか? だとすればパリピも脳に原因があるのか? それともそれは性格であって(性格とは何か、という議論は置いといて)脳の器質的/化学的性質とはまた別なんだろうか? 不思議なことだらけだ。

    なお、直訳調の文章は凄まじく読みにくい。こういうタイプの本は読みやすさよりも、原著の情報をニュアンスも含め、できるだけ残して翻訳する必要があったのかもしれないが、それにしても同じ文章を何度も読み返さないと意味がわからない部分がちょくちょくあって、さすがにこれはもうちょっとなんとかならんかと思った。

  • 2625円購入2010-09-15

  • 2009年刊行。

     自閉症の問題について広く解説した一書。
     もちろん、自閉症に関わるサブテーマを個別に論じた書であれば、他にもよい本、有益な本、示唆に富んだ本は多数存在する。

     しかし、「自閉症」という極めて広い括りであれば、本書を基本書と構成しても問題はないであろう。

     著者はロンドン大学認知神経科学研究所名誉教授。

  • 決定版。自閉のメカニズム、自閉って一体何?といった基本的な考え方を知るのならこれ一冊でOKだと思う。他の色んな本を読んで継ぎはぎになっていた情報がどかんとまとまった感じ。

    生ぬるい言葉は全然ないのに、「ああ、分かってくれたんだ」と元気になれる本。

    白眉は用語。バロン=コーエンが認知系の学問からの借りてきた「心の理論」という用語を「心理化」と言い換えている。日本語では訳の問題もあったんだろうが(心なのに理論って毎回不思議でしょ?)、この言いかえだけで全体がとても読みやすくなっていると思う。いいセンスしてる。

  • 1991年の初版から今回の新訂版の間に、心の理論で注目されたサイモン・バロン=コーエンのマインド・ブラインドネス仮説について、神経心理学的、認知科学的研究手法を用いて検証してきたウタ・フリスたちのその後12年あまりの研究成果が集大成されている。
    特に、脳科学の最先端の知見も含め、自閉症の心の発達に一貫したシナリオを構築しており、1990年代の自閉症の謎説きが、さらに焦点化されてきた感がある。
    しかし、本書以降の2009年までの論文までの知見から発達障害としての自閉症の本態に迫るものの、まだまだ自閉症の謎はto be continuedである感は否めない。
    自閉症の入門書とは言い難いが、自閉症研究の歴史と今後の課題を整理するには最適の書といえる。

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