アスペルガー流人間関係 14人それぞれの経験と工夫

  • 東京書籍
3.93
  • (4)
  • (5)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487805334

作品紹介・あらすじ

生まれつきの少数派が多数派から強いられている多大な努力と困難を知り、そこに手をさしのべるための本。当事者・支援者必読。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私は47歳にして発達障害者だと言われましたが、発達障害者はどういうものなのか、教えてもらえません。聞いても「一言では言いにくい」「あまり気にしなくていい」などと言われます。私は自分がどういう障害をもっているか知りたい。
    そこで、発達障害関係の本を読んでいます。

    発達障害関係の本は子供のものが多く、「大人の発達障害」についての本はあまりoo多くありません。
    本著は、やっと見つけた成人発達障害者当事者の手記です。
    イギリスの【アスペルガー症候群(AS)】成人当事者たちの、人間関係に関する手記を集めたものです。
    自分のなにが「変」なのかわからないと思っていても、具体例を検証していけば、思い当たることがぽろぽろでてきます。


    ・一人目▶当事者にして支援者/オンラインコミュニティとのかかわりかたについて
    アドバイス内容は、
    「他人の発言を字義通りに解釈し(中略)誤解することがある」
    「攻撃されたと感じても(中略)感情的に反論しないこと」
    …小学生、中学生のころに言われていたような注意ばかりです。
    重要なのは、自分が、むかーし何度も聞いたようなこのての注意を、いい大人になったいまも真摯に聞く必要がある障害を持っていると自覚することだと思います。
    「何らかの理由で他人に悪く受け止められるのではないかと感じたら、投稿しない」
    寡黙であることが長所とみなされないらしいヨーロッパでこう注意されてしまうほど、他人を傷付ける発言をする特性を、私は、持っている、らしい、ということを、自覚する。

    ・二人目▶45歳に診断を受けた当事者.たぶん男性/診断後の支援の必要性
    「自閉症スペクトラムは知的障害のある人から機能の高い人まで連続しているが、機能の高い人でも他人の気持ちを汲み取る本能が備わっていない。
    しかしそれを論理的に理解することはできる。
    それはTVのスタートレックシリーズの登場人物、ヒューマノイド型異星人、ミスタースポックが地球人の振る舞い方を学ぶ方法と似ている」
    私は他星からスパイとして地球に潜入しているごっこをしながら生きてけばいいようです。ただし、
    「しかし、僕は常にフラストレーションを感じています」
    そして日本では、私の知る限り、まだ大人の発達障害者の為のケアシステムはないようです。

    ・三人目▶当事者.たぶん女性/半生の記録
    たぶん障害が重めで、「不理解」に小突き回され、20代で精神科にかかり
    「彼(精神科医)は、私が重度の障害者で、決して働くことはできないだろうと言い、母にもその考えを植え付けました」
    ーーその後、メンタルヘルスの自助団体に入ったことがきっかけで事態が好転するまでの半生の辛さは、私とは全く違います。が、
    「人々の会話の輪に入る場合でも、見境なく入って、その場の雰囲気を台無しにした」
    など同じ種類の障害だなと思います。彼女ほど問題にならなかったのは単に勉強はできたためでしょう。
    彼女が自分を「恥じるのを、やめられた」のは本当に快挙であると思います。
    私もいつかそこに行き着きたいです。

    ・四人目▶22歳で診断された当事者/AS
    ASがどうしたら友達を持てるかを考察していますが、その考察内容こそが友達ができなかった理由を示しているように思えます。私も、他から見るとこういう感じなのかなあと、落ち込んでしまいました‥

    この章で編者が添えているコメント「(公的)支援は長い目で見ると(中略)経済的な負担などを軽減する」には心から同意します。発達障害者は納税者になる能力をもちながら、人間関係がうまくいかないために病んで社会保障のお世話にならざるを得ないケースが多いように思います。
    私自身はただただ、プリーズ・ヘルプ・ミー!なのですが。

    ★五人目▶31歳で診断された当事者.男性/ASと健常者とのコミュニケーション
    ASがコミュニケーションをとろうとすると起きる齟齬が、映画『フランケンシュタインの花嫁』にたとえた話など、わかりやすく、おもしろく、具体的にあげられています。
    たとえば、会話が始まってしまうと「話をいつ止めていいのかわからない。」
    私もです。相手がなにか言ったら何か返さないと思ってしまう。SNSでもそうです。一方で、自分の発言・発信に反応がないと、今度はなにかまずいことを言ったかと思ってドキドキするのです。
    ASは変わっている。たんにかわっている【だけ】なのですが、排除される。
    「この現実は、異質なものを排除するという人間の本能からきており、この問題を克服することは容易ではありません」
    そして、
    そんな健常者たちにとって、発達障害者と「良好な関係を築こうとすることにはかなりの辛抱と寛容の心が必要です。」と、説明してくれます。
    ・・・・相手にもそんな負荷をかけ、自分もつらい思いをする、ビジネスライクなもの以上の人間関係を求めるのは諦める努力をするほうが建設的な気がしてなりません・・・・・・

    ・六人目▶38歳で診断された当事者.女性/友人が
    友達がほしくて苦闘した経験とそのときどきの自分の考え、感想をが正直に書かれています。
    なんだか勝手な感じ、自分本意な感じで、生々しいです。
    たとえば、システムが自分にわかりにくい店などに、一方的な腹立ちをかんじるところなど、見に覚えがありつらい・・

    編集者のコメント「ASの人は相手の勘定を知ろうと努力し、さまざまに憶測し、それがわからないから悩み、ストレスや不安が昂じます」を読んで、健常者は違うのか?と思いました。自分でわかったつもりでいるこことまわりとで齟齬が生じないから悩む必要がない・・?

    ・七人目▶当事者にして支援者.男性/自閉症支援を通して
    健常者との人間関係を築くのは難しくても、発達障害者同士なら理解し合える可能性があることがわかり、興味深いです。私も発達障害者コミュニティに参加するべき?・・私には「理解し合える関係」が理解できていないし、この筆者にとっても人付き合いは義務でやっているように感じるのですが。それでも、互いに評価したり、差別したり、批判したりすることのないコミュニケーションは、素晴らしいだろうなあと思います。
    彼は、自分がASであることを受け入れるのに2年かかったそうです。私はどうなるか?

    編集者コメントで「自閉症スペクトラムの人は心の理論(他者の心の動きを類推したり、他者が自分とは違う信念をもっているということを理解したりする機能)に障害がある」ことに疑問を呈しています。私も健常者にはその機能があるの?と、あるとしたら発達障害者のことはどう理解しているのだろうと、不思議に思います。

    ・八人目▶当事者にしてAS交流サイト主催者.たぶん男性/AS交流サイトの立ち上げと運営
    この方の体験を読むと、やはり発達障害者のコミュニティに参加すべき?と思わされます。
    健常者との付き合いは密すぎて疲れるし、うまくいかない。でも、一人だと、寂しい。ーーというのは、おそらく私もです。

    ・九人目▶当事者にして研究者.女性/健常者とコミュニケーションをとること
    人間関係がうまくいくか理解し、楽しむための第一歩、について、だそうです。
    この人の考え方に私はなじめませんが、内容は詳しく具体的です。
    なかでも注意を引いたのは「私たちにはほとんど無意識に他の人たちも自分と同じように考え感じるものだと思っています」たとえば、自分用カップ以外のカップにコーヒーいれて渡された、といった、自分固有のルールに反されるとムッとするーー相手はそのルールを知らないとは夢に思わず、というような。
    【無意識に】思っていて、自分では気づけないのが怖いです。私もそうなのか、注意してみようと思います。

    ・十人目▶当事者.サイト主催者.著述家.女性/コミュニケーション手法獲得のための方法
    パワフルで、頭がよく、家族を含めて自分を支援してくれる人を確保している人のようで、読むだけで圧倒されてしまいました。時間をおいて読み直したいと思います。
    本旨からはずれますが、彼女のASである父親、人とつき合いたいという欲求のないという父親と、家族、とくに妻である母親との関係、なぜ結婚したか、夫婦はお互いをどう思っているのかがとても知りたいです。

    ・11人目▶当事者.男/ASと友人
    まず、友情とはなにかという定義をこころみることから、自分の人間関係の話にうつっていきます。
    「私はずっと対人スキルを身につけるように言われてきました。困ったことに私は必ずしもその必要を感じていません」友だちを作れと強制するな、と書いていますが、本人自身、自分の友人の要不要について答えが出せていないようです。
    私も私に人間関係は必要なのかなあ?単なる刷り込みで必要な気がしているだけかなあ?とわからないでいます。

    考えてみれば、この本にとりあげられる人間関係は主に【友達】です。血縁でも、配偶者でも、仕事関係でもありません。不思議に思います。
    日本の大人の発達障害者の本ーー健常者が作った本でとりあげられる人間関係は主に【仕事関係】です。この差がおもしろいと思います。

    ・12人目▶当事者.専門家(学者?).女性/自分の半生
    振り回され、振り回し、全力でなにかに突っ込み、傷つき、夢中になり、投げ出し・・ドラマティックな40年余。【孤独】とは性が合わない人のようです。保護者のような相談相手のところで息を継ぎながら生きていた彼女は、結びに
    「お世話になった多くの方へ。広い意味で言えば、私は個人ではなく、みなさんのご好意の総体なのです」と書いています。ASは捨て身にならないと【誰か】を手に入れられないのかもしれません。

    ・13人目▶ASの母親/息子について
    発達障害者と親しい関係にある・あり続けるのはやはり大変なようです。
    他に比べるととても短い手記ですが、それでも気の毒なほどつらそうで疲れきっておられるようです。
    「私たちの暮らす信じられないほど実利優先のこの社会では、みな「型」に合わせることを求められていますが。これはASにとってはとても難しいことです」

    ・14人目▶44歳で診断された当事者.専門家.支援者/AS視点からすると
    ASとNT(定型発達者)はOSが違う。「マイクロソフトとアップルのコンピューターソフトに互換性がないように、うまくいくわけがないのです」

  • 私はNT(定型発達)だけど、めちゃくちゃ共感できるし参考になる。
    機能する家庭で育ったNTの冷酷さと不寛容は信じがたいレベルだよ。

  • 当事者の視点でそれぞれのケースが書かれていて参考になる。

  • イギリスのAS当事者達がタイトルに沿って書いた本。
    国は違っても「あるある」とうなづけることが多い。
    そして、現在の日本より支援が充実しているような気がする。

  •  本書はアスペルガー症候群(Asperger syndrome、本書にならい以下AS)についてのまとまった知識を提供するものではない。自閉症スペクトラム、3つ組の障害、心の理論といったキータームについても理論的な説明はなされない。したがってASについて一から知りたい方や体系的に学びたい方は他書をあたるのが望ましい。
     むしろここに収められた実話は、ASの感じかたや考えかたにふれてみたい定型発達者(neurotypical; neurologically typical、神経学的典型、以下NT)の方や、他のASの人と自分とを比べてみたいASの方にとってこそ興味深いものだろう。14人の体験は多岐にわたり、ひとえに当事者といってもその内実はじつに多様であることがわかる。また各章の冒頭に付せられた編者の解説は、NTにとって気づきにくいと思われる点について読者の理解をうながしてくれる。

     ASの生きづらさをひとことで言い表すのはむずかしい。それでも本書の話をもとにあえて試みれば、ASの人は、他者との交流を望みつつもそれができない自分に悩む一方で、他者からはなれて自分が安心できる場所とひとりでいられる時間を欲してもいる。いわば参加(コミュニケーションへの自由)と逃避(コミュニケーションからの自由)という、一見相反するように見える2つの欲求を同時にいだいているのであり、そのどちらもが適切な充足をえられないとき彼らの苦悩と不安は大きくなるようだ。
     NTにくらべて共感の情に乏しいとされる少数派のASがこのような複雑な心境に暮らすことを鑑みると、編者のルーク・ベアドンが指摘するように、多数派のNTのほうこそASに対する理解と共感の目をやしなうべきなのかもしれない。

     以上、興味深いうえに考えさせられるエピソードが多く、内容面ではおおむね本書に満足である。一方で、下記のとおり翻訳の雑さや不自然さ、編集の粗さが目につき、そのたびに思考と理解の流れが中断されることがあった。

     * 誤字・脱字・衍字の散見
     * 敬体(です・ます調)と常体(だ・である調)の不自然な混入
     * 一人称の「私」の性別の分かりにくい箇所がある
     * 英語の併記がないために理解しづらい箇所がある(第10章で挙げられる「5つのW」のうち、5つ目の「どんな様子で」は what manner/what situation/what air/... のいずれの「W」なのか?)
     * イギリス特有の社会事情(サッチャーの政策など)に関する訳注がなく、日本人に理解しづらい箇所がある

     ASの特徴のひとつに物事の細部へのこだわりが挙げられるが、そのような彼らが本書を読んだとき、内容そのものとは別の些細な点に注意がそらされ、結果として読書の効率が悪くなるのではないか。
     という心配がよぎったため、あえて苦言を呈した。本書の版元は学校の教科書をはじめ、実用的で価値ある書籍を数多く出版されている。本書もその一冊である。これからも活字をつうじてあたらしい世界を送り届けていただけるよう、一読者としても微力ながらのレヴューをつうじて応援したく思った。

  • イギリスのASの人たち14人。国は違っても同じなんだなぁ。「私もずっとそうだった」よー。

    14通りの生き方。同じ苦労もあるし、できそうな工夫がある。
    そして、読んでてひっかかりがない。すこんとわかる。無駄がない。思考回線が似てるんだろうな。

    残念だったのは、いくつか誤植があること。この文章の流れでこの言いまわし?と不思議に思うところがあったこと。
    当然これは、著者の問題じゃなく、訳者の問題。

全8件中 1 - 8件を表示

鈴木正子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×