ペナンブラ氏の24時間書店

  • 東京創元社
3.32
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本棚登録 : 996
感想 : 126
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010188

作品紹介・あらすじ

奇妙な書店に再就職した青年は、店内にある謎の本の解読に挑んだことがきっかけで、五百年にも及ぶ謎を解明する旅に出ることに……すべての読書好きに贈る冒険と友情の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公の青年クレイが物語の前日譚から話を始めたように、自分も本書を選んだきっかけから語っていきたいと思う。

    今、自宅の本棚には原書が眠っている。
    これは就職活動の帰り道に丸善丸の内本店にて購入したもので、当時は今以上に語学に燃えていた。
    まだ読みやすそうなものを…と選んだはずなのに、帰りの新幹線では1ページも読み進められず、乗車時間の残りは睡眠にあてられた。本は自動的に棚の肥やしへと転身する。
    そして現在…試しに開いてみたが、やはり場面が想像しにくいし進まない。調べてみると翻訳書が出ており、もっと早くこうすれば良かったと続編もろとも入手したのだった。

    得意としていたウェブデザインの職を解雇され失業中のクレイは、ある日「24時間書店」の求人を見つけ夜勤書店員として勤務することになる。

    「もっと早くこうすれば良かった」と思ったのは、読書前だけではない。
    一つは本書が、ヤング・アダルト本特有のハイテンポなノリだと分かった時。これは別に苦じゃなかったけど、本書が世に出た頃であればもっと順応できたのになって。あと解説を担当された米光一成氏(本職:ゲームデザイナー)がチャラかった笑

    もう一つは読み始めた刹那、クレイの境遇が就職活動中・就職後の自分と重なった時。職を解かれ何者でもなくなったクレイと、周囲が内定を獲得していく中で自身が何者かさえ分からなくなっていた自分。(正直今も分かっていない…)
    将来設計が明快な同僚オリヴァーを羨む場面では、自分も職場で同様の想いを抱いていたことを思い出した。

    これを初めから英語で読むのは至難の業だったかも。何故なら日本語でも設定を解析・理解するのに苦労したからだ。
    まず物語の拠点となる24時間書店が普通の本屋ではない。
    2軒の店で構成されており、表の本棚にはペナンブラ氏(オーナー)の選り好みで溢れた一般書、奥には非売品で特定の客しか借りて行かない本が収められている。しかも書店員は奥の本を読むことは許されておらず、特定の客が来店した際は業務日誌をつけなければならないという謎ルール。

    クレイは友人らと過去の業務日誌から本屋の親会社である秘密結社が所蔵する”ある本に至るまでを、Googleの最新テクノロジーで解読。その試みが書店や秘密結社会員らの謎を明らかに…!?ここまでしか言えないが、流れとしてはこんなものか。

    この辺が『ダ・ヴィンチコード』の難解な謎解き作業をすっ飛ばし全部コンピュータに委ねた感がして、読後情報技術に疎い自分は色んな意味でキョトンとしていた。しかし実際問題、本の世界にも電子化やオーディオ化とテクノロジーが浸透している。
    だから上記のような謎を解くにしても、たまには文明の利器に頼っても良いのかなって気もしていたりする。

    「3012年を想像するのは簡単じゃないけど、だからって試してみちゃいけないってことにはならない」

    やり方を変えれば解読できると信じて、本棚でふくれっ面をしている原書にもそろそろ構ってやろう。

  • 不況のあおりで失職したクレイが見つけた新しい仕事。それがペナンブラ氏の24時間書店の夜勤。
    お店の手前の部分は普通の古本屋だが、奥の書棚は見えないほどに天井高く、しかも収まっている本は「ググって」も見つからないタイトルばかり。個性的な常連客たちが借りていくその本を開いて見てみれば……暗号で書かれている?!

    不思議な書店に、秘密結社や500年解けない暗号の書物とくれば、アナログなファンタジーを思い描くが、驚きのデジタル三昧。
    主要人物の一人はグーグル社員だし、暗号解読はグーグルのプロジェクトにまで発展!
    なんでもコンピュータで解決しようとするあたりが風情がない(笑)といえなくもない。

    もう少し昔ながらのファンタジーを期待していたので思った物語とは違ったけれど、これはこれで楽しめた。
    YAらしく、またアメリカの若者らしく、ライトでカラっとした読み口。
    映画化すればおもしろそうです。スポンサーはもちろんグーグルで!


    2013年度アレックス賞受賞作。
    (全米図書協会がYA読者に読んでほしい一般書に与える賞、だそうです)

  • 居心地の良さを感じ、本屋でアルバイトを始めた、クレイ。
    奥の方には、会員限定の不思議なエリアが存在して……。

    全米図書館協会アレックス賞受賞作。

    梯子つきの高い棚。
    ひび割れた革装、金箔で記された書名で、アンティークのような本。
    そしてそれらは、Google に存在しない。

    奥地蔵書を軸とした前半の24時間書店が、ミステリアスで魅力的。

    Googleや最新技術に、500年前からのデータや昔からのアナログ手法。
    新しいものと古いものとが入り混じる、独特の世界観。

    クレイたちは、謎を解き明かせるのか?

    ヤングアダルト向けの青春冒険譚。

  • 謎めいた本屋をめぐる冒険譚。
    グーグルを駆使した探索など、現代ならではの展開が波乱に富んでいて、本好きを楽しませる内容。

    失業中の青年クレイは、たまたま「ミスター・ペナンブラの24時間書店」で働くことになった。
    まったく繁盛していないのに、文字通り24時間営業。
    3人でまわしていて、クレイは深夜勤務。
    店頭にはごく普通の本が並んでいるが、売る気はほとんど見られない。
    奥の別室には高い天井まで古めかしい背表紙の本がぎっしり並んでいる。会員制で、借りられるのは会員のみ。
    店員は本を覗いてもいけないことになっているが、思わずある日覗いてみると‥?

    秘密結社のような会員達。
    彼らは学びながら、500年越しの謎を解こうとしているらしい。
    クレイは、グーグル社に勤める才媛キャット・ポテンテと知り合い、付き合い始める。
    興味を持つようになったキャット達の助けを借りて、書店の秘密を探ろうとする。
    途中からは、ミスター・ペナンブラを助けたいという気持ちもあって。

    「ドラゴンソング年代記」(ありそうだけど架空?)を愛読し、ゲームにもはまっているクレイ。
    ネットゲーム仲間のニールは、現実にはソフトウェア会社の経営者となっている。
    ルームメイトのマットは、特殊効果アーチスト。
    こういった特技のある面々と、ネットを駆使しながら、RPGのように、冒険が進むのです。
    キャットが魔法使いという立ち位置らしい。
    あまりぱっとしない印象だったクレイが、人脈や能力をフルに生かしてやり遂げたこととは‥

    ちょっと現代版「薔薇の名前」みたいですね。
    ‥‥こういう結末?
    と思う部分もあるけど、いいシーンがあちこちにあって、面白かったです。
    よく書き込まれている力作ですけど、誰にでもお勧めと言うには渋いので、★4つ。

  • 失業中の主人公が、ある日ふと立ち寄った書店で働くことに。「ペナンブラの24時間書店」はその名の通り24時間営業。でも繁盛している様子はない。実は、この書店には裏の顔があった…。
    とにかく、この「ペナンブラの24時間書店」が非常に魅力的!こんな書店があったら是非是非働きたい。もう、夜勤でもいい!どれ程高いんだと思うような本棚に囲まれ、梯子を上り下り。やってくる客は個性的な人ばかり。そんな書店の古くからの謎と近代的なシステムに囲まれ混乱しながら読み進めた。新しいものと古いものが入り混じった不思議な世界だった。

  • 24時間書店、ペナンブラ。
    奥地蔵書を借りに来る個性的な会員たちと主人公クレイ。どんなストーリーなのかと興味惹かれた。
    こんな古書店に行ってみたい!
    本に隠された暗号も気になる!
    が、読むスピードはなかなか上がらない。

    「本好きには見逃せない」のフレーズに押されてページを捲るが、そもそもデジタル音痴の私にこの情報量は多すぎる。
    ネット世代の若者ならスピード感ある展開に違和感なくついていけるのかなと思いながら、やっとラストに辿り着いた。

    ウイットに富んだ言い回しには何度かニヤリとさせられた。
    「それっぽい光がそれっぽい窓から差し込み、それっぽい店に鋭角の影を落としている。これを聞いてすごいと思ったら、あなたは三十歳を超えてますね。」など。

    カバーのイラストが上手い。書棚にかけられた梯の上にはクレイ、眼鏡のペナンブラ氏やグーグル社員のキャット他、登場人物の姿が分かりやすく描かれている。
    ゲリッツズーン書体もあれば見てみたかったな〜。

  • 失業中の主人公・クレイが見つけたのは、ペナンブラ氏の経営する24時間書店の求職ポスター。
    この書店に夜から朝の時間帯に勤務するようになったクレイですが、この書店、普通の書店ではないようで…?
    Google社員のガールフレンドやソフトウェア会社のCEOをしている同級生などの、パソコンやプログラミングを華麗に操る仲間たちとともに、書店の謎を解明していくのです。

    図書館員にはたまらないストーリー!
    活字の紙の本×デジタル書籍。
    リアル書店×Google。
    本にまつわるRPGゲームのような冒険が繰り広げられる、ハイブリッドなファンタジーです。
    剣も魔法も出てこないけれど、パソコンやスマホを駆使して、過去の叡智に迫っていくのがたまらなく爽快!
    道具は違えど、仲間と助け合いながら困難を乗り越えていく様子には元気をもらいました。
    ファンタジーの新しい形なのかも、と思いながら読了。

  • 何もあらすじを読まず、タイトルから勝手に「本と書店が繋ぐほろり人情」みたいな話かと思って読んだら、ダヴィンチコード路線だったー!!
    アナログとデジタルが絡み合い、テンポよく進む。
    主人公の「才能」が「あれ」だというのが良かった(彼も十分色々多才だと思うけど)。
    キャラクターのその後まできっちりまとまって、読後感すっきり。
    面白かった。

  • 失業中の青年クレイがふとしたきっかけで働くことになった24時間営業の書店。棚に詰まっているのはgoogleにも引っかからない本で、それを借りに(!)来る客にもなにやらいわくがありそうで…。

    本とそれを取り巻く環境の今昔。デジタルとアナログの鬩ぎ合いと融合。
    活字とWEB系嗜好という、結構ニッチなターゲットに向けた1冊。
    RPGな味付けもしているので、好きな人にはたまらないと思う。はい、たまりませんでした。
    カプラーが出てきたあたりで身悶え。
    そしてスキンが布製の電書リーダーが欲しすぎる。
    電書だ紙だと世間ではあれこれ言われているけれど、この本の最後の一文『ぴったりの本を、ぴったりのタイミングで。』本読みにとっては、これが一番重要なんだよ。

  • ベーグル屋で働いていたクレイは不況のあおりを食らって、書店員に転職する。その書店はちょっと不思議な書店で…。

    天井までぎっしりと本で埋められ、やってくるお客は少し奇妙、店長のペナンブラ氏も奇妙、クレイは、この書店で出会ったキャット(グーグル社員の女性)と昔からの友人で裕福なニール(会社のCEO、世界一のオッパイ物理学エキスパート)と、ゲームのパーティーのように3人組で書店の秘密を探り始める。

    グーグルの技術、愛読書の『ドラゴンソング年代記』、クレイ自身のひらめき、様々な要素が最後にカチッと嵌り、500年の謎は見事に解かれる。

    最後は少し畳みかけすぎだなぁという感はあるものの、爽快な終わり方でした。

    グーグル推しがすごかったのでちょっと冷めたかな…。個人的に架空の会社が良かった。

    「グーグルにとってはフェイスブック」(P96)がライバルだとしているけれど(本書は2014年発行)、2021年現在はどうでしょう?

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